バスケは5人でやるスポーツではない、という話

NBA的な、シックスマンが大事だ、とかベンチメンバーも含めて全員で戦っているのだ、とかそういう話ではなく、ミニバスにおけるルールの話です。少なくとも指導者は正確に理解しておかねばなりません。

バスケの試合成立人数

当たり前のことですが、バスケでチーム内で同時にコートに立てるのは5人までです。
試合開始時点に5人そろっていないと試合不成立で負けになります。

次の場合、ゲームの没収によりチームは負けになる
・ゲーム開始予定時刻から 15 分を過ぎてもチームがコートにいない、もしくはプレーをする準備のととのったプレーヤーが5人揃わなかった場合。

2022バスケットボール競技規則


中学や高校の部活でバスケをやっていた人にはあまり想像できないかもしれませんが、社会人のチームだと人数がそろわず5人ギリギリで試合に臨んだり、試合開始に5人そろわず不戦敗になったりというのがごく稀にあります。

ちなみに、試合が開始してしまえば、怪我や5ファールでの退場でプレーヤーが4人以下になっても試合は続行できますが、1人になったら負けです。
1人だとスローインができないからですね。

ゲーム中、コート上でプレーをすることができるプレーヤーが1人になったチームは、ゲームの途中終了により負けになる。

2022バスケットボール競技規則

ということで、最低5人いれば試合はできるのですが、これは中学(U15カテゴリー)以上の話です。
ミニバス(U12カテゴリー)は5人では試合が成立しません。
ミニバスでは基本的には10人以上(条件付きで8人、9人でも可)出場しなければならないというルールがあります。

ミニバスは5人では試合ができない

なぜミニバスだけ出場人数の規定が異なるのか。

小学生の場合、体の発育によって実力差が大きく出てしまうので、例えば身長の高いエースプレーヤーが一人いるだけでゲームが全く違うものになります。極端な話、試合に勝つことだけを考えば、そのエースプレーヤーだけが攻め続ければよい、ということが良く起こります。
そうでなくとも、基本的には、一番強い5人が出続けた方が強いため、何十人も部員がいても5人だけしか試合に出れない、ということになります。

それも勝負の世界なので仕方ない、という意見もあるとは思いますが、ミニバスはあくまでも育成・教育という観点が大事なので、できるだけ多くの選手が出場できるようにするため、基本的には1試合で10人以上出場しないといけない、というルールになっています。

出場人数についての条件

この出場人数については、ミニバスの世界では常識ですが、ミニバスをやっていない人には意外と知られていないルールです。

登録競技者が10人以上のチームは10人未満で大会にエントリーすることはできない。また、 登録競技者数が大会エントリー数の上限を超えるチームは、大会エントリー数の上限に満たない人数のプレーヤーで大会にエントリーすることはできない。
ー第3クォーターまでに10人以上のプレーヤーが少なくとも1クォーター以上、2クォータ ーをこえない時間だけはゲームに出場していなければならない。

2022バスケットボール競技規則 ミニバスケットボールにおける適用規則の相違点

ポイントは、
①10人以上いないとダメ
②3Qまでに10人出さないとダメ
③1~3Q全部に出場するのはダメ

ということです。③は②を守っていたら達成できるのですが、その後に続く例外の規定があるため、実は重要な内容です。

・登録競技者が8人以上10人未満のチームは、全ての登録競技者をエントリーすることで、大会にエントリーすることができる。
ー第3クォーターまでに全てのプレーヤーが少なくとも1クォーターはゲームに出場しなければならない。
(中略)
・プレーヤーは第3クォーターまでに続けて3クォーター出場してはならない。

2022バスケットボール競技規則 ミニバスケットボールにおける適用規則の相違点

これは、少子化によるプレーヤーの減少で10人の人数が確保できないチームのための救済措置として追加されたルールです。
じゃあ何で5人以上でOKとしなかったのかというと、強い5人がずっと出続けるのが一番いいということで、意図的にエントリー(競技登録)を5人しかしないチームが出てくるのを防ぐためです。

