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夢を諦めた自分だからこそ、いつだって支えてくれたマンガを応援したい。 -私を構成する5つのマンガ-

私を構成する5つのマンガを語るということは、自分自身の人生を語るに等しい。極度の面倒くさがりかつ、「誰が自分の人生に興味あんねん」という思いがありnoteを書かないでおこうと思っていたけれど、私を構成する5つのマンガのタグがついたnoteを読んで気持ちが変わった。イジメられていた辛い過去や自分の直したい性格など自分をさらけ出すことを厭わない文章を読み、なんて美しいのだろうと心惹かれた。

極東学園天国』風に表現すると、あたたかかったんだ。そこで、

「恥の多い生涯を送ってきました」  (太宰治『人間失格』より)

という人間失格ばりの自分の半生を振り返りながら、何かそこから学べるようなことがあれば良いと思い、けじめをつける為にも人生初のnoteを執筆することに決めた。

ここで紹介するのは今でも教訓として残り続けているマンガを選出した。ちなみに1人の作家さんからは1作品のみという鉄の掟を決めた。(でないと、日本橋ヨヲコ先生の作品が独占禁止法にひっかかってしまう為)

私を構成する5つのマンガ

【1】努力の大切さを教えられ、身体を強くするきっかけをくれた『SLAM DUNK』

もはや説明不要のバスケマンガ。選んだ理由は一つ。マンガで人生を変えた初めての経験だからだ。小学生の私は背が低いことがコンプレックスだった。どの学年でも前から数えた方が早く、身体も弱くて朝礼の最中に貧血で倒れることもしばしばあった。それでもバスケを始めたのは完全に『SLAM DUNK』の影響だ。類まれなスピードとドリブル、パスセンスを武器に背の高い強敵達に立ち向かう宮城リョータは僕のヒーローだった。(SLAM DUNKはポイントガードに強キャラが集まりすぎて泣ける)

自宅にバスケのゴールを作り、毎日シュート練習をした。宮城リョータのようにチビだからこそドリブルは誰にも負けまいと手元を見ずにドリブルする練習を重ねた。結果、上級生に混ざってレギュラーになれたし、身体も強くなった。でもチビのままだった。(背を伸ばす方法も教えてくれ)

【2】意志の強さが人生を変えることを教えてくれた『ARMS』

ざっくりとあらすじを解説すると"ARMS"というナノマシンの集合体を体に埋め込まれた少年達が謎の秘密組織エグリゴリに立ち向かっていくストーリー。"ARMS"とは?エグリゴリの目的とは?先が気になるミステリー要素と少年マンガらしいバトルが高次元で融合している名作中の名作。実はバトル以外の部分で学ぶべきところが非常に多いマンガである。このマンガに出てくるセリフを今でも人生の座右の銘としている。

人の歩みを止めるのは絶望ではなく "諦観(あきらめ)"
人の歩みを進めるのは希望ではなく "意志"

『ARMS』は意志を持って突き進む強さを教えてくれた。

【3】この世の真理「等価交換の法則」と、「等価交換を否定する新しい法則」を教えてくれた『鋼の錬金術師』

私を構成する5つのマンガ1位に選ばれた大人気ダークファンタジー。錬金術の基本である、何かを得ようとするならそれと同等の対価が必要という「等価交換の法則」はこの世の真理だと思う。プロアスリートやアーティスト等誰もが羨むようなスターは多くが自分の時間を対価として捧げている。サラリーマンは労働力の対価として給料をもらう。等価交換とはある種、何を犠牲にできるかを覚悟することのようにも思う。

物語の終盤、旅を通して気づいたアルが提唱する新しい法則がある。

「10もらったら自分の1を上乗せして11にして次の人へ渡す
 小さいけど 僕達が辿りついた「等価交換を否定する新しい法則」です

「等価交換を否定する新しい法則」は仕事においても常に心がけるようにしている。

【4】仕事への情熱は『大東京トイボックス』から形成された

私の仕事における考え方のベースを作っているのは間違いなくこの作品の影響である。ゲーム制作というモノつくりの最前線をリアルに、かつ熱く描いた作品である。主人公の天川太陽はとにかくあきらめが悪い。少しでも面白いゲームを作る為に、自分が面白いと思うモノをギリギリまで目指し続ける。太陽が発する「仕様を一部変更する」という一般的なセリフがこうもカッコイイとは!他にも好きなセリフがある。

「実際にゲームを作る上で一番大事なことは何ですか」と学生に問いかけられた依田(現プログラムチーフ)は「魂」と返答し、学生達の失笑を買う。その続きのセリフが以下のセリフだ。

