「オンラインショップは“入口”であり、“見本市”になる」(株式会社エディットジャパン)
株式会社エディットジャパンは、「職人コラボレーション」というコンセプトで日本各地の職人技をかけあわせた製品企画を行い、インターネットを通じて世界に販売する会社として2015年に創業されました。
大阪と徳島による職人のコラボレーションとして始まった「藍包丁」は、クラウドファンディングを通じて資金調達に成功し、各種メディアに掲載。JETROの海外進出支援製品に採択されニューヨークに上陸したことで、海外販路も開拓されたそうです。
包丁は、切れ味や質感、重さなど、「目で見て触ってから購入する」ことが原則の商品。しかし同社はそれとは真逆の「オンラインショップのみでの販売(※)」という戦略をとりました。
※注:起業時。現在は東京、仙台、大阪、徳島の他、海外のセレクトショップでも一部取り扱っているそうです
同社がこの戦略に至った経緯とその結果を、代表取締役の坂元晃之さんにうかがいました。
オンライン販売に至った経緯
——実店舗(オフライン)販売ではなく、ネットショップからスタートした理由をお聞かせいただけますか?
坂元さん:会社を立ち上げるにあたり、1,000万円を出資していただいたのですが、自分以外に人を雇って、実店舗を持って……という従来の方法を行うと、資本金があっという間になくなってしまう、と思ったのがキッカケです。
「1,000万円を一番有効に活用するためにはどうすればいいか?」ということを、マーケティング的な戦略をふくめて考えた上で出した結論が「オンラインショップのみでの販売」だったのです。
——なるほど……かなり思い切った判断でしたね。実店舗を持つ卸先の開拓なども検討しなかったのでしょうか?
坂元さん:じつは、創業1年目は卸先の開拓に奔走していたんです。でも全然見つからなくて(笑)。また、これは結果論ですが、期間限定の催事やギフトショーなどのオフラインに進出しても、売上にはあまり影響が出なかったんです。
資金に限りがある中で、オフライン領域への進出は、什器やケースなどの購入に加えて、人件費、移動交通費など、かなりの金額が掛かってしまいます。であれば、そのリソースやコストをオンライン上での取り組みに集中投下したほうが効果が出やすいかなと思ったんです。
——たしかに、催事や展示会への出店は実際に出ていくコストもそうですが、ご自身の時間もだいぶ取られてしまいますよね。
坂元さん:そうですね。ちなみに営業には自信がありましたが、ウェブマーケティング的な知識はほとんどなしの状態でスタートしたので、勉強とノウハウ蓄積の意味も込めて、包丁の魅力が正しく伝わるようなブログを書いたり、コンセプト動画を作って配信したりすることに注力しました。
ウェブ広告費はほとんど使っていないですが、実施していく中で反応が出る(購買につながりやすい)地域を発見してセグメントしてみたり、広告を見た企業様から問い合わせをいただいたりなど、経験の蓄積と実施効果はすごく実感できています。
なぜ販売ツールとしてBASEをお選びいただいたのか?
——BASEはどうやって知ったのでしょうか?
坂元さん:「CAMPFIRE」というサービスを使ってクラウドファンディングをおこなったのですが、その際に、CAMPFIREの担当者の方から「クラウドファンディング終了後にネットショップを立ち上げるならBASEがいいよ」と推薦いただいのがキッカケです。
——CAMPFIREの方に感謝でございます(笑)。大手のショッピングモールに出店することなどは想定していなかったですか?
坂元さん:最大手のショッピングモールは、サラリーマン時代に運営経験があるのですが、すごく大変で……。担当者をひとり張りつかせないといけないくらい作業量が多かったんです。また、フルスクラッチでのECサイト制作はそもそも資金が足りないですし、他の無料に近いネットショップ作成サービスは、カスタマイズの自由度がすこし低かったんですよね。
——なるほど。その中で、最終的にBASEに決めた理由はどこにありましたか?
坂元さん:やはり、初期・月額の費用が掛からないことと、先ほどお話ししたページのカスタマイズ性ですね。
有料のデザインテンプレートを使えば見た目のクオリティがきちんと担保できますし、「HTML編集 App」を使えば、さらにこのテンプレートにカスタマイズが加えられます。個人的に、「サイトデザインに影響が出ないギリギリの範囲まで編集できる」という点が絶妙だと思っていて。「何でも編集できる」ようになったら、僕らのようなウェブ制作の知識がない人間からすると見た目のバランスが狂ってしまったり、システムの不具合が出るのが怖いですからね。
——たしかに、“制限がある中で自由に編集できる”ほうが安心していろいろ試せますよね。
坂元さん:はい。それから、管理画面の操作性も決め手になっています。とにかくかんたんです。他社ECサービスの管理画面を知っている自分からすると「最高!」の一言ですね(笑)。
最初にいくつかのネットショップ作成サービスを試したときにもいちばんかんたんだと思いましたし、実際にショップ運営をしていく中でも、発送処理や売上の引き出しがかんたんにできましたし、ショップのPVがすぐに確認できたりするのもすごく助かっています。
オンライン販売開始前の目標設定について
——具体的な目標設定や、ノルマなどはありましたか?
