NPBで活躍できる大卒打者の特徴

通用する選手の数値については前回の記事と結論はだいたい同じです。

NPBで通用した打者は大学時代にどんな成績を残していたか

ドラフト・レポートで大学生のリーグ戦データの収集が始まった2008年から、一般的な打者のピーク年齢とされる27歳に達する2016年までの選手を検証に対象とする。また、対象の選手は大学3年以降の三振、四死球率、ISOがわかる選手のみとする。

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対象の選手のK%、BB%、ISOを算出し、大学時代のこれらの指標からNPBでの活躍する選手の共通する要素を探る。なお、対象の選手は55名となった。

なお、K%とBB%については、ドラフトレポートの記録「打」は打数のことと思われるため、「打+球(四死球)」で擬似的な打席を算出しそれぞれの分母とした。

活躍の定義


活躍の定義はNPBでの2021/9/28時点で通算oWARが6を超えた選手とする。なぜ6かというと、特に統計的な根拠はない。「プロで1年だけ結果を残しても偶然。3年結果を残して一流」という言葉があることから、平均的な打撃成績でシーズンをフルに過ごした場合に記録されるoWARが約+2なので、2×3=6 で6を活躍の定義としただけです。なお、ここでのoWARは

(wRAA+Replacement)÷RPW

で計算した。純粋な打撃だけを評価するためBase Runningや守備位置補正は含んでいない。

素材型の打者は活躍しにくい?

大卒1

上記は2008年~2020年のドラフト指名選手と2021年のドラフト候補選手を対象に横軸にK%、縦軸にBB%、ISOをカラースケーリング(中間値を.100としている)した散布図だ。この散布図からoWARが6以上の選手に対象を絞る。

大卒2

全選手がK%が15未満、ほぼ全選手がBB%>K%(唯一例外の中村奨吾もほぼ同数)、上本を除く全選手がISO.100超えしている。

大卒3

このことから過去12年で指名された選手の中では

1.K%を15未満に抑えるコンタクト能力を持っている。

2.三振数を上回る四球数を記録する優れたストライクゾーン管理能力を持つ

3.当てるだけのバッティングでなく、試合である程度の長打力を発揮している

と、3つの条件を満たした選手のみがNPBで打撃で「活躍」していることになる。大学リーグレベルでパワーはあるが、コンタクト能力やゾーン管理能力に問題があったりするいわゆる、「素材型」の打者は少なくともここ10年ほどは大成しにくいようだ。大卒選手に打者としての活躍を望むなら伸びしろよりも完成度を重視したほうが良いかもしれない。もちろん、基準を満たしていなくても京田陽太や吉川尚輝のように、打撃以外に守備でWARを稼げるタイプもいるので、打撃だけを獲得の判断にしなくても良いだろう。

素材型が多い今年のドラフト候補

大卒5

上記の散布図では今季のドラフト候補を赤枠で囲い込んでいる。特徴的なのは、古賀、中山、鵜飼、梶原と三振率が高いもののISO(長打力)も高いタイプが多いということだ。2021年の佐藤輝明のような、三振を恐れず長打を狙うというスタイルが大学野球界で広がっているのかもしれない。

しかし、この長打はあるが三振率も高い打者は多くが苦戦している。大学時代のK%が20を超えた打者としては2018年の田中和基、2021年の佐藤輝明が規定打席に到達してwRC+が100に到達しているが、田中は翌年以降、佐藤はオールスター後の後半戦で大きく調子を落としている。MLBでは三振率が増加し本塁打が増加しているが、アマチュアレベルでそのようなバッティングをしている選手は淘汰されているのが現状だ。

この状況の打破に期待がかかるのが佐藤輝明だ。佐藤はプロ入り前から確実性に課題を抱えていると知られながら、4球団もの球団が長打力を求めて獲得に乗り出した逸材だ。実際に、前半戦は新人としては好成績を残し新たな野球のトレンドを起こしそうな勢いであった。佐藤は現在、50打席以上連続で安打が出ないというどん底にいるが、現状を打破し大学レベルで三振が多くても長打力があれば、活躍できることを示せば、アマチュア側の指導、プロ側の選手獲得姿勢に大きな影響を与えかねない。

また、今年の候補選手たちにも期待がかかるところだ。データ上は活躍しにくいとされるこの素材型の選手たちだが、データを覆す選手があらわれるのも野球だの醍醐味だ。今後の素材型スラッガーたちに注目したい。

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