打球角度の価値の分布から打球角度を評価する

前回は巷で言われるように打球のFB%(フライ/打球)や平均打球角度を高めても打者の得点創出にほとんど寄与しないという内容だった。今回はなぜそれらが得点創出にほとんど寄与しなかったのか、打球の角度から価値を推定する方法について説明していく。

打球の角度と価値は比例の関係にない

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 上記の画像は15-20年のMLBの打球角度別wOBAconだ。角度別の価値を見ていくと8-32度にピークを迎え0度を下回る、36度を上回ると価値を高めることが困難となることがわかる。この価値の形がFB%や平均打球角度では打球の価値を測れない要因になっている。
 FB%の場合、statcastでは打球角度25度~49度がフライと定義されている。しかし打球価値を見ると25~32度のフライとそれ以上の角度のフライ打球の価値には大きな隔たりがあるのだがFB%は25~32度のフライもそれ以上の角度のフライもまとめてフライとして1,0で扱う。結果としてフライの範囲内であれば価値が比較的高い部分で打った場合もそうでない場合も同じに扱われてしまうので適切に打球価値を判断できないことにつながる。
 平均打球角度の場合、打球の価値と角度が綺麗に比例の関係にないことが問題となる。例えば同じ平均打球角度25度でも価値の高い25度の打球を2回放った場合と価値の低い0度と50度の打球を1回ずつ放った場合でも「平均すれば」どちらも打球角度は25度となってしまい乖離が発生する。打球角度と打球価値は比例の関係にないためそもそも平均を使うことは適切ではない。

Sweet Spot


セイバリストであるtangotigerは角度別wOBAを用い0.500を超える角度範囲をSweet Spotと定義している。

このSweet SpotについてはMLB公式でも扱われ打球に占める割合をSweet Spot%としている。

下記の画像は個人間の年をまたいだSweet Spot%の変動とxwOBAの変動の相関をとったものだ。

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 中程度の相関(R=0.54)があることがわかる。これは年をまたいで打者のSweet Spot%が変動すると打者の得点創出が変動することを意味する。FB%や平均打球角度を用いるよりも打球角度から打者の得点創出について説明できるようだ。

Sweet Spot 年度間相関


 またSweet Spot%の年度間相関をとると0.59で中程度の相関となる。Sweet Spotを獲得することはある程度打者の能力と言えそうだ。

まとめ

 打球の角度と価値は比例の関係になく価値が高い角度(Sweet Spot)は一定の範囲に集中している。打者が角度の観点から打球の価値を上昇させるには打球価値の高い範囲に打球の分布を集中させることが重要そうだ。

 今回紹介したSweet Spot%は打者の得点創出をある程度説明できまた年度間相関を見てもある程度打者のスキルと言えそうであり角度の観点から打者を評価する指標になりえそうだ。

 ただしこれらが実際に指導に活かせるかは未知数なところがある。今回は打者の年度間の変化を用いてSweet Spot%の変動が打者の得点創出にどのような影響を与えるかについて見てきたが打者がSweet Spotに打球を集中させることを意図した打撃をするようになると速度や打席でのアプローチに何かしら影響を与える可能性も否定できないからだ。

 今回は角度だけを用いて打球の価値を評価してきたが本来は打球の価値は速度と角度の組み合わせで見るほうが好ましいだろう。ただ打者が打球の価値を速度と角度のどちらでどの程度高めているのかを確認したい場合にはSweet Spot%や打球角度の分布を見ることが役立つと思われる。

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