各球種で重要な要素とは
各球種について重要な要素とは何かを重回帰分析で算出を試みました。対象はMLBで各球種300球以上投げた選手。
説明変数とするのはその投手の速球(FF,SI)の平均球速(km/h)、その球種自体の平均球速(km/h)、横変化量(cm)、縦変化量(cm)、投球コースの高さ(cm)、リリースの高さ(cm)、エクステンション(cm)(プレートからどこまで離れてボールを離しているかの値)です。
目的変数とするのはWhiff%(空振り/スイング、スイングを試みた打者から空振りを奪った率)とxPV/100(100球あたりで推定される失点抑止)の2つです。
(xPV/100についてはこちら)
p値について
フォーシーム
Whiff%
フォーシームのWhiff%を重回帰分析するとp値が0.05を下回るのは球速、縦変化、投球高さ、リリース高さとなっています。(EXCELのE-07などは桁数が小さい時に表示されます。)
p値から、重要なのは投球高さ>リリース高さ≒球速>縦変化のようです。球速や縦変化などのような球質以外の要素も重要なようです。
投球高さは高いほうが、リリース高さは低いほうが、球速は速いほうが、縦変化は大きい(ライズする)ほうが空振りを多く奪えるようです。
日本ではリリースは高いほうが角度がついて良いと言われることもあるので、リリース高さは低い方が良いというのは意外に思われるかもしれません。リリース角度が低いことで浮き上がるように感じる効果を期待できるのかもしれません。このような考えを考慮したものとしてVAA(Vertical Approach Angle)があります。
https://twitter.com/i/events/1464499170664845315
追記
リリース高さと縦変化量で強い正の相関があったのでどちらか1つを取り除いて重回帰分析しました。
まずはリリース高さを取り除いて縦変化を用いた場合。
補正R2は0.25。縦変化のp値は0.05を上回りました。
続いて縦変化を取り除いてリリース高さを入れた場合です。
補正R2は0.32とこちらのが高くなりました。p値も0.05を下回っています。リリース高さのが重要ってことでしょうか?(ここらへんの解釈はわかりません)
xPV/100
xPV/100(推定される100球あたりの失点抑止)では、p値が0.05を下回ったのは球速、縦変化、投球高さ、リリース高さ、エクステンションとなっています。影響の大きさはリリース高さ>縦変化≒球速>投球高さ>エクステンションとなっています。リリースの高さは失点抑止のうえで想像以上に重要なようです。
スライダー
Whiff%
スライダーのWhiff%では、p値が0.05を下回るのは、速球の球速、投球高さとなっています。投球高さは低いほうが、速球の球速は速いほうが高くなるようです。一見関係がないように感じられる速球の球速ですが、速球が速ければ速いほど打者は速球の対応に気を取られ変化球への対応が疎かになるのかもしれません。
xPV/100
スライダーのxPV/100では、p値が0.05を下回ったのは速球の球速と横変化となっています。p値で見ると速球の球速のほうが影響が大きそうです。高速の速球を投げる投手がグラブ側に曲がるスライダーを投げると打者は対処が難しくなるようです。
オフスピードボール(チェンジアップ、スプリット)
Whiff%
オフスピードボール(チェンジアップ・スプリット)のWhiff%では、p値が0.05を下回るのは速球の球速、平均球速、投球高さ、リリース高さとなっています。特に速球の球速と投球高さが重要なようです。スライダー同様、速球の球速が速いと打者は対応が難しくなるのかもしれません。
xPV/100
オフスピードボールのxPV/100では、p値が0.05を下回っているのは速球の球速とエクステンションとなっています。
速球の球速は変化球に影響を与える?
ここまで各球種の要素について見てきましたが、私が意外に思ったのは速球の球速が変化球のWhiff%やvalueに影響を与えているかもしれないことです。速球の球質と変化球の球質は独立したものと思っていましたが、速球の球速が速いことで打者の意識に影響を与えているのかもしれません。
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