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尾張藩9代藩主「徳川宗睦」

徳川 宗睦(とくがわ むねちか/むねよし)は、尾張藩9代藩主。官位は従二位・権大納言。尾張藩中興の名君と称された。

8代藩主・徳川宗勝(当時は高須藩主で松平義淳と名乗った)の次男として誕生した。母は側室の一色氏(英厳院)。幼名は熊五郎。

宝暦11年(1761年)、父の死去により跡を継ぐ。父同様に才能に優れ、山村良由や樋口好古らを登用して藩政改革に乗り出した。その結果に行なわれた新田開発や殖産興業政策、治水工事(熱田での開墾)の多くで成功を収めている。また、問題化していた役人の不正を防止するため、代官制度の整備も行なった。農村の支配強化も行ない、徴税の確実性を務めている。さらに父の時代に少々厳しくなりすぎていた刑法を改め、寛容なものにしている。藩士に対しても相続制度を確実なものとした。文化的にも父の代に基礎が築かれていた藩校・明倫堂(現・愛知県立明和高等学校)の創設して藩の教育普及に努めた。寛政9年からは家臣からの封書による政策提言を受けつける制度を実施し、人心収攬を図った。

ところがこのような改革を行い過ぎた結果、宗睦の晩年には財政赤字が見え始める。これを解決するために藩札を発行したが、これがかえって物価騰貴など経済の大混乱を助長してしまった。寛政11年(1799年)12月20日、67歳で死去。法号は天祥院。

宗睦は尾張藩の「中興の祖」と言われている。確かに藩政においては前半と中盤では大いに成功を収め、藩政を発展、安定化に導いた。しかし晩年の財政政策の失敗は、その後の尾張藩における財政破綻の一因を成したのであった。

愛知県小牧市の小牧山に、宗睦の墓石が建中寺から移されている。

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宗睦が藩主になる2代前の宗春は、当時、"享保の改革"を展開中だった8代将軍徳川吉宗の政策に反発し、
「倹約一辺倒では、世の中の景気はよくならない。景気をよくするためには、地域の責任者がまずゼイタクなくらしをして、どんどん金を川上から川下へ流すべきである」 という考えを打ち出しそのために、尾張藩はじまって以来はじめての公費の積極的な支出をはかった。また、町のくらしをゆたかにするために、祭りや行事などを全部復活。これに宗春もどんどん参加した。そのため、江戸のくらしが、吉宗の倹約令によってかなりきびしかったのに比べ、名古屋のほうは大いに賑やかになり、江戸の芝居小屋・遊郭・いろいろな売店などが、かなり江戸から名古屋へ流れた。
「江戸がダメなら名古屋があるさ」といわれ、名古屋も藩がはじまって以来の賑やかな都になった。
宗睦はその後をうけた宗勝〈むねかつ〉の方針をかなり引き継いでいる。8代目の宗勝は、7代目宗春の政策をほとんど否定。 「藩主はやはり質素倹約を旨とし、藩民の模範にならなければダメだ」という姿勢を貫いた。宗睦も基本的にはこれを引き継いだ。しかし宗睦の勤倹節約は、とくにケチるということではなく積極的に藩内の農業振興などをはかり、同時に「学問の奨励」を行った。しかし、宗睦自身の生活はかなりきびしく、食事は一汁一菜を通した。夜中の非常用として、飯と白味噌の丸めたものをつくって枕元におかせた。よく筆を使ったが、硯も小姓が誤って落としたものを、欠けたまま使っていたという。

徳川宗睦の小説。

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細井平洲を迎えた尾張藩9代藩主徳川宗睦は、まず名古屋城内で講義をおこなわせ、自分が真っ先にそれをきいた。
このころ尾張藩には、先代宗勝のつくった「幅下堀留学問所〈はばしたほりどめがくもんしょ〉」というのがあった。宗睦はこれを改革したいと考え、「藩の学問所では、武士だけではなく城下町の農民や町民まで学べるようなものにしたい」 と思った。天明3年(1783)に、この学校が完成。「明倫堂〈めいりんどう〉」と名づけられた。平洲は宗睦に命ぜられ、新しい学館の総裁に任命された。宗睦の方針どおり、平洲はオープンと同時にこの明倫堂における講義は、武士以外の一般の人びとにも公開。「細井平洲先生が、尾張藩の新しい学校明倫堂で講義をなさる」 という噂がながれると、たちまち明倫堂の前は黒山の人だかりになったという。

徳川宗睦が名君と言われたのは、細井平洲との関係が大きいと思われる。

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父:徳川宗勝
母:お嘉代の方 - 英厳院、一色氏娘
正室:好君 - たかぎみ、転陵院、近衛家久の長女
長男:