2021年千葉ロッテマリーンズ、前半戦分析

今回は2021年千葉ロッテマリーンズの戦力分析を行いたいと思います。
見ていくのは一軍戦力の強みと弱みです。

強みと弱みの判断基準

強みと弱みを判断する基準としては「得失点を何点増やしたか(減らしたか)」を用います。
プロ野球のチームの得失点と勝率には非常に強い相関関係があります。そのため各ポジションで何点得失点を増やしたかを見ればそのポジションがどれだけチームの勝利を増減させたかを判断することが可能になります。
またこの手法はあらゆるプレーを得点という同じ単位で評価できるというメリットもあります。

全体

ロッテ_グラフ

野手

ロッテ 野手

前半戦を振り返って(野手)

2021年前半戦のロッテの野手は二塁、遊撃、左翼、中堅、右翼と5ポジションで得失点収支が10を超えるなど強力野手陣を抱えるチームとなっています。特に遊撃を守る藤岡裕大の飛躍が順位の底上げに大きな影響を与えています。近年のロッテは遊撃で大きめのマイナスを出してしまっていましたが、攻守に渡る藤岡の成績向上で一転して強みポジションに変わりました。藤岡裕大の飛躍が今年のロッテ最大の補強と言えるでしょう。

後半戦に向けて(野手)

課題となっているポジションは捕手と三塁手です。このうち三塁手については、シーズン中盤にかけてそれまでメインで使っていた安田尚憲から、エチェバリアを遊撃で起用して遊撃を守っていた藤岡裕大を三塁で使う場面が見られます。エチェバリアは外国人選手特有のリストの強さから放たれる送球が魅力的ですが、外国人遊撃手の守備力に過度な期待はできないかもしれません。

SS 外国人

実際に2001年以降で、NPBで遊撃手を守った外国人選手を見ていくと多くの選手のFS(フィールディング・シェア、守備得点)が平均を下回っています。DRSを用いた守備の年齢曲線を見ると守備指標は25歳を超えると低下し始め30歳を超えるとさらに急激に低下します、来日する外国人選手の多くが20代後半を上回っていることを考えても年齢の影響で守備による貢献は難しいと推測されます。また藤岡の遊撃の守備貢献の高さを考えてもやや勿体なさがあります。一方でエチェバリアは長打力に強みを見せているので、それを活かしてエチェバリアの方をサードで起用することを考えてみてもいいかもしれません。

捕手について言えばファームで佐藤都志也がずば抜けた成績を残しています。佐藤は1軍でも打席数が少ないながら優れたISO(長打力を表す指標)を記録しており、打力改善のために抜擢を考えてみてもいいでしょう。

投手

ロッテ_先発

ロッテ_救援

前半戦を振り返って(投手)

野手で大きな上積みを作った一方で、先発投手で大きめのマイナスを出してしまっています。xFIPで見てもゆらぎの大きい被本塁打がやや多めに出ている選手もいますが、それを考慮してもそれほど内容が良くなく、ここを改善しなければ優勝は厳しいでしょう。昨年の編成のファインプレーと言えるのは鈴木昭汰の獲得です。1年目にしてリーグ平均レベルの内容で50イニングほど消化しており、鈴木が投げた分がそのままリプレイスメントレベルに置き換わっていたとしたらAクラス争いに加われなかった可能性もあります。

後半戦に向けて(投手)

フロントも先発投手の弱点を塞ぐべく元中日のエンニー・ロメロを獲得する動きを見せました。ただ、ロメロは中日時代に高いBB%を記録したために大きな利得を残すことはできなかった選手であり活躍が不安視されます。

後半戦に向けてキーポイントとなるのは佐々木朗希の起用法です。佐々木はまだ高卒2年目にして、ここまではリーグ平均レベルの投球ができていて、ロッテ先発投手陣のなかでは優れた貢献をしています。ただ、登板間隔を見ると大事をとった育成方針なのか、中10日以上空けて投げるのが基本でありイニングを稼ぐことは難しそうです。今年の優勝のために佐々木をローテーションで使うのか、中10日以上の登板を貫くのか、ロッテの判断が注目されます。

来季に向けた補強について

ここからは、話が早いですが来季に向けた編成について考えていきます。

基本的にチームの強化を狙う場合は弱点のポジションを補強することをメインに考えた方がよいでしょう。

例えばリーグ平均と比べてマイナス20点のポジションがあったとします。
このマイナス20点のポジションに±0点の選手を補強した場合、チームの得失点を+20点増やす効果があります。これは±0点のポジションに+20点の選手を獲得したのと同じ効果があります。一方で両者の獲得の難易度には大きな差があります。±0点レベルの選手は必要なコスト(年俸)はそれほど大きくありませんし、見つけることは比較的容易でしょうが+20点レベルの選手を獲得するには必要なコストも、そのような選手を見つけることも容易ではありません。それを考えるとマイナス20点のポジションに選手を補強する方が補強成功のハードルは低くなります。

主力選手の年齢とピーク…日本一を狙うなら来季が勝負

今季のロッテは野手陣が強力なプラスを築いており野手だけならリーグトップクラスです。しかしそのプラスを築いている選手陣を見ると戦力を維持できるタイムリミットは迫っていると言えるでしょう。

ロッテ 野手

大きなプラスを築いている選手のうち、荻野は35歳、マーティンは33歳、レアードは33歳と高齢です。一般的に野球選手の成績のピークは27歳前後であり、33歳を超えた彼らが能力を今後どれだけ維持できるかは未知数です。またマーティンとレアードは保有権が及ばない外国人選手であり、複数年契約が来季には切れることが予想されます。そのため今の野手の強みを2年後も維持できるかというと厳しいと思われます。来季までに日本一を達成できなければ、しばらく目標から遠ざかる可能性がありなんとしても来季までに日本一を達成したいところです。

今季のロッテは先発投手陣が大きな弱点となっています。もし立て直すことができないと日本一を目指すのは厳しいでしょう。しかし、これは裏を返せば大きな伸びしろとも見ることができます。元がマイナスなので平均的な先発投手をある程度揃えるだけで大きく得失点を改善することができるからです。

27歳前後でピークを迎える時間がかかる野手と異なり、投手はドラフトでとった投手が即戦力で活躍することが比較的多いです。今季のドラフトでは上位で先発ができる即戦力級の投手を果敢に狙っていくべきでしょう。

外国人枠

ロッテ_外国人枠

外国人枠を見ていると、まだ登板をしていないロメロを除くと先発投手がいません。来季に日本一を狙うならロメロの今季の出来次第にもよりますが、複数の先発候補の選手を獲得して先発の穴を埋めることを目指したほうが良いでしょう。それも、ある程度の投資は惜しまない姿勢でいくべきです。繰り返しますが荻野の年齢とマーティンとレアードの契約を考えると、来季は最大の勝負所だからです。

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