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クルーズ船員だった私が見たスラロムのコアバリューとは。

スラロム・ビルド・ボストンのデータエンジニアが語るスラロムのコアバリュー(価値観)について。

作者: Nick Calow 日本語訳: Tomohiro Iwahashi-bashii

 どんな企業にもそれぞれの価値観(コアバリュー)があります。コアバリューは意志決定やクライアントと顧客が企業に対して抱くイメージに影響を与え、企業文化や従業員の行動を形作ります。しかしながら、企業の価値観と個人の価値観は必ずしも一致するわけではありません。信念の違いだったり、求めるものの違いだったり、時にはライフスタイルの違いだったりと色々あるのが現実です。私がスラロムに参加した時、私はスラロムのコアバリューを理解するというよりむしろ、もう既に私はそれに従って今まで生きてきたという感じがしました。

スラロムには10個のコアバリューがあります。この10のコアバリューにはビジネスの世界で成功するためだけではなく、充実した生活を送るためのいくつかの教訓やガイドラインが含まれています。これは結構すごいことです。

 実は、私は始めからコンサルタントだったわけでもなく、IT業界にいたわけでもありませんでした。むしろ私は海の上の舞台技術プロフェッショナルとして、クルーズ船ロイヤル・カリビアンで働いていました。これらの個人的な経験から私は、私なりの価値観を身に付けていきました。私がスラロムでに興味を持つことになった一番最初のきっかけは、私が持っていた価値観とスラロムのコアバリューがとても似ていたからでした。むしろ私の方がもっと上手にそれを説明できると思った程でした。そしてスラロムのコアバリューが会社の紹介の一番最初に行われるところにスラロムへの期待が膨らんだのでした。 今日は、この10個のコアバリューについて、いくつかのグループにまとめて、私の個人的な経験も織り交ぜながら説明していきたいと思います。

Group 1: Drive connection and teamwork. Do what is right, always. 

「繋がりとチームワークを駆使する。 / 正しいことをする、常に。」

劇場の仕事は協業に始まり、協業に終わります。私も技術ディレクター、照明デザイナー、舞台監督等様々な役割をこなしてきましたが、どれも決して一人でできる仕事ではありませんでした。滞りなく舞台を進行し、観客に感動を与えるために、一人の俳優の背後には少なくとも3人の技術担当がスタンバイしています。照明、音響、部隊、衣装、メイク・・・どれ一つ欠けても舞台は成り立ちません。こういった環境での経験から私はチームワークがもたらす力を実感し、チームワークによって一人では解決し得ない問題を解決することができると知りました。私は一人の人間で、一つの考え方を持ち、一つのスキルセットを持っています。しかし、異なる価値観、スキルセットを持つ人々と協業することによって最終的な結果はもっと、もっと良くなるはずです。倫理感、モラル、そして「正しい」ことについての議論は舞台の世界でもしばしば起こります。

舞台の世界では、倫理や道徳、そして「正しいこと」の問題がよく取り上げられます。それは、ほとんどの演劇が、何らかのテーマに対して何らかのスタンスをとっていたり、ある考え方や世の中の問題に注意を向けようとしていたりするからです。例えば、『ララミー・プロジェクト』は、ウィスコンシン州ララミーで起きた若いゲイ男性マシュー・シェパードの殺人事件を、事後のインタビューを通じて描いた作品でした。一世を風靡したミュージカル「ハミルトン」は、初代財務長官アレクサンダー・ハミルトンの目を通して、我が国の建国の物語を描いています。その中でハミルトンは、有色人種の扱い、奴隷制の問題、そして建国当時のアメリカの約束について、かなり多くのことを語っているのです。演劇は、私たちが生きる世界と、私たちが信奉するモラルについて考える機会を生み出します。「正しいことをする」というのは大変難しく、時に簡単にはその答えが見つかりません。しかし、演劇が何を伝えようとしているのかを理解することで、正しいことを行う方法をより簡単に理解することができるかもしれません。
価値観は人それぞれで、それは当然のことです。しかし、自分が正しいと思うことを行い、社員や顧客など他の人々がそれに同意することが、私が考えるこの理想の本筋です。周りの人たちのニーズを理解し、それを満たそうとするとき、「正しいことをする」ためには、自分自身の善悪の判断基準を駆使する必用があります。

正しいことをする最良の方法は、何が正しいかを知ることです。何が正しいかを知る最良の方法は、何が正しいかについて他の人と合意することです。何が正しいかについて他の人と合意するための最善の方法は、リーダーが、何が正しくて何が正しくないか明確な線引きを示すことです。そして、そのための最良の方法は、リーダーが自分自身とその選択を、皆が標準として照らし合わすことのできる行動モデルとして示すことです。それが、リーダーシップの最も重要な側面だと私は思います。

Doing what is right involves using your own personal sense of right and wrong to help understand the needs of the people around you and work to fulfill them.

