紅蓮ゾルゲ回顧録 第4話 キャプテン・カレーパン ~卍ゾルゲの野望~

序章 流転する改造計画

 さて、前回ご紹介した紅蓮ゾルゲ界のトキこと【墓地ソMDWゾルゲ】だが、やはりトキは病人である。

 剛の拳よりストロングな柔の拳とはいえ、《"龍装"チュリス》から《D2M2 ドグライーター》に革命チェンジして殴りに行くので、どうしても相手に「ワンチャン与えて」しまう。《Dの妖艶 マッド・デッド・ウッド》の効果発揮タイミングが自分のターンの開始時というのもややきつい。序盤から殴ってくる速攻系は《"龍装"チュリス》で殴る対象を殴ってきた相手の打点が高いクリーチャーにすれば良いが、一気に打点を作ってくる【ドギラゴン剣】などのミッドレンジ系アーキタイプや、S・トリガー付きD2フィールドを採用しているデッキに対して不安が残る。事実、ドギラゴン剣相手はシールドからクロックやスパイナーと一緒に《Dの妖艶 マッド・デッド・ウッド》が出ることをただただ祈るしかなかった。

 また、墓地の肥えるスピードも微妙といえば微妙であった。むしろ、これなら墓地を肥やしながら相手を適度に妨害できる黒系統に寄せたほうがまだマシといえばマシである。

 なかなか手札に有効札が舞い込まず、「トキ……病んで(事故って)さえいなければ……」と唇を噛む場面も増えてきた。よろしくない流れだ。
 逆に言えば、まだまだ改善の余地が残っているとも言える。

 そうして試行錯誤が始まった。

 漢らしさをあえて捨て、《サイバー・チューン》を突っ込んでみたり、足りなくなった漢成分を《爆撃男》で補ってみたり、《エマージェンシー・タイフーン》まで積んで墓地ソースにより近づけたりしてみたが、何か違う気もする。

 もっと抜本的に、「墓地から大量蘇生させる」コンセプトが残るのであれば、【墓地ソース】や【ドグライーター】であることを捨て去ってしまってもいいのではないか?

 腹案はいくつかあった。自分のデッキを3枚残して全て墓地に送る《黒神龍 エンド・オブ・ザ・ワールド》から《D2M2 ドグライーター》に革命チェンジ、その次のターンで《Dの妖艶 マッド・デッド・ウッド》のDスイッチを起動する。ただし、これはかなり遅い。《黒神龍 エンド・オブ・ザ・ワールド》は7マナ、出すにはやや手間がかかる。しかも、革命チェンジを含めても2ターンの猶予を相手に与えてしまっている。これは良くないし、向こうが《ヴォルグ・サンダー》を出した瞬間全てが終わる。
 《黒神龍 エンド・オブ・ザ・ワールド》を活かすにしても、D2フィールドを使用する構築を諦めて《ラトリエ・ロブション》にする場合、結局1ターンの猶予を与えていることに変わりはない。相手の《ヴォルグ・サンダー》を対処するために《悠久の守護者 フォーエバー・プリンセス》を採用するにしても、《ラトリエ・ロブション》とは致命的なアンチシナジーが形成されてしまっている。

 堂々巡りが続く中、そのカードは福音の如くやってきた。

 《龍装鬼 オブザ08号/終焉の開闢》だ。

 《暴走龍 5000GT》と同様のコスト軽減能力を持つクリーチャー面に加えて、呪文面で墓地に落ちた《D2M2 ドグライーター》を拾いに行ける。さらには《"龍装"チュリス》と同様に種族にドラゴンギルドを持っているため、《D2M2 ドグライーター》への革命チェンジができる。スピードアタッカーを持っていない点は、2ターンの間他の手段で妨害できればそれでいい。
 そして、私はそれが可能なアーキタイプを見つけていた。

