2022年大学入学共通テスト【国語】について

いよいよ入試シーズンが本格的に始まりました。
昨日と今日は、2年目となる「大学入学共通テスト」が実施されました。今年はコロナウィルス感染症の陽性者が年明けから増加する中の試験となりましたが、初日朝、受験会場の東大で痛ましい事件が起き(言葉もありません)、2日目には南太平洋の海底火山爆発による津波警報・注意報の発令による中止と延期があり、違った意味で注目された共通テストでした。
ここでは、私の担当教科である初日に実施された国語について、書いていきたいと思います。

なお、この分析は多分に一介の塾屋・タカバタケ個人の主観を含むものである点、所属する組織の見解ではない点であることを最初にお断りしておきます。また、タカバタケは、大学受験の国語を長く指導していますが、この3〜4年は中学受験を主に担当しており、共通テストの指導を専門には行っていたわけではないことも、お断りしておきます。
ま、参考程度に、ってことで。

出題内容・形式について〜変わらぬ形式、変わる傾向

今年も例年通り、評論文・小説・古文・漢文のセット。50点満点☓4分野で200点満点。すべてマークシート=選択式の試験でした。「記述が導入される予定」という幻はすでに忘却の彼方なり。センター試験を踏襲する試験形式・出題分野です。

一方で。出題傾向は、共通テストになって変わっています。
2つ以上の文章を読んで比較したり、本文をもとに、どこかから突然現れた先生や生徒Aらが匿名で考察を展開したり、(前から出題はありましたが)「表現の特徴」について問う問題など、出題内容は多様化しています。
以前はストレート中心の配球でしたが、多様な変化球に対応することが対策として求められるようになっています。
今年も
■ 評論 =テーマに関連する2つの文章を比較し、まとめたものを考察する問題。
■ 小説 =キーワード(「案山子」)を辞書で引いた意味と、その語を使った俳句をもとに考察する問題。
■ 古文 =同じ題材を書いた文章を2つ読ませ、それをもとにした先生と生徒の議論の穴埋めをする問題。
■ 漢文 =序文+漢詩のセットで出題し、その2つの関連を問う問題。
が、各分野で出題されました。

「本文読んで、知識を聞いて、筆者の言いたいことを正しく捉えているかどうか問う問題が続く」
旧来のセンター試験しか知らない人は、「なんだこれ?国語なの?」という感想を持つかもしれません。受験生は、いろいろな変化球を打つための訓練が必須です。
「国語力があるだけではダメで、特別な共通テストの対策が必要である
と言われる所以です。

今年度の難易度と所感をいくつか書いていきます。


■ 難易度〜古文が難しくなった分、やや難化?〜


タカバタケの評価は、
 標準、2 標準、3 やや難、4 やや易
です。あ、現時点で予備校の分析は見ていません。大きく違いませんように(笑)。
最近、古文の指導をする機会が少なく、自分の力が落ちているせいもあるかもしれませんが、心情を読み取るためには丁寧に読み進める必要があり、第3問の古文はやや難しく感じました。まあ、あるあるの展開ですが。むしろ文章が2つあったことと、「とはずがたり」が会話中心で読みやすかったことで、救われたイメージ。最後の新傾向問題問4も、内容を把握してないと無理筋で、知識だけで行ける問題は語彙問題ぐらいだったので、ここは差がついたのかなと思います。
一方で、第4問の漢文は読みやすく、知識だけで行ける問題が過半を占めたため、ここは得点を積み重ねたかったですね。漢字の問題問1も良い問題でした。漢詩の知識の問題も、韻文の出る可能性はセンター試験時より高いことがわかっていたのですから、落とせないですよね。内容も平易。
第1問、第2問の現代文は、新傾向問題で時間を使うことに配慮したのか、本文は長くないし読みやすいし、ちょっと拍子抜け。いわゆるストレートな「国語的問題」はスイスイ解いていくことができました。どちらもいい文章でしたね。
一方で後半にある変化球=新傾向問題は、やはりめんどくさいし、自分が慣れていないこともあって、選択肢を選びながらちょっとふわふわした感じで厄介。やはり新傾向の問題がカギになりそうです。選択肢が短い問題もありますが、短いから易しいわけではなく、判断材料が少なくてかえって迷うんですよね。タカバタケは久しぶりに評論で間違えました。
一言だけ言わせてください。評論で「表現の特徴」問題、やめませんか。問5の正解。文章Ⅱは「軽妙」ですか?もう、ほんとにこの問題嫌い。
両方とも最後の問題は難しかったですね。

