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9.コーポレートガバナンスにおける投資家のギャップ

皆様こんにちは。今回はコーポレートガバナンスについて記載します。
日本語に直訳すると「企業統治」、、、初めて聞いた方はイメージがつかないですよね。

ニュースで企業の不祥事を見ることも多い中、国や投資家も注目している外せないポイントになっているのは間違いないでしょう。
今回は企業側の目線に立った取組みや投資家とのギャップについて記載したいと思います。ご参考になれば幸いです。

1.コーポレートガバナンス・コードについて

コーポレートガバナンスとは、企業経営において公正な判断・運営がなされるよう、監視・統制する仕組みのことになります。

しかし、ただ仕組みと言っても、指針だけ示されても企業側はなにをしたらいいかよくわかりませんよね。
そこで東京証券取引所では、実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとめた「コーポレートガバナンス・コード」を定めています。

https://www.jpx.co.jp/equities/listing/cg/tvdivq0000008jdy-att/nlsgeu000005lnul.pdf

コーポレートガバナンス・コードは5つの基本原則と、その下にぶら下がる形で31の原則と47の補充原則があります。
つまり、総数83もの原則があるわけですが、そのすべてに対応しなければならないわけではありません。

コンプライorエクスプレインというルールに則って運用されており、プライム市場・スタンダード市場の上場会社は、コードの全原則について、グロース市場の上場会社は、コードの基本原則について、実施するか、実施しないものがある場合には、その理由を説明することが求められています。

つまり対応していない原則がある場合でも、「正当な理由により対応していないんだ」と公表すれば問題ないということです。

例えば、株主に海外投資家がまったくいない企業が開示資料を英訳してもあまり効果的ではないですよね(笑)

2.コーポレートガバナンス・コードにおけるギャップ

続きまして、企業側と投資家のギャップについて記載したいと思います。

コーポレートガバナンス・コードに対する機関投資家の関心度は年々上がっています。
企業と機関投資家の対話の場では、ガバナンスコードへの取り組みについて指摘を受けることも増えているそうです。

ガバナンスコードの対応有無を明確な投資判断基準にしている機関投資家はまだ多くないと思いますが、独立社外取締役の割合や、サステナビリティに関する原則などは、すでに投資判断基準に組みこまれている例も多くあります。

なぜ機関投資家の注目度が上がっているかというと、いろいろ理由はありますが、そもそもコーポレートガバナンスには中長期的に企業の稼ぐ力を向上させていこうという目的があるからだと考えています。

では一方で、個人投資家の関心度はどうでしょうか?
正直、個人投資家の方で、ガバナンスコードの取組み具合で投資判断をしている人はかなり少ないのではないかと思っています。

企業はガバナンスの取組みを「ガバナンス報告書」という形で公表しており、現状の取り組みや方針などが詳しく記載されています。

例えば、取締役会の実効性評価という項目は、取締役会での議論に対するPDCAサイクルを回していくために、年に1回アンケートやインタビューといった手法を用いる企業が増えております。

また、透明性の確保という観点から、独立社外取締役を3分の1以上確保することが主流になっています。
→つまり取締役会の構成が9名の場合、最低でも内3名は独立社外取締役を確保する必要があります。
要は社内取締役だけで経営を回していたら、ワンマン社長などの暴走を止めることができないよねということです。

上記の例はほんの一部ですが、ガバナンスへの取組みについて投資先の企業の状況を把握している個人投資家は一体どれほどいるでしょうか?
おそらくは、「ガバナンスなんかやっても、売上とかに関係ないじゃん」って思われている方が多いのではないかと感じています。

ここがやはり、企業の経営者が短期的な成長に目を向けがちな原因の一つになっているのではないかと個人的には考えています。

つまり、短期的な利益を求める個人投資家が多い企業においては、別にやってもコストかかるだけじゃんという考えに陥りがちではないでしょうか(もちろん全部が全部そうではないですよ)。

一方で機関投資家が多い大企業などは、中長期的な目線でガバナンス対応にも実質的に取り組んでいく傾向にあります(中には機関投資家がうるさいからやるという企業もあるでしょうが)。

形式だけでなく、実を伴ったガバナンス対応を企業がしていくためにも、なぜコーポレートガバナンスを制定しているのかの目的や前提を個人投資家にもしっかりと浸透させていくことが大切なのではないでしょうか。

3.コーポレートガバナンスまとめ

本記事では個別の原則の内容についてはあまり触れませんでしたが、ギャップという観点にフォーカスをおいて記載しました。

日本のコーポレートガバナンスコードはもともとイギリスのコーポレートガバナンスを参考にして作られています。

2015年に金融庁と東京証券取引所により原案が公表され、2018年に1回目の改訂、その後日本企業のガバナンス底上げを目的として2021年6月に2回目の改訂がなされました。
→3年に1回のペースで改訂されています。

改訂のたびに、実質を伴う内容にレベルアップされていますが、イギリス含めて他国のガバナンスコードはさらに厳しいものとなっております。

今後も更なる改訂は容易に想像できますので、今は機関投資家が少ない中小企業やオーナー企業においても、より具体的な対応が求められていく可能性もあるかもしれません。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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