【黒単デスザーク】。

 魔導具の墓地を肥やす能力には目を見張る物がある。1ターンに3~4枚肥やすことは造作もなく、場と墓地の魔導具を使用してコスト踏み倒し召喚を行う「無月の門」を持つ《卍デ・スザーク卍》や「無月の門・絶」を擁する《卍月 ガ・リュザーク卍》といったドルスザク・クリーチャーたちは、どちらも場に出ると相手に多大な負担を強いる。
 そう、場にいるだけで相手の足を引っ張ることが可能なのだ。そして、その特性上これらのドルスザクは除去されにくい。たとえ破壊されたとしても、その「スザク」の名に偽りなく、灰の中から舞い戻ってくるからだ。
 ひとまず、この【黒単デスザーク】を研究する価値はあるだろう。そして、その研究成果を紅蓮ゾルゲにフィードバックさせる。
 手なりで組んだ【黒単デスザーク】をCSに挑む身内のプレイヤーに貸し出して、その動きを観察することにした。

 私は心中で詫びていた。
 すまんな友人。お前が今使っているそのデッキはやがて【紅蓮ゾルゲ】に改造するための研究材料なんだ。せいぜい良いデータを持ち帰ってくれ。フハハハハハハ。

 どうも私はマッドサイエンティストの気があるらしい。

 友人からの意見や、実際のゲームの観察を経て、ついに【黒単デスザーク】への投入方針は固まった。ある程度【黒単デスザーク】の動きを見せた後、おもむろに《Dの妖艶 マッド・デッド・ウッド》を出して相手に対応を要求する。次の瞬間墓地からすっ飛んでくる《偽りの名 ゾルゲ》と《激流 アパッチ・リザード》。魔導具たちのパワーも大きなもので4000、カレーパンにするには十分といったところか。
 すぐさま私はデッキの構築に移るのであった。

第1章 構築

 まず、このデッキの構築は【黒単デスザーク】に寄せたものでなくてはならない。【黒単デスザーク】の動きをするためには魔導具クリーチャーと《卍デ・スザーク卍》および《卍月 ガ・リュザーク卍/卍・獄・殺》を投入する必要があるのは自明の理だ。

 必須の魔導具は4コストの《堕魔 ヴォガイガ》、《堕魔 ヴォーミラ》。3コストの《堕魔 グリギャン》や2コストの《堕魔 ドゥシーザ》《堕魔 ドゥポイズ》も欲しい。

 そしてさらに、脇を固めるクリーチャーとして《追憶人形ラビリピト》と《龍装鬼 オブザ08号/終焉の開闢》。ここまで見れば普通の【黒単デスザーク】である。

 しかしながら、私が今作ろうとしているのは【紅蓮ゾルゲ】であって【黒単デスザーク】ではないのだ。というわけで、ここに叩き込まれる《偽りの名 ゾルゲ》《激流 アパッチ・リザード》。さらに今回のコンセプトである墓地蘇生を実現する《D2M2 ドグライーター》と《Dの妖艶 マッド・デッド・ウッド》も放り込む。この2枚のパッケージは前作【墓地ソMDWゾルゲ】からの続投である。

 だが、【黒単デスザーク】をベースにする場合、魔導具は多めに入れる必要がある。その他のクリーチャーはノイズになってしまうのだ。
 純正の【黒単デスザーク】は《卍デ・スザーク卍》が4枚、《卍月 ガ・リュザーク》は3枚という構築がトレンドだが、今回これらは通常の構築よりも1枚減じる。
 また、ぶっちゃけ《偽りの名 ゾルゲ》および《激流 アパッチ・リザード》も結局は1枚墓地にあればOKである。よってこいつらも前回の構築から1枚ずつ抜く。

 さらに、手札に来てしまった《偽りの名 ゾルゲ》や《激流 アパッチ・リザード》などを墓地に落とすため、《堕魔 ザンバリー》を採用する。1コストのブロッカー魔導具であり、召喚時に手札を1枚墓地に捨てる必要がある。ここで墓地に落としておいて、蘇生の準備を行うという寸法だ。