坂元さん:売上目標として、「1年目に30万円、2年目に50万円、3年目に100万円」というのは掲げていました。とくに根拠があったわけではないのですが(笑)。結果としては、おかげさまでだいたい目標通りに推移しています。
——素晴らしい結果ですね。要因は何だと思われますか?
坂元さん:正直、分析まではまだしっかりできていません。1年目は卸先を開拓して失敗したのですが、2年目は広告の勉強をしはじめて、それは先ほどお話しした通り一定の手応えは得られました。
私の商品はある意味ニッチであるがゆえに、「熱烈に応援してくださるファンの方が多い」のが特徴です。売上が大きく上がった要因のひとつに、とある料理家のYouTuberの方が藍包丁を使って料理動画を上げてくれたこともあると思うのですが、「この包丁は~」といった包丁の説明をしたことはなく、あくまで画面の隅に映っていただけなんです。
——いわゆるギフティング(商品をインフルエンサーにプレゼントして宣伝してもらうこと)や、PRをしてもらったわけではないのですね。
坂元さん:はい。それが逆によかったのかなと。へんに「この藍包丁はですね……」という紹介が入るととたんにビジネス臭っぽさが出てしまうと言いますか。藍包丁が映る新たな動画が投稿されるたびに売れる、という現象が続いたのですが、純粋に「いい人に商品を知ってもらえたこと」が売上拡大の要因かなと思いますね。ビジネスとしてPRをお願いしたのではなく、ただ好きで選んでいただいたわけですから。
「職人コラボレーション」というコンセプトに共感して「商品撮影をさせてほしい」とご連絡いただいたカメラマンさんとは今もいっしょにお仕事をしていますし、購入いただいたお客様から「応援しています」と熱いメッセージをいただくことも少なくありません。
——なるほど、きっと根幹には「コンセプトへの共感」があって、それがブログやSNSでの地道な発信から、購買に繋がっていったのかもしれませんね。
運営していて気づいたBASEのいいところ
——ちなみに、ショップの運営は何人でやられているのでしょうか?
坂元さん:全部自分一人でやっています。日中はグループ会社の海外展開に関するコンサルティングや人員のマネジメントをしているので、その仕事が終わった後から、ネットショップの受注管理や発送作業をおこなっています。
——BASEを利用してみてよかった点(活用できた機能など)はありましたか?
坂元さん:操作がかんたんだったり、PVが見やすいことはもちろんですが、有料オプション機能の「振込申請プラス」は、キャッシュフローの観点で非常に助かっています。
また、デザインテンプレートの種類も多く、「かんたんに、おしゃれに、見やすくなる」のもいいですね。私はコンセプト違いで複数のショップを運営しているので、コンセプトに応じて違うテンプレートを使い分けています。
今後のショップ展開・展望について
——今後の販売目標や展望を教えていただけますか?
坂元さん:現状の売上にはまだ満足していないですし、コンセプトである「職人のコラボレーション企画」を藍包丁の他にももっと増やしていきたいと思っています。「包丁」という領域以外のプロダクトで、異業種同士のコラボレーションを生み出したいですね。
また、「実際に触ってから購入したい」という方は一定数以上いらっしゃいますので、そういう方のためにレンタルサービスもやってみたいなと思っています。
——レンタルサービスなら、イベント出店などのコストを掛けなくても、実際に試すことができて便利ですね。
坂元さん:そうですね。あと、じつは藍包丁全体の売上構成比で言いますと、オンラインショップの売上はだいたい6割くらいで、残り4割の売上は、「柄を長くしたい」「刃を違うものに変えたい」など、こだわりの強いお客様による「オーダーメイド制作の包丁」によるものなんです。
そう考えると、オンラインショップはあくまで「入口」「見本市」であり、新規のお客様に目を留めていただくという場になります。リピーターのお客様や、コンセプトに共感いただくお客様に満足いただけるような「カスタマイズ(セミオーダー)」や「フルオーダーメイド」の展開を今後もっと増やしていきたいですね。
活用ポイント
株式会社エディットジャパンのネットショップ活用ポイントは、以下になります。
・限られた資金とリソースをオンラインに集中投下することで、短期間で大きな成果を得られたこと
・オンラインショップを「入口」と位置づけて、後にオーダーメイド制作など、「高単価商品」のリピート受注につなげたこと
実店舗販売や、全国の催事への出店はさまざまなコストが掛かりますが、運営リソースが限られている中では、どのチャネルにどの施策を投じれば効果が最大化するかは非常に重要なポイントです。
また、オンラインショップ上にはある程度普遍的に人気のある商品を並べて、コアファン向け商品はリピーター向けに訴求していくことで中長期にアップセルしていく、ということも興味深い戦略だと思います。
ぜひみなさんもBASEでのネットショップ開設をご検討してみてはいかがでしょうか?
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?