【夢から醒めて】#1 「2012-2月末」


「今日もおやすみなさ〜い‼︎」
そう心の中で呟き、仏間に敷いた布団に潜り込む。
自分の部屋は2階にあるのだが・・・まぁ、なんというか物置みたいになっているので、とても寝られる状態ではなかったりする。
布団の向きはちゃんと頭の方に仏壇が来るようにしているので、北枕になっているのは気にしていない。

寒さの山を越えたとはいえ、まだまだ寒い2月末。自分の体温で布団が温まるまで足を擦り合わせたり、肩の辺りにできる微妙な隙間を無くしたり。

もぞもぞしていると布団の中が少しずつ暖かくなってくる。
「布団の中の空間は人類にとって最高の場所の一つでもある!」
という事に対して異論がある人はいないはず‼︎

(今日もよく頑張ったよな〜、あたい。明日も頑張ろ)

何を頑張ったのかはよく覚えていないけど(笑

〜〜〜〜〜

〜〜〜〜〜

モヤモヤとした意識の中、自分が夢を見ているな〜という感覚があった。なんだかものすごく長い時間、モヤモヤと・・・

・・・

・・・

・・・

・・・と、言うわけでやってきたのは地方の学校。今は旅公演で色々な学校を回っている。
劇団に入って2年目の終わりなので、出る方ではなくて裏方さんの方。
何公演かしてきたけど、まだ上手く手順が入っていない。「まだ分かんねーのか!」

劇団先輩で、なんていったら伝わりやすいのかな・・・ふる〜いアニメの原始時代の作品で、髪ともみあげと髭が繋がっているモサモサなキャラ。で、顔が厳しく筋肉質なガタイだけど、身長は160cmちょいの先輩・・・に、怒鳴られなが舞台セットの仕込みをする。

公演場所は体育館ではなく普通の教室。
黒板と教壇がある方に平台や箱馬を組んで、2尺(約60cm強)の高さの舞台を組む。
それから窓側と入口の方にサブロク(約90cm✖︎約180cm)の黒いパネル、障子1枚ぐらいの大きさっていったら想像しやすいかな? を2枚並べて立てる。
組んだ舞台の上に赤いパンチ(硬目の絨毯みたいなの)を敷いて、おめでたい日によく見る赤と白の縦縞の幕で黒板を覆うようにセットしたら完成!
もちろん、パネルの後ろには舞台面に上がりやすいように、箱馬(木箱)で階段を作った。さぁ、後は本番を待つのみ‼︎

今旅公演で回っているこの作品。名前は・・・忘れてしまったのですが(汗)あらすじはざっくりこんな感じ。
ーーーさる国にいる意地の悪い殿様が、たぬきにばかされて毒饅頭を食べてしまい、腹を下してめでたしめでたし。農民は大喜び・・・
水戸黄門みたいな勧善懲悪というか、嫌な上司をギャフンと言わせてスッキリしたぜ‼︎ という、とてもシンプルなお芝居で回っている。
コレだけだと本当になんて事ない物語なんだけど、ひとつだけものすごいシーンがある。それは「舞台袖、パネルの裏でリアルに脱糞する」という事。リアリティにこだわる演出家の「クライマックスなんだし、ここは生音が欲しい‼︎」という、それがウリだそうで。

はっきり言って頭おかしいんじゃないか?この演出家。って思ってる。
名前は・・・も、頭から飛んでるな(泣)
下剤の塊みたいな饅頭を役者に食べさせて、そいでもってリアルな音っていうか、実際に出してるから響き渡るわけですわ。「ブビッ ブビュッ」・・・って。
なんなら普通の教室だから、臭いだってお客さんに届くわけで・・・「こんなん許されるわけないだろ」と。

芝居は生が良いとは思うけど、生ったってソコを!? っていうのが普通の感覚じゃなかったみたいで、コレが何故かおおうけ‼︎

今までの会場すべての所でやんややんやの拍手喝采。「よくやったぞっ‼︎」って。
・・・まぁ、いいか。観た人が面白がってくれているんだから。そういう意味では自分の中で割り切れているんだけど・・・
・・・
・・・本当にこんな変な芝居で回ってたんだっけ?
どう考えてもおかしいよなぁ〜・・・

なんてむにゃむにゃ考えていると、ザザザザっと自分のいる場所が変わった。
今は教室ではなく、市民ホールにいるぞ。
舞台の上には回転式のユニット・・・床面積でいったら、一畳あるかないかぐらいの変形の四角い箱。その箱の角の一点を中心にして回す事で、場面転換をするやつ・・・があるな〜って、そうだよ。「女たちのジハード」の旅公演はこのセットだよ。このユニットを回してたんだよ、あたいは。
時計を見たらぼちぼち開演時間。さてさて、準備しなきゃだな〜って、ユニットの中に入る。
この暗さだけが俺の友達だぜぃ(笑)

といった所で目が覚めた。
はてさて、やけに頭がボケ〜っとするなぁ〜
よく分からないけど、よく分からない夢をやたら長い間見ていたからな気がする。
勿論、旅公演で回っていた「女たちのジハード」じゃなくて、殿様がたぬきにばかされて脱糞する話の方ですヨ。夢は。

うっすらとしか目が開いてないけど、電気が消えてて暗いからまだ夜なんだろう。
意識が混濁しているのか、まだはっきりしない目の前に広がるのは・・・
「・・・知らない天井だ」

(#2「2012年のある日」に続く)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?