 各パーツの枚数を一人回しを繰り返しながら調整を続け、よりデッキを煮詰めていく。その結果は次章でご覧いただこう。

第2章 キャプテン・カレーパン ~First Unknown~

 こうして完成した【卍ゾルゲ】。その全容は以下の通りだ。

2 x 偽りの名 ゾルゲ
2 x 激流アパッチ・リザード
3 x D2M2 ドグライーター
3 x Dの妖艶 マッド・デッド・ウッド
2 x 撃髄医 スパイナー
3 x 卍 デ・スザーク 卍
3 x 堕魔 ドゥポイズ
4 x 堕魔 ヴォガイガ
3 x 堕魔 グリギャン
3 x 堕魔 グリペイジ
2 x 堕魔ザンバリー
3 x 堕魔 ヴォーミラ
2 x 追憶人形ラビリピト
2 x 卍月 ガ・リュザーク 卍/卍・獄・殺
3 x 龍装鬼 オブザ08号/終焉の開闢

1 x 紅蓮の怒 鬼流院 刃/バンカラ大親分 メンチ斬ルゾウ
1 x 遊びだよ!切札一家なう!/カレーパン・マスター 切札勝太
1 x 勝利のプリンプリン/唯我独尊ガイアール・オレドラゴン
1 x 勝利のガイアール・カイザー/唯我独尊ガイアール・オレドラゴン
1 x 勝利のリュウセイ・カイザー/唯我独尊ガイアール・オレドラゴン
1 x ヴォルグ・サンダー/雷獣ヴォルグ・ティーガー
1 x ウコン・ピッピー/星龍王ガイアール・リュウセイドラゴン
1 x 時空の指令 コンボイ・トレーラー/司令官の覚醒者 コンボイ

 序盤は魔導具の動きをしながら、突然紅蓮ゾルゲに変貌する。
 この動きを見て、私は当初、こんなことをTwitterで呟いていた。

 https://twitter.com/JackBartlettP/status/1012882778621218816
 できた……できたぞ……
 【卍ゾルゲ】……!
 紅蓮ゾルゲを回しながら独ソ戦について学べるすごく教育的なデッキができた……!

 しかし、しかしである。
 今にして思えば、この認識は大いなる間違いであった。
 符合していたのは、独ソ戦ではない。いや、確かに独は絡む。

 だが、このデッキの真価は、ある男の物語と符合していたのだ。
 祖国を愛するが故に、祖国に反旗を翻すことも辞さないスーパーヒーロー。

 キャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャースの生き様を、このデッキで学ぶことが出来るのだ。

 ~キャプテン・カレーパン・サーガ~

 まず、主人公を紹介せねばなるまい。彼こそがスティーブ・ロジャース、キャプテン・アメリカその人である。

 彼はドイツの秘密結社ヒドラの野望を挫くために戦い(場に出てすらいないが)、北極海(墓地)に沈む。
 だがしかし、そんな彼の身柄をサルベージする男がいた。彼こそがS.H.I.E.L.D.長官、ニック・フューリーだ。

 S.H.I.E.L.D.の内部に入り込み、暗躍を続けるヒドラ(魔導具)。だが、彼らを潰すため、キャップはあの大号令をかける。
「アベンジャーズ、アッセンブル!!」

 ヒドラは壊滅し、盤面に勢揃いするアベンジャーズたち。

 だが、そんなアベンジャーズのメンバーは意見の相違から仲間割れを起こす。そして勃発するCIVIL WAR!

 そして最終的に始まる無限ループ、まさにINFINITY WARである。

 こうして、終わりなき無限ループの果てに待っているのはエンドゲーム、というわけである。
 そして、このアベンジャーズの一員であるキャップは、仲間が斃れるその瞬間、敵の戦力も1つ削る。他のクリーチャーが場を離れた時、自分のD2フィールドが場にあるならば、相手はクリーチャーを1体選んで破壊しなければならないのだ。
 この効果はまさに、この名言に当てはまるのではないだろうか。

「たとえどんな軍隊が来ようと我々はあんただけを狙う。地球を滅ぼしてみろ、必ず報復(Avenge)してやるぞ」

 ……「これ言ったのアイアンマンことトニー・スタークだしキャップ関係ないやろ」とか言った奴は鬼流院カレーパン工場で強制労働の刑に処す。

 さぁ、役者は揃った。高らかにこう叫ぼうではないか。

 日本よ、これが紅蓮ゾルゲだ!!

