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【少年野球】試合に出られず泣いている子に「わがままだ」と監督が言う。それは正解か。

 その試合はローカル大会のリーグ戦で、スタメンは普段レギュラーの子が半分、ベンチの子が半分でスタートした。
 監督は試合前に「今日は全員一打席は試合に出すつもりでいるから準備しておくように」と言った。
 ところが、試合は4回途中でコールドゲームが決まってしまい、出番をもらえなかった選手が数人いた。そのうちの1人は悔しくて目に涙をためていた。実力はあるのに普段から試合になかなか出してもらえず、そのことをずっと不満に思っている子で「今日こそは」とウキウキしていた。だから余計に失望して誰の目にも分かる態度でうなだれた。

 そこで監督が全員を集めてタイトルのようなことを言った。
「試合には勝った。まずそれを喜ばないなんておかしいじゃないか。自分が試合に出られなかったとか、そんなことは知らない。確かに約束を守れなかった監督は悪かった。でも試合展開によってはこういうこともある。そんなことは野球をやっていれば分かるだろう。自分のことだけ考えて泣くなんてわがままだと思わないか。」

 その子は何を思ったか。

 次の日はメダルの色を争う大事な公式戦だった。相手チームは非常に強いチームで、ピッチャーは外角低めを見事なコントロールで責めてきた。レギュラーメンバーはフライやゴロ、三振で全員ノーヒット。あわやコールドで負けるところに、代打でその子が打席に立った。前日打席を与えてあげられなかった穴埋めだった。

 その子は見事なヒットを放った。

 そこから反撃が始まり、負けはしたもののチームはその試合で一番の盛り上がりを見せ、一矢報いることができた。

 その監督は何を思っただろうか。
 次の試合、その子はまたボールボーイだろうか。
 あれは「まぐれ」だと一蹴し、何試合もヒットが出ないレギュラーの名前をいつも通りスタメン発表で呼ぶのだろうか。

 その子が泣くのは果たして「わがまま」か。
その答えを、学童野球チームを率いる指導者全員に聞いてみたい。


 
 

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