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【2013オフ】落合GMはどうすれば良かったのか【タイムスリップ検証】

 選手として3度の三冠王、監督として4度のリーグ優勝と圧倒的なキャリアを持つ落合博満氏。そんな彼の唯一の"汚点"と呼ばれるのがGM時代だ。特に2013年オフは猫も杓子も減俸減俸で、大島洋平に至っては500打席立って25%減という不条理極まりない仕打ちを喰らっている。「オーナーからコストカットを命じられ、それに忠実に従っただけ」と彼を擁護する向きもあるが、もう少し人道的な解決ルートはなかったのだろうか? 10年経った今、改めて検証してみたい。

企画のルール

 2013年開始時の中日球団の総年俸はおよそ32億8000万円。これが落合流コストカットによって26億7000万円まで圧縮されている。オーナーから何億円以内という指定があったかはわからないが、今回は史実の金額を超えない縛りで別の解決策を探す事とする。

2013年末時点のチーム状況

 落合政権を支えた主力たちは軒並み成績を落とし、チームは12年振りのBクラスに沈んだ。

 投手陣は岩瀬浅尾が気を吐いたものの、エース・吉見一起が怪我でほぼ稼働せず、それ以外の中堅ベテランも(山井大介を除き)軒並み散々だった。明るい話題は大野雄大が初めて規定投球回に乗った事ぐらいか。

 野手陣はアライバの不振とルナandクラークの躍進で、森野将彦を二塁で使うファイアーフォーメーションを余儀なくされた。一方で平田良介、藤井淳志といった中堅外野手がレギュラーの座を掴みかけている時期でもあった。

減俸ではなく放出を

 そもそもの話として、結果を残したにも関わらず「球団が貧乏なのでお金を払えません」というのは、選手に対する裏切りでしかない。活躍したからには然るべき金額が支払われるべきであり、もしそれを払えないというなら、潔く金持ちの球団に選手を譲渡するべきだ。選手の尊厳を守った上で、球団として出費を抑えるには、それが一番誠実な解決策だと思う。

 なので例えば井端弘和(1億9000万)についても、無償トレードのような形が望ましかったと思う。「チーム再建のための苦渋の決断」のような体で巨人でもどこでも放出し、移籍した先で改めて契約更改してもらえば、あんな後腐れする結末にはならなかったと思う。

 あとはもう1人、和田一浩(3億3000万)についても、このタイミングで放出する事にする。この2人の年俸を放棄すれば削減目標までかなり近付く事が出来る。ただ和田に関しては142試合でOPS.804とバリバリのレギュラーなので、大型トレードを仕掛ける選択肢を考えたい。
 一番狙いたいのは阪神の大和だ。当時は西岡鳥谷が磐石だったため専ら外野を守っているが、二遊間の守備力はリーグ随一を保っている。彼を井端の後釜に据えれば、かなりスムーズな世代交代が出来たのではないか。阪神はLFマートン、RF福留孝介がレギュラーだが、福留はメジャー復帰初年度で打率1割台に低迷しており、売り込むチャンスは充分あったように思う。

 また川上憲伸(6000万)、朝倉健太(4500万)については、史実ではいずれも協約超えの減俸を喰らっているが、ズバッと戦力外にする事を考えたい。どちらもビッグネームだが、値段に釣り合っていないものは仕方がない。

全うな評価を

 ここまでおよそ6億円節約したので、次に残留選手たちのアップダウンについて再考する。以下の図1~4は2013年→2014年にかけての年俸推移に、筆者なりに「これぐらいの額が良かったのでは?」という額を追記したものである。

図1 投手年俸に関する提案

 まずは投手。50試合投げて減俸の田島、58試合投げて微増の武藤あたりはもっと増額で良いと思う。また減俸組についても山井、山本昌、高橋聡文あたりは減俸幅を抑え、岩田・山内は野球協約ギリに留めた。
 あと、濱田達郎の495万は、わざわざ1万円単位で削ってやろうというみみっちさを感じたので、おまけして500万にしてある。たった5万だが心象は変わるのではないか。

図2 野手年俸に関する提案

 続いて野手。前述の大島は微減に留め、荒木や谷繁についても減俸幅を抑えた。平田、藤井、それに高橋周平については大幅に増額し「来年はレギュラーを頼むよ」と気持ち良く更改を終えてもらいたい。

図3 年俸総額のまとめ
図4 年俸推移のまとめ

 そして、こちらがまとめになる。
 年俸総額は維持したまま、野球協約を越える減俸は0人、協約ギリの選手も半分以下に留めるなど、かなり穏当な結果になったのではないか。

最後に

 色々と数字をいじくったが、これで史実より勝てるようになったか?と言われれば何の自信もない。あくまで「選手たちに納得感をもって契約更改してもらうには?」というテーマの企画なので、和田がいない分だけ勝率が落ちる可能性もある。26億円代で更改しろとはそういう難問なのだ。

 ちなみに荒木も無償譲渡して、浮いたお金でエース級の新外国人を獲るという手もある。二塁には21歳の高橋周平を回して、エルナンデスがそれをカバーするような形をとれば、戦力として破綻しないレベルにはなると思う。であればカード頭を投げるに足る先発投手を揃え、大野との両輪で回した方が勝率は高くなった"かも"知れない。

●予想オーダー
(右)□藤井淳志
(中)△大島洋平
(三)△森野将彦
(一) ルナ
(左) 平田良介
(二)△高橋周平 or エルナンデス
(遊) 大和
(補) 谷繁元信
(投) ーーーー

 ちなみに、未来を知った上で提言するのであれば、勝率を上げる1番簡単な方法は谷繁元信を兼任監督にしない事だと思う。翌年、谷繁は出場試合数を大幅に減らし、「谷繁監督には正捕手谷繁がいない」という事態を招くのだから、あまり得策ではなかったと言える。同じ兼任でもバッテリーコーチ補佐あたりを任せて「後継者の育成も頼むよ」と声かけるぐらいが妥当だったのではないか。

 結論としては「和田井端川上朝倉(+荒木)を放出して、やっと人道的な契約更改が出来る」「26億円で勝てるチームは作れない」といったところか。井端ひとりの放出で話を"収めた"落合はむしろ穏健派だったと言えるが、その後現在まで暗黒時代が続くことを考えると、よりドラスティックな手を求められていた局面だった気もする。

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