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どんなお題でも語る #5「女人禁制のパンケーキ専門店」

ばさつです。このnoteでは「どんなお題でも語る」をモットーに、皆様から貰ったお題について小噺にして語っていきます。

#5「女人禁制のパンケーキ専門店」

誰だって、話題のものは飛びつきたくなる。
それが入手困難であれば尚更だ。

「とある店のパンケーキをスタッフの目を盗んでタッパーに詰めて持ち帰ること」

妻と娘から私にミッションが与えられた。

食べたければ2人で行けばいいじゃないかと思うかもしれないが、これには理由がある。

この店は男性専用なのだそうだ。

なんでも、「抑圧されている甘党男子を解放する」がコンセプトだそうで、昨年のオープン以来、スイーツ好きの男性が絶えず行列を作る店としてSNSで噂になっているらしい。

スタッフも全員男性だとか。

だが、アップされるのは雑居ビルの地下に吸い込まれていく行列の写真と味の感想程度。
何故かパンケーキの写真はなく、それがまた噂を呼んだ。

ただ男というだけで、全く興味のない私に白羽の矢が立った。

2時間の行列に耐えて店内に入るや否や、事前情報とは全く違う光景が広がっていた。

なんだろう、このメルヘンな内装。

壁紙も小物も、全て目が痛いレベルのピンク。

『いらっしゃいませ、ご主人様!』

入り口で出迎えてくれたのはロリータファッションに身を包んだ、高校生の娘と同年代くらいの少女だった。

・・・あれ?

ここ、メイドカフェだ。

席に案内してくれた少女に聞いてみる。
「ここってパンケーキの店じゃ・・・」

少女は一瞬目を大きく見開いた後、周囲の視線がこちらにないことを確認してから小声で話し始めた。

『パンケーキ屋さんっていうのは、常連さんがついた嘘なんです』

なんと。

顛末はこうだ。

オープンしてすぐの頃、お店を気に入ったある男性客が、周りに女性客がいると恥ずかしくて思い切り遊べないので
「ここは男性専用の、しかも甘い物のお店
と噂を流せば女性客はもちろんライバル(男性客)も減らせて推しのメイドさんを独占できる!と考えた。

しかし、その噂はスイーツ男子の間で大きく広まってしまい、コンセプトの物珍しさからパンケーキを求めて全国からお客さんがやってくる様になってしまった。

『オーナーも、”お客さんの期待を裏切れないから”って言うのでパンケーキに力を入れていたら、本当に凄く美味しくなっちゃいました。』

可笑しいでしょ?と少女は笑う。

メイドさんとチェキを撮る(もはやメニューにない)都合上、店内は撮影禁止になったまま。

スイーツ男子達も、これ以上行列が長くなっては困るので積極的な情報発信を控えた。

しかし、それが逆に謎を呼び、全ての者の意思とは裏腹に、日を追うごとに行列が伸び続けている。

かくして、フリフリなコスチュームのメイド口調の女の子が真っピンクの部屋で接客する、女人禁制の本格パンケーキのお店が誕生した。

常連さんは噂が広まってからパタリと来なくなったという。
まあそうだろう。自業自得だが。

「・・・実は家族からパンケーキを頼まれてるんですが、持ち帰ってもいいですか?」
『ええ、勿論です!』
ミッションはあっさりクリア出来た。

先に「女性も入店できますか?」と聞こうかとも思ったが、もし古参の常連さんが来たら申し訳ないのでやめた。

謎が一気に解けてスッキリした。
最初はあまり乗り気ではなかったが、これも何かの縁だ。
私も噂のパンケーキを注文した。

少女が運んできたパンケーキをテーブルに置くと生クリームを構えて言う。

『一緒に歌ってくださいね!』
『美味しくなーれ♪萌え萌えキュンキュン❤️

「も・・・もえもえ・・・」

オーナー、いい加減マニュアルは変えてくれ。

#5「女人禁制のパンケーキ専門店」 完


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