ヤクルトのサイ・スニードはNPBで活躍できるのか。

ヤクルトとサイ・スニード選手が契約合意した。スニードは過去2年MLBでは救援投手として登板していたがマイナー時代は先発投手として投げておりヤクルトとしては先発として考えているようだ。ヤクルトは先発が弱点の球団だがスニードはヤクルトの先発の穴を埋められるのだろうか。

MLB時代の投球

まずはMLB時代の投球をトラッキングデータで振り返る。データはBaseball Savantから入手した。

対右打者 抜群の投球内容

スニード 対右

カッター ホップ量多く高速で変化する

スニードの特徴はなんといってもカッターだろう。球速は150キロ近く出て並のフォーシームよりホップし(2015-2020年のフォーシームの平均は43cm)自由落下よりスライド変化する。本人が投げる速球系の球種はこのカッターのみだ。球質から推定される価値(画像中の推定xPV/100(注1))は1.63と高くxPVの実測値は2.26とそれ以上だ。球種を球質以上にうまく使いこなしている。このカッターがスニードの投球のメインとなっている。

スライダー 球速が遅く横変化が多い

スライダーの横変化は非常に大きくMLB平均よりボール2個(約15cm)以上曲がる。Whiff%(空振り/スイング)こそ低いものの56.1%と高いストライク率を記録していることもあって推定値以上に価値の高い球種となっている。対右打者ではカッターの次に使われている球種だ。

カーブ 縦変化量が多い

投球割合自体はあまり多くない。推定される価値はリーグ平均程度だがうまく使いこなしている。2020年は15球しか投じていないため評価が難しいが高いストライク率(53.3%)を記録している。

対左打者 カッターの制球に課題

スニード 対左

カッター 対右打者と比較すると制球に課題

対左打者相手でも投球の軸としている球種で球質から推定される価値自体は高いものの対右打者と比較して実測値のxPV/100は高くない。これは制球の問題だと考えられる。

スニード カッター

対右と比較すると対左ではゾーンへの投球割合が10%近く低下してしまっておりストライクをあまり取れない球種になってしまっている。価値の低下の要因と考えられ左打者を抑えるにはこの点の改善は必須と言えそうだ。

カッターのAttack Zoneデータを見てみよう。(Attack Zoneの日本語での説明はこの記事が詳しい)

スニード アタックゾーン

対右と比較すると対左ではHeart(ゾーン中心)への投球割合が低くChase(ストライクゾーンから少し外れた投球)への投球割合が高くなっていることがわかる。Shadow(ストライクとボールの境目)付近への投球を試みた結果、対左ではChaseへの投球割合が増えたのかもしれない。しかしスニードのカッターは球質としては優れていることから打者が積極的に振ってくる2ストライクまでは無理にストライクとボールの境目を狙わずゾーン中心近くへの投球を試みてもよいのではないかと思うところだ。

カーブ

カーブは対左打者では2番目に投げられている球種だ。投球数は35球ほどなので評価は難しいがWhiff%が高くないもののStrike%は51.4%でありストライクを取る球として機能していそうだ。

スライダーとチェンジアップ

投球割合が低いため評価が難しい。あまり積極的に使う球種ではないようだ。ただスライダーの対左に対しての球質は高いので使ってみても面白いかもしれない。

救援→先発の懸念

救援としてはMLBで25%を超えるK%を記録するなど奪三振能力に優れていたスニードだが先発を務めていたAAA時代のK%は20%前後である。AAA時代のトラッキングデータがないことから推測するしかないが救援に回ったことで全力で投げられるようになり球速が上昇するなどの変化もあって奪三振能力が向上したのかもしれない。そうなると再び先発となる来季は今季の奪三振能力をどの程度維持できるのかが気になるところだ。また先発は救援と違い相手が先発登板するのに合わせて打順を組むことから苦手な左打者との対戦機会が増えることが予測される。以上の2点から来季に先発として活躍するかは未知数なところがある。

まとめ

・対右打者には抜群の強さを見せる。

・対左打者には課題を見せる。(特にカッターの制球)

・救援→先発で奪三振率が大きく向上しており先発に戻る来季はどうなるか未知数な部分がある。

ヤクルトの先発は大きな弱点であり外国人の補強をするなら先発投手にするべきだがスニードはどこまでその期待に応えられるだろうか。個人的には対左打者へのカッターの制球の改善が鍵を握ると思っている。2ストライクまでは際どい所を狙いすぎずストライクを投げ込んでほしい。

(注1)

推定xPV/100の算出方法

1.カウント・投手の左右/打者の左右を分類する。

2.球速:5km/h、変化量:7cmごとにグループ化する。

3.各グループの平均xPVを「xPV期待値」とする。

4.投球した球種の球質によってxPV期待値を割り振っていき平均をとる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?