打球の価値を高めるうえで重要なこと

 フライボール革命に代表されるように打球の角度を高めることは一般的には良いとされる。ゴロは価値が低くフライは価値が高いことなどがその根拠だ。だが「平均の角度」を使うことは正しいのだろうか。

打球角度を上げても打球の価値は上がらない

 上記の散布図はある年の平均打球角度を翌年の打球角度を引いたものと、xwOBAcon(打球の角度と速度から推定した打球価値)を比較したものだ。相関係数0.19と弱い相関しかないことがわかる。打球角度を上げてもそれほど打球価値の上昇には繋がらなそうだ。

打球の価値は比例の関係にない

 なぜ打球の角度と打球の価値は綺麗な比例の関係にないのだろうか。それは打球の角度と価値の間にきれいな比例の関係があるわけではないからだ。

 上記の画像は打球角度とwOBAcon(打球の価値)をグラフにしたものだ。打球の価値は極端に角度の低いゴロ(打球角度0度以下のTopped)から角度が上昇していくにつれて上昇、SweetSpot(8~32度)でピークを迎えると、後は急激に低下する。

 打球角度を上げるだけならば、打球価値の低いHit Under(角度40度以上の打球)を多く発生させても上がるだろう。だが、それでは打球の価値は低下してしまう。重要なのは打球の角度をいかに価値の高いゾーンに集中させるかだ。

角度から打球の価値を推定する

 打球を価値の高い場所に分布させられたかを見る1つの方法がSweet Spot%だ。価値の高い打球角度である8-32度にどれだけ打球を集中させたを見る指標だ。

 もう1つの方法は標準偏差を使う方法だ。

(標準偏差については下記リンク参照)

 打球角度の標準偏差、つまり打球角度のバラつきの少なさは、小さいほど打球の価値が上がる。相関係数もR=-0.45と平均角度を使うよりも打球の価値との関連が強い。

 また、打球角度の標準偏差を小さく保つことは打者の能力とも言える。セイバーメトリクスでよく使われる年度間相関(前年の値と翌年の値に一貫性があるか)を取るとR=0.69と強い相関がある。

 角度から打球の価値を推定するには分布の広がりがどうなっているかが、平均の角度よりも重要だ。そのためにSweet Spot%と標準偏差は有用になりうるだろう。

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