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学生インターン東南アジアでホテル経営#Ep.7 死にかけたホテルを救え!? 〜死刑宣告〜


「ここから出て行け」

ホテルのオーナーが、建物のオーナーに言われる。

突然の出来事だった。
何が何だかよくわからない。


もともとこのホテルは、目の前に建つ“Dホテル”のラオス人オーナーが所有する土地建物の一つだ。
それを現在のバングラディシュ人のオーナーが建物を借りて、
ホテル&インディアンレストランを運営している。

エアコンの設置をしてくれたのも、修繕費用を出してくれていたのもこのラオス人オーナーだった。
太っ腹な方だなと思っていた。

実際に会うまでは。


最近頻繁にホテルに顔を出す。イメージしていた人の良さそうな人とは違う。
60代くらいのふくよかな体つきをしている年配の方だ。
彼を一言で例えるなら、“古だぬき”と言う言葉がぴったりだろう。
話したことないけど(笑)
ただ一目見てそう思った。

英語でしゃべりかけても、そっけない感じだ。
ラオ語しかしゃべれないのかな。
いつも通り、にこやかに挨拶をし、自己紹介をする。
愛想のいい方ではないのか。口元は笑っているように見えるが、目は笑っていない。

彼はビエンチャン観光地の土地建物を何箇所か所有している大地主だ。今は、それらをリースして収入を得ているらしい。
が、彼が所有するホテルはいずれも上手くいっていない。経営能力はあまり高いほうではないらしい。


ホテルのオーナーがラオス人の地主と何やら話をしている。
長時間話している。オーナーの顔がどんどん曇っていってゆく。
顔は見えるが、なんの話をしているのかはわからない。

一方、こちらはちょうど部屋がalmost完成したところだった。

2時間が経つ。ようやく話が終わったようだ。
ホテルのオーナーに話を聞きに行く。

カイト
「何かあったんですか?」

ホテルオーナー
「・・・・・。あとで話す。」

なんなんだ?
でも、部屋も完成の兆しが見えてきたし、紆余曲折を得ながらも進んでいる。
その日は、ただただ嬉しさに胸を踊らせ、床に入る。


翌日、ラオスで飲食ビジネスをしているここを紹介してくださった方のところにビザに関する用事があったので、会いに行く。
その方のおかげで無事に早くビザを取ることができた。

彼は私の顔を見るなり笑った。
「聞いたかい?」

彼はドラマチックなイベントが大好物だ。
良い意味でも、悪い意味でも…。
嫌な予感がする。

カイト
「何かあったんですか?」


彼は笑いながらこう答えた。
「オーナーがホテルから出て行けって言われたらしいよ」


??????え???????


突然の告白に頭が追いつかない。
理解ができない。

彼は続ける。
「でもなんで突然そんなこと言ってきたんだろうね。ここでの毎日も波乱万丈なのに、ここにきてまさかの展開で本当にドラマのようだね(笑)」
腹を抱えて笑っている。


一生懸命状況を整理する。
ここに来て20日。ようやく形が見えてきた。

ホテルが潰れると家賃収入が取れなくなるから、支援してくれてたのではないのか??
しかも、なぜこのタイミングで?

ここは立地がすごくいい。東京でいうなら、六本木だ。
今より高い家賃で貸せても不思議ではない。

「もしかしたら、もっといい条件で借りてくれる人を見つけたのかもねぇ。エアコンもつけたのも新しい貸しのためかも」
彼が言った。

考えることが一緒だ、、。
それゆえに現実味を帯びていて怖い。

お世話になった方
「とりあえず、今は状況を見極めよう。ね?」

カイト
「はい」



ホテルに戻る。
みんないつも通りに動いている。
このホテルがなくなるかもしれない。
何の指示も出せない。

部屋に戻る。
落ち着いて考える。

ホテルのオーナーが2年費やしてもこの状態だったホテルを、
ここまで持ってくるのに20日あまり、1ヶ月でホテルとして軌道に乗せる「予定」だった。


自分しかいないこの静かな部屋で、
聞こえてくるのは自分が今まで一生懸命積み上げて来たものが無力にも一瞬で崩れる音だった。

まるでテーブルの上に積み上げてきたグラスのタワーを、
勝手にテーブルクロスを引っ張られてガシャン、ガシャンと全て落ちて割れていくみたいに。


考えれば考えるほど、無性に腹が立った。
こんな最悪な状態になるまで何もできなかったホテルのオーナーに。
突然、退去を告げて来た無慈悲な建物のオーナーに。


お金も力も能力もある日本人投資家に見向きもされなかったこのホテルで、
計画を立て、少しずつ建物を綺麗にし、少しづつスタッフを育ててきた。
もう少し。もう少しだった。
ようやく問題だらけのこのホテルで解決の糸口が見えてきたところだった。

それが一瞬にして、無になるのか。運命は残酷だ。ここまでの試練を与えてくるか。


何度も何度もベッドを叩きつけた。(壁を叩いたら、穴が空きそうだったから)
悔しくて、涙が…出そうだったけど出なかった。


考えても仕方がない。考えれば考えるほど、悔しさと悲しさと無力感に苛まれる。
といっても、これから何をしても結局土台から崩されるのであれば意味がない。
今はただ、ホテルのオーナーの決断を待つしかない…。

to be continued...?

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