第4章 Avengers assemble

 このデッキだが、残っている実戦記録はVaultのログだった。
 ということで、いくつか面白そうな試合をログからピックアップしてまとめてみようと思う。

Part 1. vs.白単紋章ゼニス

 対戦相手がこの時使用していたのは、裁きの紋章を使用しつつ、白の大型クリーチャーのコストを《煌メク聖戦 絶十》の効果で軽減しながら召喚・制圧していくタイプのデッキである。《獅子頂龍 ライオネル》まで出すと、シールドの裁きの紋章や白のクリーチャーがS・トリガーを得るため凄まじい展開力を見せつける。そこまで速度の乗るデッキではないが、かといってまごついていると不利になることは明白だ。

 相手の2ターン目に《断罪スル雷面ノ裁キ》で1ドロー、続く3ターン目に《剣参ノ裁キ》で《煌メク聖戦 絶十》を手札に加えることでデッキを回転させる一方、こちらは3ターン目から《堕魔 グリギャン》で墓地を肥やすスロースタート。その後、相手の4ターン目で《巡ル運命ノ裁キ》が放たれ、次ターンにサバキZによる《煌メク聖戦 絶十》の無償降臨が確約される。
 こちらの4ターン目、《堕魔 ヴォーミラ》を召喚。さらに墓地を肥やす。ここまでで墓地に落ちた魔道具は《堕魔 ヴォガイガ》と《堕魔 グリペイジ》の2枚のみ。さらに、最初のグリギャンによって《撃髄医 スパイナー》が、続くヴォーミラによって《卍デ・スザーク卍》がそれぞれ墓地に送られている。残る2枚はどちらも《偽りの名 ゾルゲ》。ヴォーミラが次のターンに生き残っていれば、まだ戦える状況ではある。

 相手の5ターン目、《巡ル運命ノ裁キ》の効果が解決されることで《煌メク聖戦 絶十》が登場。デッキトップがシールドに置かれたことで、次に使用する光のクリーチャーと呪文のコストが2軽減される。そこから1マナで《ヴァリアブル・ポーカー》が放たれた。合計10コスト軽減という驚異的な数値から放たれるクリーチャーは……《獅子頂龍 ライオネル》。一度着地してしまうと、バトルゾーンを離れる代わりに相手が選んだシールドを手札に加える置換効果と、シールドの光のカードに対してS・トリガーを付与する常在効果を持っており、放置もできないがうかつに触ることもできない、非常に厄介なクリーチャーだ。

 ターンが返り、こちらは少し悩んで《堕魔 ヴォーミラ》の効果で《堕魔 ヴォガイガ》を墓地から蘇生。この時、《卍デ・スザーク卍》の効果は使用しない。墓地に落ちたのは《堕魔 ヴォガイガ》2枚と《D2M2 ドグライーター》そして《堕魔 グリギャン》だ。一応、《D2M2 ドグライーター》を手札に加える。というのも、その後1マナで降臨するこのクリーチャーがいたためだ。
 そう、我らがニック・フューリーこと《龍装鬼 オブザ08号》だ。シールドを操る光デッキに対抗して「だったらこっちはS.H.I.E.L.D.だ」とばかりに登場時効果で《煌メク聖戦 絶十》を消し炭にする。一応正式名称が戦略国土調停補強配備局(Strategic Homeland Intervention, Enforcement, and Logistics Division)なので戦略的に国土調停(使用マナの節約と相手のパワーをマイナス)と補強配備(呪文面で墓地肥やしと墓地回収)ができているオブザ08号はシールドに関する効果こそ持っていないが、S.H.I.E.L.D.の体現者と呼ぶことに一切の躊躇はない(断言)。

 続く相手の6ターン目、再度《巡ル運命ノ裁キ》が使用される。おそらくは手札に加えるシールドをライオネルの効果で踏み倒す心算だろう。
 そのままライオネルがこちらに攻撃。これを《堕魔 グリギャン》でブロックして1ターン凌ぐ。タップしてくれたことで、《D2M2 ドグライーター》への革命チェンジがやや容易になった。こちらが触るシールドが2枚から1枚に減ったのだ。

