見出し画像

お化け屋敷で

私は幼い頃スゴイ怖がりだった。そのくせに、四谷怪談や番町皿屋敷(こんな字だったかな?)などの怪談話が好きだった。

東映の子供映画祭りでは、まんがのキャラクターもの、ヒーローものの他に「化け猫」などの怪談もやっていた。当時読んでいた少女雑誌には、梅図かずおさんなどの恐怖マンガが連載されていた。

きっと、コワイけど見たいという子供達が多くいて、需要があったのだろう。特に遊園地のお化け屋敷は、前を素通り出来ない気味悪さが大人気だった。

家族で遊園地に行った時、(私は小学校低学年だったと思う)父は例に漏れず、
「お化け屋敷行こか」と言った。私は怖さでドキドキしたが、妹達が
「こわいー、いやや」と言い出したので、姉のプライドもあり、強がって
「うん、行こう!」と言ってしまった。

結局、父と二人で行くことになった。弟にも「いくじなし!」と挑発したものの乗ってこなかったのだ。

どうせ、おとうちゃんも一緒やし、大丈夫、ホンモノちゃうし、怖くない!、と自分に言い聞かせて、父の後からお化け屋敷に入ったのだった。

ところが、ドロドロ、ヒューというお決まりの音に怯え、暗くて何も見えないのも恐怖で、私は
「ぎゃー!」、と叫んで前にいた父の上着に頭を突っ込んで、離れられなくなった。

父は上着を引っ張ろうとしていたが、私があまりにも強力に掴んで、中で頭をグリグリ押し付けて叫んでいたので、どうしようもなかったようだった。

長い時間私はその体制で、大声を張り上げて我慢してやっと出口を出た。何も見られなかったが、音だけでも汗が吹き出る恐怖だった。明るいところに出てホッとして、父から離れたその時、「ええっ!!!」私はうろたえた。



父だと思ってしがみついていたのは知らない若い男の人で、横には若い女の人も一緒だったのだ。

一体どうして?

男の人は何も言わず、ニコッと笑ってくれたが、横の女の人は怖い顔で私を見下ろしていた。

私は何も言えず、頭を下げたまま、どうしていいかわからなかった。顔が熱くなってカッコ悪かった。

その時、父が出てきて、「おまえ、エライ早く行ってもたから、どこにおるんかわからんかったわー」と言った。

若い二人は何も言わず歩いて行ってしまった。父は何も気づいてないようだった。

私は何事もなかったように、
「思ったより怖なかったなー」と父に強がった。汗がドバーッと出ていた。

今思えば、あのお兄さんはなんて心の広い人だったのだろう。彼女に抱きつかれるハズがお化け屋敷に入ったとたん、どっかのガキに上着の中に頭を突っ込まれ、うるさく騒がれて、結局そのまま出てしまい、損した気分だっただろうに。

顔は思い出せないけど、きっと男前だったに違いない。今更ながら、お兄さん、ありがとう。

それから、父とお化け屋敷には何度か入ったが、いつもぎゃー、声をあげながらも用心深く父を確認してひっついた。その分、少し冷静だったかも知れない。



#お化け屋敷 #思い出話 #怖がり #笑い話

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?