FDA諮問委、「JN.1」コロナワクチンを推奨New Covid Boosters Get a Thumbs-Up From FDA. Vaccine Stocks Are Wavering.ノババックスは一時急伸も反落
急速に変異するウイルス
米食品医薬品局(FDA)の諮問委員会は5日、2024~2025年の新型コロナウイルスワクチンについて、変異株「JN.1」の系統に対応するワクチンを推奨することを決めた。これにより、ファイザー<PFE>とモデルナ<MRNA>に加えてノババックス<NVAX>にもワクチン供給の道が開かれた。
製薬メーカー各社は9月初めに今年の予防接種を開始することを目指しているが、FDAがどのウイルス株をターゲットにするかを決めるのを待っている。
その決定はウイルス構造の変化によって複雑になっている。米国では今年に入ってJN.1が優勢だったが、「KP.2」の勢いが増している。疾病対策センター(CDC)の推定によると、現在はJN.1が米国内のウイルスの8.4%にすぎず、KP.2や「KP.3」と呼ばれるJN.1の子孫より少ないという。
それにもかかわらず、FDAの諮問委員会はJN.1をターゲットにするよう勧告した。JN.1の子孫にも有効だというのが理由だ。また、ノババックスの関係者が、同社はすでにJN.1ワクチンの製造を開始しており、別の株をターゲットにしたワクチンを製造することはできないと述べたことが、委員の判断に影響した可能性もある。
ノババックスのタンパク質ベースの技術は、メッセンジャーRNA(mRNA)より設計と製造に長い時間がかかるとされる。
ノババックスでワクチンを開発しているロバート・ウォーカー博士はFDAの諮問委員会で、「われわれは9月1日にJN.1ワクチンを提供するために、すでに製造を開始している」と述べた。
サノフィと12億ドルのライセンス契約
FDAの高官は、諮問委員会がKP.2ワクチンを推奨したとしても、ノババックスはJN.1ワクチンを提供できると述べた。複数の委員はJN.1に固執しているように見えた。
FDAは諮問委員会の判断に基づいて公式ガイダンスを発表する。CDCの諮問委員会も、誰が予防接種を受けるべきかについて勧告を出す必要がある。
ノババックスの株価は6日朝方の時間外取引で15%も跳ね上がったが、結局6.75%安の19.56ドルで引けた。モデルナも朝方は3%近く上昇したが、0.10%安の154.69ドルで終了した。
ノババックスにとって、この反落はステッカー・ショック(値札を見て驚くこと)の可能性がある。株価はわずか1カ月前に4.76ドルで取引されていた。
ワクチン3社の昨年の売上高は予想を下回ったため、各社は今年に期待している。モデルナのバンセル最高経営責任者(CEO)は本誌に対し、今年は9月ではなく8月にワクチン接種を始めれば市場を大幅に拡大できるとの見通しを示した。
ノババックスは厳しい財務状況が続いていた。2021年初めには効果的と思われるコロナワクチンを開発していたにもかかわらず、市場に大量のワクチンを投入することができなかった。2月に証券取引委員会(SEC)に提出した2023年の年次報告書では、「企業として継続」する能力に「相当な疑い」があると述べていた。それが5月10日、サノフィ<SNY>と最大12億ドルに相当するライセンス契約を結んだと発表し、株価は150%強も跳ね上がった。
mRNAには多額のコスト
ファイザーやモデルナとは異なり、ノババックスは旧来のタンパク質ベースのコロナワクチンを製造している。ノババックスがすでにこのワクチンを製造していることが、FDAの諮問委員会の判断に影響しているように見える。
カリフォルニア大サンディエゴ校薬学部のマーク・ソーヤー教授は「ほかにやむを得ない理由がない限り、ノババックスの限界を考慮してJN.1を推奨する必要があると思う。そうしないと、mRNAワクチンを受けることに抵抗がある人々に対して公平性やアクセスの問題が生じる」と述べた。
諮問委員会のメンバーでシカゴ医科大の学部長を務めるアーチャナ・チャタジー博士は「きょうわれわれが推奨するものが何であれ、今から数週間後、あるいは数カ月後に流行しているウイルスはないだろう。それでも、JN.1ワクチンが他の変異株に対しても有効である限り、合理的な選択だ」と語った。
FDA高官のピーター・マークス博士は、ノババックスの能力に対する懸念が、最新の予防接種が行われることを妨げている可能性があると指摘した。同博士は「われわれは常に最新のウイルスを追いかけるべきでないと言っているが、最新のワクチンを手に入れるためにmRNAには信じられないほど高いコストを支払っている」と述べた。
マークス博士は、諮問委員会のメンバーはJN.1ワクチンを推奨するが、たとえFDAがKP.2ワクチンを選んでも、ノババックスはJN.1ワクチンを販売することができると説明した。
原文 By Josh Nathan-Kazis
(Source: Dow Jones)
翻訳 時事通信社
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