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バスケの言い分 ウェブ保存版

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MACPOWER誌にて2000年7月号から2004年12月号まで5年にわたって連載されたコラムを当時のままの文章で公開します。内容的には今読むとアレですが、まぁそれはそれとしてお…
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2022年8月の記事一覧

[#41] Panther気に入ってます - たまには手放しで褒めてみましょうか

ついにPantherが発売になった。WWDCでプレビューを見て以来、本当に待ち遠しい日々が続いたが、これでようやくPantherの良さについて堂々と話せる日が来たわけだ。そのくらい自分では気に入っているバージョンアップである。 まず目に付くのは描画速度の速さだ。これまでのどのバージョンのMac OS Xよりも、いろいろな処理が高速化されている。これは普通に使ってみてすぐにわかるくらいだ。確かテキストのレンダリング速度がアップするということを言っていたので、それの効果が大きい

[#40] プログラマってのは日々バグと戦ってるんです

先日、高尾山に登ってきた。山登りに行くっていうのもガキのとき以来。なんか懐かしい雰囲気だ。なんで山に登ったかっていうと、運動不足の解消(笑)というのもあるが、もう1つ、最近プログラミングのほうで解決できないバグに悩んでいて、一度ちょっと頭の中を空っぽにしたかったのだ。 自分で書いたコードというのはなかなか厄介な部分がある。細部まで熟知しているはずで、もちろん実際にかなりの部分は把握しているのだけど、実は細部の挙動はいまいちつかんでいないっていうこともたまにある。こういうとき

[#39] 使いやすい道具の手触り感

CLIEの新作「UX50」を手に入れた。画面がきれい、速度も速い、キーボードも使いやすい。最初にPalmを買ったのはずいぶん前のことだが、それから数えて5代目のPalm OSデバイス。いつもあまり使いこなすことができずに人に譲ってしまってたが、今回のCLIEはとても気に入っている。細かい作りもいいし、付属アプリも使い物になる。長い付き合いになりそうだ。 しかし不満はある。1つはSONYの意図する機能とPalm本来の機能がかみ合っていないということだ。Vaioでも同じことが言

[#38] Pantherにお金を払う理由をもんもんと考えてみる

前回はPatherの基本的な特徴について述べた。そして、その多くが新技術に基づいているのではなく、Jaguarで登場した技術の上に成り立っているものであり、それならば、なぜ$129も出してアップグレードしなくてはならないのだろうか?という疑問を投げかけてみた。実はオレもよくわからない。答えは出ていないので、もんもんと考えていることを書いてみる。 正直なところ、$129のアップグレードは高いのではという印象がある。その理由の1つは、Jaguarへのアップグレードも同じ値段だっ

[#37] WWDC 2003を終えてPantherについて考えてみる

例年話題にしている、WWDC(Worldwide Developers Conference)の時期がやってきた。これは開発者にとって1年で最も大事なイベント。ひとつは今後のアッブルの技術の方向性を確認するため、またひとつには懐かしい仲間や、普段は名前しか知らない海外の開発者、アップルの開発チームと直接会って話ができるという貴重な機会である。次の1年間を頑張るための、エネルギー充電の場という意味もある。どんなに忙しくても、見逃すことのできないイベントなのだ。 今年のWWDC

[#36] Cocoaの印象 その2 : 緩やかな制約の強み

プログラマーの行動を制限するものには、何があるだろうか?1つにはコンパイラの存在がある。コンパイラとは、プログラマーが書いたソースコードをCPUが理解できるバイトコードに変換するプログラムのことだ。この、用意されているコンパイラが理解できるかたちでしか、プログラマーはソースコードを書くことはできない。プログラミング言語も制限されるし、そこで使われる文法も決められたものしか使えない。これが制限としては一番強いモノだ。コンピューターの都合に合わせた制約、ハードな制約といえる。

[#35] Cocoaの印象 : 一貫性に身をゆだねてみよう

Cocoaと本格的に付き合い始めて数カ月がたった。ここいらで第一印象とは少し違う感触を持ち始めているので、その辺をちょっと書いてみたい。Cocoaの利点としてよく語られるのは、Interface Builderというツールを使ってGUI要素をオブジェクト指向的に扱える、ということだろう。でも、これってあんまり重要じゃないのかな?という気がしている。いや、もちろんすごいことではあるんだけど、それを支えている下地の部分に目が行き始めたのだ。 最初の本格的オブジェクト指向環境であ