なので、「プレーヤーは第3クォーターまでに続けて3クォーター出場してはならない。」という条文が重要になります。これを満たすには8人以上いないと成立しないのです。

7人の場合

8人の場合

この場合でも、10人よりも8人で出た方が強い可能性があるので、意図的にエントリー数を少なくして8人で出ようするチームは排除できないのですが、2019年から

プレーヤーは第3クォーターまでに続けて3クォーター出場してはならない。この条件を満たすために、コート上のプレーヤーを4人以下としてゲームをすることは認めない。

2022バスケットボール競技規則 ミニバスケットボールにおける適用規則の相違点

という条文が追加されたことで、ギリギリの8人しかいないと、怪我やファールアウトで退場してしまうと条件を満たせず負けになるため、エントリー数を意図的に減らす、という選択肢が非常にリスクの高いものになりました。

ミニバスにおける交代の正しい理解

もう一つ、ミニバスの出場者に関する特別なルールの一つに、交代に関するものがあります。

・第1クォーターから第3クォーターまでは、プレーのインターバル中とハーフタイム中のみプ レーヤーを交代させることができる。
・第4クォーター、各オーバータイムでは、「交代が認められる時機」にプレーヤーを交代させることができる。

2022バスケットボール競技規則 ミニバスケットボールにおける適用規則の相違点

つまり、1Q~3QまではQの途中に交代させることができない、というものです。4Qは普通の試合と同じように交代が可能です。
なんでこんなルールにしたかというと、10人出場のルールがあるためで、例えば1Qの最後(あるいは最初)の10秒だけ出場させて出場規定をクリアさせる、ということを防ぐためです。

ルールの概念としては合計〇分以上出場としてもいいはずですが、時間で管理するのはTO(テーブルオフィシャル)が対応できないので、Q内で交代ができないルールにしたと推察されます。


ただし、これにも例外があり、

ーやむをえずクォーターの途中で交代があった場合、それまで出場していたプレーヤーも交代して出場したプレーヤーもその1クォーターを出場したものとみなされる。

2022バスケットボール競技規則 ミニバスケットボールにおける適用規則の相違点

やむをえず、というのは怪我やファールアウトの場合のことで、怪我やファールアウトの場合はQ内でも交代が可能で、かつ、交代した選手は両方とも出場カウントになる、ということになります。

これを悪意をもって利用するとすれば、1Qの最後の数秒でわざと怪我をしたふりをして交代して出場Qを稼ぐ、ということも考えられるのですが、そんな指導をするコーチがいたとすれば追放する、というのもルールに付け加えておいた方がいいですね。

意図的な怪我を装って交代する抜け道

交代についてルール改訂を求む

上記のような交代は論外なのですが、この3Qまでは交代できない、というルールは何とかならないかな、と個人的には思っています。

なぜかというと、Q内で交代ができない、というルールがあるため、どんなにリードを広げていても、途中でメンバーを落とす、ということがしづらく、結果として普段試合に出ていないメンバーが出れるのは何かあったときに元に戻せる4Qだけ、ということになるからです。

意図的に出場時間を減らす(ちょっとだけ出す)交代を避けつつ、でもできるだけ多くの選手が試合に出れるルールになればいいなと思います。

例えば、
「10人を超えて出場する選手は、第3クォーターまでであっても交代できる。その場合、交代させる選手はそれまでに1クォーター以上出場していることを条件とする。」
とか
「1クォーター以上フル出場した選手は、第3クォーターまでであっても途中で交代することが可能」
みたいなことでどうでしょうか。

誰に言ったらいいんだろう。。。


補足

ふと気になったのですが、

ゲーム中、コート上でプレーをすることができるプレーヤーが1人になったチームは、ゲームの途中終了により負けになる。

2022バスケットボール競技規則

という条文と、

プレーヤーは第3クォーターまでに続けて3クォーター出場してはならない。ここの条件を満たすために、コート上のプレーヤーを4人以下としてゲームをすることは認めない。

2022バスケットボール競技規則 ミニバスケットボールにおける適用規則の相違点

という条文が一見矛盾しているように見えます。

正確に解釈しようとすると、基本的には4人でプレーしてもいいけど、それが第3Qまでの出場条件を満たすための行為であってはいけない、ということですね。そうでなければわざわざ人数がいるのに4人でプレーする必要がないので、審判としては「交代を出しなさい」ということができるということだと思います。
4人以下でもOKのルールがミニバスでも残っているのは、第4Qで大量に退場者が出た場合に適用されるということだと思いますが、8人以上はいるはずなのでそんな事態はまあおこらないですね。


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