相続放棄の注意点1

Q 父が多額の借金を残して亡くなってしまいました。一方父は美術品の収集にのめり込んでおり、多くの美術品が残されています。
 父にお金を貸していてトラブルになっていた父の友人Aが美術品を回収すると私に連絡をしてきています。この人以外にも父にお金を貸していた人は大勢いるようです。
私は、借金を相続したくないし、トラブルに巻き込まれたくないので相続放棄をしようと思いますが、何か注意点はありますか。

1 基礎知識

 人が亡くなったときには、相続が発生します。
 相続が発生すると、その人が持っていた財産のみならず借金も相続人(その人の子や兄弟等)に移転します(民法896条)。
 そこで、多額の借金を負っていた人を相続した場合、相続放棄を検討すべきことになります。

 相続放棄は、相続があったことを知ったときから3カ月以内に家庭裁判所おいてしなければなりません(民法915条、938条)。

 相続放棄をすれば、その人は初めから相続人でなかったものとして扱われます(936条)。
 したがって、被相続人(お父様等)の借金を自分の財産で返済すべき義務から逃れることができます。

 ここまでは、知っている方も多いかと思います。

2 放棄した財産の管理義務

 しかし、相続放棄さえすれば何の心配もする必要がないか、というとそうではありません。
 民法940条1項は下記のとおり規定しています。

相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。


 したがって、相続放棄をしても次順位の相続人が相続財産の管理を始めるか、次順位の相続人がいなかったり全相続人が相続放棄をした場合には相続財産管理人という人の選任を家庭裁判所に申し立てて、その相続財産管理人が管理を始めるまでは、「自己の財産におけるのと同一の注意をもって」財産管理を続けなければなりません。
 もしも、財産管理を怠って、相続財産が害されてしまうと、次順位の相続人や被相続人の債権者から損害賠償を請求される可能性があります。
 したがって、Q1でも、相続放棄をした後に、Aが勝手に美術品を回収しようとしているのを知っていながら漫然と放置していた場合には、あなたがその損害を補填しなければならなくなる可能性があります。
 このような場合、あなたとしては、適切に美術品を管理するとともに、次順位の相続人に連絡をしたり、次順位の相続人がいなければ相続財産管理人の選任を申し立てる必要があります。

 もっとも、相続財産管理人の選任の申し立てには、裁判所へ予納金として数十万から100万円になることもあります。
 このお金は予納金ですので、相続財産が十分であればそこから返してもらえます。しかし、相続財産が不十分であれば持ち出しになってしまい難しい判断を迫られる場合があります。

3 まとめ

  以上より、相続放棄をするのかどうかや、相続放棄をした後にどうすべきなのかは、 
 ・保管に注意を要する遺産があるのか
  ・次順位の相続人はいるのか
  ・遺産をお金に換えた場合に幾らくらいになりそうか
  ・相続人の債権者にどのような人がいるのか を考慮して方針を決める必要があります。 
 相続放棄さえすれば問題ない!と単純に考えると思わぬトラブルに巻き込まれる可能性がありますので、注意してみてください。


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