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CSにハンディキャップの導入を!

2021年のプロ野球のクライマックスシリーズ(CS)は、一部のファンの間で物議を醸しだしている。ことの中心軸は讀賣ジャイアンツ。別に讀賣が横紙破りをしたわけではないが、レギュラーシーズンで勝率5割に満たなかったチームがリーグの代表になる可能性が、少なくないプロ野球ファンの日本シリーズ観に違和感を与えているのだ。

CSの開催ルールには充分な根拠が無いということは以前から言われていたこと。もともと興行的な活性化の意味合いで始められた制度であり、深く考えてつくられたというよりは、適当な落としどころを設けてそこに納めてみた感が見受けられるのが実情だ。その中、巷で問題視されているのは、主にレギュラーシーズン上位チームの下位チームに対するアドバンテージ部分である。
ホームタウンディシジョンは評価できるとはいえ、それ以外の有利さは勝ち星を付与するとか引分けの価値に差をつけるくらいで、はなはだ融通性に欠けるのだ。
ネット上の一部でもその議論は行われ、にわかコミュッショナーたちが様々な代替案を展開している。

現行の問題点は、レギュラーシーズンとの整合性が充分でないことに集約される。143試合という長丁場で展開されたストーリーとの整合性だ。この部分を見える化し、結果にも反映させるような制度こそが望ましいのではないか。
レギュラーシーズンと地続きで、しかも面白さを損ねない、そんなCSの新制度を考えてみよう。

「クライマックスシリーズをハンデ戦にしよう!」

CSはその性格上、対戦前から彼我の不平等、不公平が内在している。しかもその不平等性は、決まった形ではなく、対戦する2チームの相対的立ち位置によって程度が大きく異なる。この不平等性をどうすれば制度の上で再現できるのか。その方法は、ハンディキャップの導入である。
シーズン成績をベースにした試合ごとのハンディを設けて、実際の試合であげる得点にそれを加算すればいいのだ。タイブレークの導入が検討されているくらいだから、得点ハンディキャップにもたいした障壁や反論などは無いかもしれない。

無論だが、現行の「1勝アドバンテージ」は廃止とする。これを残していたら二重取りになってしまう。

さらにこの制度は、事実上引分け延長を根絶できるというメリットもある。これを導入すれば、よほどの稀有なケース(後述の逆転現象)でもない限り、9回で試合は決するのだ。

ハンディキャップを乗せるには、その正当性、公正性の担保が何よりも大切である。したがってその数字は、伝説的なハンデ師がおのれの勘を頼りに恣意的に付けるものではなく、再現可能な数式ではじき出されるべきである。

そこで、僕なりのハンディキャップ算出式を考えてみた。

算出に使う数値は以下の3つ
1)レギュラーシーズンの勝率
2)レギュラーシーズンの勝利数
3)レギュラーシーズンのチーム得失点差

これらなら誰でも入手可能かつ納得性の高い数値だろう。
ゲーム差はどうするのだ、という意見もあるだろうが、その数値は勝ち数と負け数の総和(負け数はマイナス)で出されるので、勝率と勝利数の組み合わせで反映できると考えた。

1)~3)の数字の総和をチームの基礎点とし、対戦する2チーム間での基礎点の差を順位上位チームにハンディキャップとして上乗せするのだ。
ただ、単純な合算では上手くない。数字としては勝ち数がおそらく最大だが、場合によっては得失点差が上回ることもあるだろうし、そもそも勝率は1以下である。そこでそれぞれの数値に係数を掛けることにする。
暫定的ではあるが、下のようにそれぞれの係数を設定してみる。

a)勝率×100
b)勝利数×0.1
c)得失点差×0.01

a)~c)の総和をチームの基礎点とし、対戦する2チーム(シーズン2位と3位、1位と2位、あるいは1位と3位)の基礎点の差をCSでの当該カードにおける総ハンディキャップ点数とする。それを試合数(3勝先勝なら5、4勝先勝なら7)で割り、小数第2位で切り上げた数字が試合毎のハンディキャップになる。

この算出法で今年のCS出場チームのハンディキャップを計算すると、以下の結果になる。

[3勝先勝戦の試合毎ハンディキャップ]
・パシフィック・リーグ
大阪オリックスバファローズvs千葉ロッテマリーンズ
 →大阪オリックスバファローズ「+0.6点」

大阪オリックスバファローズvs東北楽天ゴールデンイーグルス
 →大阪オリックスバファローズ「+1.1点」

千葉ロッテマリーンズvs東北楽天ゴールデンイーグルス
 →千葉ロッテマリーンズ「+0.5点」

・セントラル・リーグ
東京ヤクルトスワローズvs阪神タイガース
 →東京ヤクルトスワローズ「+0.2点」

東京ヤクルトスワローズvs讀賣ジャイアンツ
 →東京ヤクルトスワローズ「+2.2点」

阪神タイガースvs讀賣ジャイアンツ
 →阪神タイガース「+2.1点」


[4勝先勝戦の試合毎ハンディキャップ]
・パシフィック・リーグ
大阪オリックスバファローズvs千葉ロッテマリーンズ
 →大阪オリックスバファローズ「+0.4点」

大阪オリックスバファローズvs東北楽天ゴールデンイーグルス
 →大阪オリックスバファローズ「+0.8点」

千葉ロッテマリーンズvs東北楽天ゴールデンイーグルス
 →千葉ロッテマリーンズ「+0.4点」

・セントラル・リーグ
東京ヤクルトスワローズvs阪神タイガース
 →東京ヤクルトスワローズ「+0.2点」

東京ヤクルトスワローズvs讀賣ジャイアンツ
 →東京ヤクルトスワローズ「+1.6点」

阪神タイガースvs讀賣ジャイアンツ
 →阪神タイガース「+1.5点」

なかなかそれらしいハンディキャップだ出てきたと思う。
それではこのハンディキャップを、実際に行われた1stステージの結果に当てはめてみよう。


・2021年パシフィック・リーグ クライマックスシリーズ 1stステージ
 千葉ロッテマリーンズvs東北楽天ゴールデンイーグルス

第1戦: 5.4対4 で千葉ロッテの勝利

第2戦: 4.4対4 で千葉ロッテの勝利

・2021年セントラル・リーグ クライマックスシリーズ 1stステージ
 阪神タイガースvs讀賣ジャイアンツ

第1戦: 2.1対4 で讀賣の勝利

第2戦: 4.1対4 で阪神の勝利

これはなかなかに興味深い結果である。
レギュラーシーズンの成績の差により、讀賣は阪神に3点以上の差をつけないと勝利することができないのだ。

どうだろう?
なかなかにスリリングではないだろうか?


最後に想定できる不備への対処も挙げておこう。

仮に以下の成績

A:6勝4敗133引分け勝率.600
B:85勝58敗0引分け勝率.594

でシーズンを終えたA,B2チームが同じ得失点差で上位2チームとなった場合、ハンデ基礎点は

A:0.6+60=60.6
B:8.5+59.4=67.9

となってしまう。
そのまま適用すると、2位のチームの方にハンディキャップを乗せるという情況が発生するのだ。
この対策としては、順位付けの際の勝率の優位性を発動させこととする。
つまり、「ハンデ基礎点が逆転する場合は、勝率上位チームのハンデを0で固定する、という一項を用意するのである。
この場合は同点延長の可能性が出てくるので、そこは現行に従えばいいかと。

さて、他に制度の穴はないだろうか?

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