 そして、こちらの6ターン目、先程ブロックして墓地に落ちたグリギャンをヴォーミラの効果で蘇生。落ちた3枚の中には《Dの妖艶 マッド・デッド・ウッド》がある。手札には《激流アパッチ・リザード》。全ての状況が整った。フューリー長官がライオネル目掛けて殴りかかる瞬間、我らがキャップ、《D2M2 ドグライーター》へ出動命令が下り、革命チェンジ。ブルックリン育ちのキャプテン・ドグライーターがD2フィールド《Dの妖艶 マッド・デッド・ウッド》を展開しながら、正義のシールドバッシュをライオネルに叩き込む。パワーでこそ押し負けているが、ヴォガイガはこの時キャップのラウンドシールド役を買って出たのでそのまま投擲される(D2フィールドでキャップに付与されたウルトラ・セイバー多色の置換効果をヴォガイガに適用して墓地へ行く)。この瞬間、犠牲となった仲間の姿を目にしたキャップの怒りに火がついた(自作自演)。目には目を、歯には歯をのアベンジャー精神だ。ということで、相手はここで1体を犠牲にする必要がある。相手はライオネルを選択し、置換効果が発生。こちらが選んだシールドからは《ヴァリアブル・ポーカー》が登場。シールドを確認し、重要なトリガーであろう2枚を残して3枚をデッキボトムに置き、新たに3枚のシールドを加えた。
 相手の7ターン目、攻撃してきたライオネルはそのままシールドを割らせる。そうしてこちらにターンが返ってきた。さぁ、いよいよアベンジャーズに出動要請をかけよう。
 ターン開始時、《Dの妖艶 マッド・デッド・ウッド》のDスイッチを発動。こちらはキャップに付与されたウルトラ・セイバーを使用してグリギャンを墓地に置き、それ以外をデッキに戻す。もちろん相手はライオネルの置換効果を使用。こちらが選択した盾からは《剣参ノ裁キ》。互いの置換効果を適用した後で、墓地に眠るクリーチャーすべてを蘇生させる。
 こうして並び立った《偽りの名 ゾルゲ》、《激流アパッチ・リザード》、そしてアパッチから飛び出る《紅蓮の怒 鬼龍院 刃》。Cip効果が連鎖し、《ヴォルグ・サンダー》の連射で相手の山札は全て墓地に送り込まれた。

Part 2. vs.赤緑NEXT

 場に置かれたFOBIDDEN STARと、ドラグハート満載の超次元。この場合は【赤緑NEXT】か【赤黒デッドゾーン】の2択が考えられる。どちらも足の速いデッキなので、デスザークの動きで適度に妨害する必要はあるが、決して不利な相手ではない。ただ、先攻を取られてしまっているのが気がかりだ。

 相手の2ターン目で《メンデルスゾーン》。マナに2枚のドラゴンが落ちる。ここで突き放されるとかなり厳しいが、こちらの動きは鈍く、多色マナの2ターン連続タップイン。続く相手の3ターン目、最速で動かれるタイミングはここだったが、相手はここで《超戦龍覇 モルトNEXT》をチャージしてターンを終える。一旦は生き延びた。返すターンでこちらもマナチャージエンド。にらみ合いが続くが、こちらの墓地が肥えていないのが非常にもどかしい。

 相手の第4ターン、《メンデルスゾーン》が投下されるが、ここは1マナブーストにとどまる。好機とばかりにこちらの第4ターン、4マナで《堕魔 ヴォガイガ》を召喚。墓地に4枚が落ちるが、ここで落ちたのがドグライーター、ゾルゲ、ヴォガイガ、そしてスパイナー。手札を確認すると、《堕魔 ザンバリー》と《Dの妖艶 マッド・デッド・ウッド》がいる。まずはドグライーターを加えて、いつでもコンボ始動ができるようにしておく。