「知識」より「読解」、「考察する力」へ



今年の大きな変化として触れておくべきなのは、評論の漢字問題で五題のうち二題が「漢字の使われている意味」を問う問題だったことと(問1・問2)、小説で「語句の意味を問う問題」が消えたこと。現代文に関しては「知識より読解、考察する力」とはっきりメッセージが出ましたね。これは、素直に良い変化だと思いました。

前述したように現代文の文章レベルと、「読解」問題に関しては、以前より易しくなったように思います。もしかしたら80分という時間の中で多様な形式を問うために時間に対する配慮は、かなり意識しているのかもしれませんね。選択肢も4択のものが増えましたし、長い選択肢の問題も少なく、穴埋めさせる問題も散見されています。
そこで時間が浮いた分、多様な視点から考察させる新傾向問題に時間を充てて、バランスを取っているのかもしれません。今後、90分になりますが、作問する側も「80分」で多様な力をどう問うか、試行錯誤してるんでしょうね〜。

平均点予想は難しいのですが、センター試験の時から国語の平均点が下がるのは、①古文・漢文の文章レベルが高い、②セットとしての量が多い・・・の2つであり、今年は①で古文のレベルが少し上がった分、下がりそうな気がします。しかし実際は②の時間の要素も大きいので、受験生に話を聞いてみたいところです。

さて、まとめます。
王道国語問題は易しくなり、文章は読みやすくなったが、多様な形式に対応することが求められるようになった共通テスト。
たとえれば、
王道のストレートの球威と球速は落ちたが、
変化球は多彩になってやっかいなボールも多い

ピッチャーに対応していく感じでしょうか。
あ、見逃がしは許されないです。全部ストライクゾーンに投げてきますから、全部の球には手を出してね。

以上、強引に野球にたとえてみましたが、現時点での考察です。

本当は、新傾向問題に対して思ったことを書きたいのですが、長くなったので、また今度。まあ、言えることは、「作るの大変だろうなあ」です。
「決められた時間で、いろんな要素を問うような問題を、平均点も狙い通りに、うまく作ってよ、よろしく!」と、クライアントにムチャブリされた作問チームの苦悩。
を、ここかしこに感じるセットでした。だから、批判はしません。提案するとしたら、第1問〜第4問、全部で新傾向、頑張らなくてよくない?というところでしょうか。

なお、予備校の分析を見て、日和って難易度の調整をするかもしれませんが、予備校もやってることだから〜〜、許してくださいね!→開き直り。

どうやら数学が荒れたようで、全体的に難しかったようですが、まだ一次試験が終わっただけです。あと、難しくなれば平均点が下がるからボーダーが下がるの理です。難関大ほど二次の配点が高いですから、今回、取れなかった分野を補強して、私大・二次に向かっていきましょう!がんばれ、受験生!!

そしてこの記事を読んでくれた来年以降の受験生の皆さん。国語の共通テスト対策は、新傾向の問題・共通テスト独自の問題がこれだけカギを握っていることを考えても必須です。抜かりなきよう、ご準備ください。

お読みいただきありがとうございました。
入試シーズン、国語問題や志願倍率について、気になったことは、時間が許す限り大学受験・高校受験・中学受験を問わず書いていきたいと思います。

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