どの現場にもそこそこプログラムが組める奴はゴロゴロいる
だがその先いけるヤツってのは あと一行削ることを決してあきらめないヤツだ コトバにすると陳腐だがな
魂ってのは案外そういう小さいところに宿るもんなんだよ    

細部にも手を抜かず、最善を目指し続ける。仕事で大事にしたいマインドである。

【5】私に人生を与えてくれた『G戦場ヘヴンズドア』

日本橋ヨヲコ先生を知るきっかけになった作品である。貪るように読み進めた結果、全身全霊でまっすぐにぶつかってくるセリフの数々にハンマーで脳みそを直接叩かれているのではないかという程の衝撃を受けた。何回読んでも嗚咽が出るくらい泣いてしまうマンガは未だにこの作品だけである。このマンガを読もうと思っている人はある程度の覚悟を持って読んだ方が良い。人生が変わるから。

当時、私は入社3年目ながら新卒採用の一次面接の面接官をしていた。就活生に向けて「あなたは何がやりたいですか?」と面接で問いかけ、甘い部分や下調べが足りていない学生にダメ出しをしていた。

でも、この作品を読んでから世界が完全に変わった。いや、強制的に変えられた。「あなたは何がやりたいですか?」と発した言葉がブーメランとなって自分に刺さり出した。面接の度に自問自答することが増えた。「お前は人様にとやかく言う程やりたいことがやれてんのか?」と。

ある時面接で自己PRを聞いたら「私はひょうきんです」という学生さんがいた。彼は放課後や昼食時にクラスで10分間ほど自分の為に取られる時間があり、そこでモノマネを披露したりして笑いをとっていたと言っていた。流石にやってみて下さいというのは酷だと思い、では何故お笑いをやらずに弊社を志望しているのか聞いてみると、しどろもどろになりながら取り繕ったような回答をしていた。無性に腹が立って、色々言ってしまった。(ごめんね)

私は実はお笑いがやりたかった。面白さランキング3票で3位(1票は自分で入れた)だった自分にはそんな時間は与えられなかった。誰も不幸にならない、ただただ皆が笑っているあの空間が大好きだった。世間体という実態のないものに怯え、就職活動を始めた時に頭にはあったのに誰にも言い出せなかった。いや、成功する確率で考えたら1%にも満たないであろう世界に飛び込むのが怖かっただけかもしれない。

だから、彼に腹が立ったのではない。自分自身に腹が立ったのだ。ハンマーとブーメランでズタズタになった心でもう一度『G戦場ヘヴンズドア』を読み返した。伝えたいテーマと違うかもしれないが、

「人間どーせいつか死ぬんだから、やりたいことやって死のう。」

そう強く思った。自分がいた会社は嫌いでなかったし、むしろ一生ここで働けるなとも思っていた。だからこそ自分がやりたかったことをやれないなと思い、会社を辞めお笑いの道へ進んだ。

バイトやライブ、ネタ合わせで忙しいし、周りからは嘲笑され続け何度も挫折を経験した。そんな時にいつも支えてくれたのも『G戦場ヘヴンズドア』だった。貧乏で何もなかったけれど、そこには全てがあった。ネタの方向性で相方と大ゲンカしたりもしたけど、誰かの笑顔の為に議論を交わすのは有意義な時間だった。初めて事務所のライブで1位を取った後に食べた寿司は本当に美味かった。自分には才能も何もなかったけれど夢を追う仲間たちと過ごした日々は本当に充実していた。子供が生まれたタイミングで自分の夢は諦めたが、全く後悔はしていない。このマンガに出会わなければおそらく私は一生後悔していただろう。そして、踏切の手前から絶対に届かない向こう側に向けて、「俺ならこうするのに。」と批評めいた声を叫び続けていただけの人生だっただろう。

明日死ぬかもしれない人生だからこそやりたいことをやって欲しい。誰に何を言われても気にするな。後悔は自分の中にしか生まれない。決めるのはいつだって自分自身だ。

諦めた夢の先に

夢を諦めた今、私が思うのは夢は人に託せるし、自分で叶える以外にも関わり方はあるということ。だから私は全てのクリエイターや表現者を尊敬する。そして、夢を諦めた私だからこそ、いつだって支えてくれたマンガを応援したい。

私は今、色々と奇跡的なタイミングが重なり、電子書籍(マンガ)を配信する会社で働いており、アルのライターとしても記事を書いたりしている。私を構成するのは紹介した5つのマンガだけではなく、今まで読んできたマンガ、そしてこれから出会う新しいマンガ全てである。

「マンガに少しは恩返しできているだろうか?」

そんなことを考えながら日々働いている。

#私を構成する5つのマンガ

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