 ここで相手の第5ターン、相手は8マナを払って《永遠のリュウセイ・カイザー》を召喚。あれを放置するとこちらのクリーチャーがタップインされてしまう上、後続のドラゴンがスピードアタッカーになってしまう。しかしこちらは《堕魔 ドゥポイズ》があるため、《堕魔 ザンバリー》を出してマッド・デッド・ウッドを墓地に送り込みつつ《堕魔 ドゥポイズ》で破壊。手札が一気に減ったが、少なくとも厄介なクリーチャーは破壊できた。

 だが、続く相手の第6ターン、相手はついに動いた。
 《超戦龍覇 モルトNEXT》からの《闘将銀河城 ハートバーン》。スピードアタッカーと化したモルトNEXTが襲いかかる。何も手立てがない場合、モルトNEXTのアンタップとこれに呼応するハートバーンの龍解、《超戦覇龍 ガイNEXT》が揃って致死打点が形成されてしまう。最初のシールドからは何もなく、ハートバーンの龍解、ガイNEXTの3打点。万事休すか……と思われたが、ここでシールドから値千金の《撃髄医 スパイナー》がスーパーSTを引っさげて登場。モルトNEXTにパワーマイナス9000をお見舞いしつつ、墓地からヴォガイガ、ザンバリー、ドゥポイズを蘇生させる。ドゥポイズとスパイナーを破壊してガイNEXTを処理しつつ、ヴォガイガの効果で《卍 デ・スザーク 卍》を回収。さらに、《堕魔 ザンバリー》の登場時効果でシールドから加わった《激流アパッチ・リザード》を墓地に落とす。

 ターンが返りこちらも6ターン目。ここで、ニック・フューリーこと《龍装者 オブザ08号》を召喚。さらに、《堕魔 グリギャン》を召喚してブロッカーを増やす。相手はこれに対して、《伝説のレジェンド ドギラゴン》を召喚。ブロッカーを直接潰して、次のターンの敗北回避効果を得た。

 だが、《龍装者 オブザ08号》が一切手付かずの状態でターンが帰ってきたことは僥倖だった。こちらはそのまま革命チェンジしてキャップこと《D2M2 ドグライーター》を召喚。《伝説のレジェンド ドギラゴン》の敗北回避効果は「次の自分のターンの初めまで」という条件がついているため、このターンいくら自爆特攻をしてもターンが渡ってしまえばこちらのものである。ウルトラシールドセイバーを使ってドグライーターの破壊を回避しつつ、ドグライーターの効果との合わせ技でドギラゴンを処理。さらにダメ押しで無月の門・絶により《卍月 ガ・リュザーク 卍》を投下。これで次のターン、相手は動けないはずだ。

 そして案の定、相手は動かなかった。3マナしか起こすことを許されない状態で、何かクリーチャーを出すこともできない。相手はこちらがマッド・デッド・ウッドをひっくり返すのを黙って見ていることしかできなかったのだ。

第5章 そして、伝説を呼び起こす

 2回に渡ってマッド・デッド・ウッドを使用したデッキを使用したが、このデッキの課題、いやそもそもこれまでの紅蓮ゾルゲの課題としては、バッシュゾルゲを除いてギミックのどれかを相手に晒した状態で相手にターンを返す、という明確な課題があった。ジャックゾルゲ、そしてマッド・デッド・ウッドは、どのデッキも相手のアクションを許してしまっている。

 やはり、必要なのはMTGで言うところの「Time Walk」だ。しかし、エクストラターンを得るカードとなると、《無双竜機ボルバルザーク》は禁止であるし、それ以外のカードも条件は厳しい。

 ……そのはずだった。

 双極編も中期を過ぎた頃、ついに私は全ての回答を手に入れたのだ。
 完成したデッキを目の当たりにしたとき、私はそのデッキリストにある種の「荘厳さ」があったことに気がついた。そして、そのデッキリストを生み出してしまったことに、背徳感すら覚えていた。

 そう、それはまさしく、神話の時代の暴君が、時を経て現代に蘇ったように。
 伝説のデッキ、【ボルバルブルー】が【紅蓮ゾルゲ】の手を借りて復活を果たしてしまったのだ。

──To Be Continued...

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