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東海大地震の幻

今日は防災の日。
今から97年前の1923年(大正12年)関東大震災が起こり、10万人以上の方がなくなったことに因み、国民の防災意識を高め、非常に備えるための日です。
私自身関東大震災で大きな被害を出した神奈川県に生まれましたが、家には毎年ハザードマップが配られ、幼稚園から高校に至るまで必ず入学時には防災頭巾をもっていくのが恒例、そして毎年9月1日には防災訓練をしてきた人間ですからなおさら強く意識する日なのです。
例年この時期になると首都圏直下型地震や、南海大地震などが話題に上りますが、私の子供の頃はなんと言っても東海大地震でした。
そしてこの東海大地震、かつては至急性のある、かつ予知可能な唯一の地震と言われ膨大な国費がその対策の為に注ぎ込まれてたのですが、最近はどういうわけかめっきり話題が少なくなってしまったように思います。
一体どこで、何が変わってしまったのでしょうか?

☆ 実は幻だった東海大地震 ☆

東海地震についてちょっと調べてみると、確認されているだけで過去7回発生していることがわかります。
記録に寄れば発生年は684年、887年、1096年、1498年、1605年、1707年、1854年。
一般にプレート型地震は周期性があると言われていますが、それに従えば東海大地震の発生間隔は203年、209年、402年、107年、102年、147年となります。
つまり東海地震はおおよそ100年から400年の周期で発生する、ということになるわけですね。
東海地震は周期性があると言われ、たしかにあるといえばあるのですが、これで予知可能な唯一の地震、と言われるとちょっと?という気がします。
又1498年、1605年、1707年の地震は東海地震でなかったという説もあり、一方で1361年の正平地震も東海地震があったという説もあるようです。
要するに定義自体結構いい加減な感じなのです。

ではなぜ東海大地震ばかりが予知可能だとされて来たかと言えば、1976年に神戸大学の石橋教授(当時東大理学部助手)が1944年の南海地震のプレートの割れ残りによって極めて近い時期に大地震が発生する可能性が高い、と提唱した為です。
実は東海地震が単独で起こった事は過去例がなく、ほぼ必ず南海、東南海という同じプレート型地震と連動して起こっています。
ところが1944年に南海、東南海地震が発生したにもかかわらず東海地震が起きなかった事から、プレートの割れ残りにエネルギーが蓄積されている可能性が高いという事で、東海大地震が近い時期に起こると警告したわけなんですね。
つまり東海地震は、当時としてはごく差し迫った未来の地震だったはずなのです。
ところが実際には東海大地震はここまで起こっていません。
これは一体どうしたことなのでしょうか?

ここで上の発生周期を見ていただきたいのですが、1096年の永長、康和地震と1498年の明応地震との間は実に402年開いています。
ところが南海、東南海地震の方はきっちり1361年に正平地震が起きており、過去1000年以上に渡って12回地震の記録があります。
つまりここから推測される事は、実はプレート地震の本体は、東海地震ではなく南海地震であり、連動して東南海地震や東海地震が起こるし、起こらない又は規模が小さいこともある、ということです。
つまり東海地震とはあくまで南海地震のサブセットであり、1944年の南海、東南海地震と同時に起こらなかったからと言って、後から必ず起こる性格のものではないということのようなのです。
結局東海大地震説を唱えた石橋教授も、2006年3月に東南海地震の割れ残りという考え方が誤りだったと認めています。
つまり我々が子供の頃から想定され、準備されて来た東海大地震はなかった、幻だったのです。

これを裏付ける科学的な研究結果もあります。
名古屋大学平原教授らがスーパーコンピューター地球シミュレーターで行った解析に寄れば、プレート地震の本体は東南海と南海地震の境である紀伊半島沖の可能性が最も高く、そこに2回の一回の割合で東海地震が連動することがわかったそうです。
何故毎回東海が連動しないかと言えば、フィリピンプレートの沈み込み速度が四国沖6センチ、紀伊半島沖5センチに対し、御前崎付近では2センチである事、及び海底山脈の影響で南海や東南海にくらべ東海は地震が起きづらい、ことが原因なのだそうです。

☆ 次の本命は東海、南海、東南海3連動大地震!? ☆

そう考えると、次は幻に終わった単体の東海地震ではなく、本来の本命たる東海、東南海、南海3連動地震がセットでくる可能性が高いということになります。
実際前回の南海、東南海は1944年なので、100年~150年という南海地震の周期から考えると、早ければ後20年位で南海地震が起こっても不思議ではないということなのです。これが最近南海地震が注目されている理由です。
もう一つ地殻変動というのは、一旦始まると連続して起こる性質があるようで、それがそのまま3連動地震まで繋がるのではないかという懸念も捨てきれません。
例えば、東日本大震災に酷似しているといわれる貞観地震の前後では以下のような天災が発生しています。

863年 7月10日 越中・越後地震 - 死者多数、直江津付近にあった数個の小島が壊滅
864年 5月2日 富士山大噴火(貞観噴火)その溶岩流の後が現在の青木ヶ原樹海
868年 8月3日 播磨・山城地震 - M 7台。
869年 7月13日 貞観大地震 - M 8.3~8.6 三陸の津波で死者約1,000人。多賀城倒壊
871年 4月8日 鳥海山大噴火
874年 3月4日 薩摩開闢岳噴火
878年10月28日 相模・武蔵地震 - M 7.4、死者多数。
880年10月14日 出雲地震 負傷者多数
886年 5月24日 関東で直下型の大地震 負傷者多数 同日新島噴火
887年 8月26日 仁和南海地震 - M 8.0~8.5、京都・摂津を中心に死者多数。
所謂東海、東南海、南海連動地震。
915年  十和田湖大噴火 記録に残る最大の大噴火で北東北はほぼ壊滅

つまり貞観地震の19年後に仁和南海、東海、東南海地震が発生しており、この前例に従うと、2011年の東日本大震災以後まもなく9年が経過した現在、いつプレート型大地震が発生してもおかしくないということになるわけですね。

コロナ対策で大変な昨今ではありますが、いうまでも日本は世界屈指の地震国。
改めて地震への備えを忘れないようにしたいものですね。