周りの人たちのニーズを理解し、それを満たそうとするとき、「正しいことをする」ためには、自分自身の善悪の判断基準を駆使する必用があります。

Group 2: Take ownership. Get it done. Focus on outcomes

「オーナーシップを持ちやり遂げる。 / 結果に集中する。 」

 演劇学校を卒業しロイヤルカリビアンでの仕事を始めた頃、わたしの職場は劇場ではなく、小さな船上のアイスリンクでした。そこではフィギュアスケーターが毎週、週5回のスケートショーを披露していました。そして、ショーが始まる前にすべての準備を整えるのが私の仕事でした。私の最も重要な仕事は氷自体を整備することでした。ショーが始まる数時間前、ゴルフカートぐらいの大きさの氷面舗装車に乗り込み、氷の表面を削り平らにするのです。スケーターが技を披露する時に氷面をできるだけ強く蹴り、トゥーピックと言われる部分で。そのキックによって1-2フィート持ち上がり、スピンし着地し技が完了します。もし表面が滑らかでなく、コブなどがあれば演技は失敗し、スケーターは転倒し怪我をしてしまうでしょう。揺れている船の上では、できる限り多くの注意が必要です。それは、責任と信頼の問題でもあります。
もし、あなたが誰かの安全について責任を担う時、あなたが持っている力は、どんな時もそれを全うすることに注ぐべきです。誰かのせいにしてはなりません。
コンサルティングの世界においても同じことが言えます。あなたのソリューションは他の誰かのソリューションではありません。
もちろん、一つ一つのボタンを押すたびに誰かの命がかかっているわけではありませんが。時にはそれに似た真剣さ必要です。そんなときも、この価値観に沿って生きていれば、事態にも心の準備ができるはずです。

Group 3: Inspire passion and adventure. Celebrate authenticity. Smile!

「情熱と冒険心を呼び起こす。 / 自分らしさを称賛する。 / スマイル!」

 信じられないかもしれませんが、クルーズ船で世界を旅することには、他の大多数の人が休暇を楽しむために乗船しているのではあっても、いくつも良いところがあります。アメリカ人である私は、乗組員の中でもかなり少数派で、世界中のさまざまな背景やライフスタイルを持つ人々と知り合うことができました。モンテネグロのコトルの山城からバルバドスのブリッジタウンの白い砂浜まで、通常の仕事とは別の経験をできたことで、仕事に戻ることがより一層楽しくなりました。自分のやっていることが好きで、そのやり方が好きなら、もっとうまくやれるはずです。単純なことです。

 ロイヤルカリビアンでの契約は7か月で完了しました。そしてそのうちの多くの時間を同じ人々と過ごしました。私たちの「ブラックシャツ」チームは(私たちのチームはユニフォームとして黒いポロシャツを着ていました。)皆、他のメンバーから多くことを学んでいました。そして多くの時間を共に過ごすことで、本来の(Authenticな)個性を表現することができました。一緒に働くメンバーがどんな人間かを知り、しばしば一緒に酒を飲んだり、船を降りて冒険に出かけたりする体験を通して、仕事での関係もより良いものになり、唯一無二の本当の結束が生まれました。

 どのような職場であっても、嬉しいときも、困難な時も情熱と冒険心を共にすることで、あなたと仲間の絆はより深いものになります。どんな困難もそれを共有することで、教訓に変えることができます。困難な時に、勇敢な笑顔(スマイル)を作るということではなくて、むしろあなたの周りで働く人々のために、心からのスマイルできるということが重要なのです。

これらのコアバリューは振る舞い方や方法論ではなく、本来のオプティミズムなマインドセットに基づいて実践されます。しかし、それを実現するのは実は難しいことです。なぜなら本来の自分でいることは本当はとても難しいとみんな知っているからです。しかし、誰も一人でこれを実現しているわけでは無いと思います。情熱を共有し、冒険を通して、本来の自分でいること(AUTHENTICITY)、ポジティブに生活を送ることをサポートし合えるグループと環境を育てることが何よりの秘訣です。一緒に働く人を知り、信じることに価値があると私は信じます。つまるところ、笑顔でいる理由があるのなら、笑顔を作ることなんて簡単です。

It’s not just about putting on a brave face and smiling through the hardship, but rather to be able to give an authentic smile because of the people and work that surrounds you.

