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『サラダバス』

『いい?人を野菜だと思うの』

小学校に入学する前、極度の人見知りだった私にトマトが教えてくれた緊張のほぐし方。

私はこの方法で全てのライフイベントを乗り切ってきた。
どんなに注目されても、野菜だと思えば怖くなかった。

おかげで学校では人並みに友達もできた。
特に深谷ネギとは小学校からの親友で、今でも毎日欠かさず連絡を取り合っている。

野菜に彩られる毎日を過ごす私が地方の農業法人に就職するのは必然だった。

入社式が終わり、自然薯が言う。

『皆さんには、これから配属先の農場を見学して貰います。順に降ろしますのでこちらのバスに乗って下さい。』

私は後部座席に案内された。



最初の停車で胡瓜が降りた。

次にサニーレタスとレッドオニオン、

その次に赤ピーマン。


徐々に品目が減っていく。

最後まで残った私は、男爵とメイクイーンと共にバスを降りた。

出迎えてくれたインカのめざめが言う。

『今日から君たちが担当するジャガイモ畑です』

マズい、全員を見失った。

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