[#34] ホームサーバーについて思うこと - こんなモノを作ってみました

今月はまずお礼から。3月6 ~ 8日に渋谷のビール屋さんで行ったプログラマー展「Friends of "X "」、予想を上回る大盛況でした。ご来場くださった皆さん、ありがとうございました。参加してくれたプログラマー仲間の面々も、えらく気合いの入った作品を出展してくださいました。感謝。熱気あふれる会場の雰囲気は、久しく感じたことのなかった高揚感を感じさせてくれました。作り手と観客の距離が近いと、やつばりいいですね。文句なく楽しみました。みなさん、ありがとう。 さて、そんなイベ

[#33] 「Friends of "X"」なんてことをやってみたその理由

先月予告したとおり、渋谷のビール屋さんでプログラマー展を行うことになった。3月の6〜8日なので、皆さんがこの記事を目にするころには終わってしまっているはずだ。やってよかったー、と祝杯をあげているか、あーなんか失敗だったなー、と反省しているかはわからない。なんとか成功させたいなという気分ではあるし、たぶん気持ちよくビールを呑んで無事終了している気もする。しかし、今この時点では、出展作品がまだ完成しておらず最後の追い込み時期を迎えている。こんなこと始めなきゃよかったという反省でい

[#32] Keynote登場について考える - アップル製ソフトのもたらす意味

ここ数年欠かさずに行っていたサンフランシスコのMacworld Expoなのだが、東京のExpoとも日が近いし、正月バタバタするのもなんなので(歳ですので)、今年はいいやと思って行かないことにした。新しいPowerBook も出ないと思っていたのだ。そしたら新製品は山ほど発表されるし、ちっちゃいアルミのPowerBook G4まで登場、しかも東京のExpoは中止とは。く〜、行けばよかった。盛り上がっただろうなぁ。 というわけで、友人たちとiChat しながらスティーブ・ジョ

[#31] オブジェクト指向「的」な話

俺がまだプログラミングの仕事で飯を食う前のことだが、プログラマー35歳定年説[*1]という話を聞いたことがある。プログラマーは頭の回転が悪くなるとやっていけないので、仕事ができるのは35歳が限界という説らしい。もちろん、いまはそんなことを言う人はいない。俺の定年を延ばしてくれたものはいくつかあるが、その1つはオブジェクト指向だ。今月はこれをテーマにしよう。ただし、あくまでオブジェクト指向「的」な話。 そもそもオブジェクトって何だろうか?訳すと「モノ」だ。モノに指向している、

[#30] Cocoa に負けないHIView それを支えるHIObject

先月の続きで、Jaguarから追加されたビユーシステムであるHIViewを取り上げる。まずはHIViewとは何か、どんなメリットがあるのかを見てみよう。 HIViewとは基本的にウィンドウ / メニュー / コントロールバー / アピアランス などを扱う昔ながらのQuickDraw系 ToolboxのAPIに完全に置き換わるシステムだ。画面上に見えているものはすべてHIView [*1]か、そこから派生したビューということになる。開発者にとってみればHIViewの使い方を覚

[#29] 改めてビューについて考えてみる - これまでのビューとCocoaのビュー

今回は、Mac OS X v10.2(以下、Jaguar)で導入された「HIView」について語ることにしよう。HIView はOS内部にも影響する大々的な改造で、開発者も待ちわびていた機能だ。しかし、ユーザーが目にする効果としては比較的地味なために、注目を浴びることが少ないようだ。しかしこのHIViewの登場で、Carbonの開発環境は大きく変わることになる。ひいてはJaguar環境の操作性の統一感にも影響する。HIViewは、それだけ大事な機能なのだ。そのHIViewにつ

[#28] Jaguar でAppleScriptが速くなったその理由

待ちに待っていた「Mac OS X v10.2」(以下、Jaguar)が出た。インターフェースと動作速度が徐々に成熟度を増してきた感のあるMac OS Xも、ようやくこのJaguarでひとまず完成か?というところまで来たと思う。JaguarはメインのOSとして十分に使える。 もちろん、前から述べている Finderの抱える問題点は相変わらず残っている。でもツールとして冷静に見れば、JaguarのFinderも十分実用に堪え得ると思う。 その理由の1つは、以前感じられていた