困難な時に、勇敢な笑顔(スマイル)を作るということではなくて、むしろあなたの周りで働く人々のために、心からのスマイルできるということが重要なのです。

Group 4: Fuel growth and innovation. Stay humble and curious. Build and shape a better future.

「成長とイノベーションに火をつける。 / 常に謙虚かつ好奇心を胸に。 / より良い未来に向けて創造しカタチにする。」

 私がクルーズ船での生活を終えたのは、私が23歳の時でした。私はこの社会の中でどうやって生きていくのがベストなのか分からずにいました。私はその時、体力勝負より、スキルとマインドと手先を使って仕事がしたいと思っていましたし、未来を作るための活動に参加したいと思っていました。調べた結果データの世界を見つけ、この業界にどうやって入ったら良いのかを考えました。私は12週間、500時間以上のブートキャンプコースに参加し、夏に勉強、秋にスラロムに応募し、冬からスラロムに参加することになりました。イノベーション、好奇心、未来をデザインしたいという思いが、操舵室の遥か外のどこかでの挑戦に私を導きました。
世界を旅する船員としての資質以外は、すべてを置いてこの世界に飛び込みました。

 私たちが生活する今、現在も素晴らしく、私たちは、既にあるものから多くを学ぶ事ができます。しかし、未来には更に新しいものが生まれて来ます。限界は常に塗り替えられ、思いもしないチャンスが生まれます。20年前、「クラウド」といえば、雨が降るか降らないかを頭上で教えてくれるものに過ぎませんでした。今、世界はかつてないほど相互につながっています。この理想を実現し、この考え方を共有することで、どんな新しいイノベーション、新しいテクノロジーが生まれるのか、想像してみてください。

 スラロムが支持するコアバリューはただの言葉の羅列ではありません。そこには深い意味があります。そして実際にこのコアバリューを受け入れた人々は、世界が変わっていくことを実際に目にしてきたのです。私が初めてスラロムに応募したとき、私は既にスラロムのビジネスに共感していました。しかし、実際に入社してみると、スラロームのリーダーが顧客や従業員に対して、どれほどの配慮と敬意を払っているかを知り圧倒されました。

 自分のコアバリューに従って生きるのは大変なことです。それに加えて、会社のコアバリューにも従うのはもっと大変です。ただ、あなた自身がしっくりこなかったコアバリューを持ち続けることはできません。これらのコアバリューの意味するところをよく考えてみてください。真剣に考えてみてください。あなたが大切だと思っているものと比べてみて、それから、新しいものを追加することができるようになるでしょう。そしてその次が、一番難しいところなのですが、それを実践することです。でもそれはきっと不可能なことではないはずですし、もしかしたらあなたの人生を変えるのかもしれません。 
それでは、幸運を祈ります!

翻訳者のあとがき(bashii): 本記事投稿時点で、私がスラロムに参加してから1年ちょっと経ちました。やはりスラロムに集まってくる人は言葉にするのは難しいのですが、直感的に何となく「イイ感じの波動」のような何かを持っているように思うのですが、私はそれが本当に気に入っていて、その直感は1年を経て増々強くなりました。私も筆者のNickと同じく、データ周りのエンジニアの一人として、コアバリューについて共感するところがあったので、今回、日本語で紹介することにしました。スラロム東京も、まさに世界を渡るクルーズ船のようで、ごちゃまぜの国籍、バックグランドの人間がコラボレーションしている刺激的な環境です。異なる価値感の人々が集まる中で、コアバリューを実践する難しさと楽しさを実感しながら、襟を正す思いで今回翻訳させていただいました。何かのヒントになれば幸いです。

その他記事について、Slalom Tokyo Magazine も参考ください。

※ この記事はスラロム・ビルドNick Calowの以下記事をTomohiro Iwahashiが日本語に翻訳・加筆したものです。スラロム社の公式見解やレビューとは直接の関係がありません。

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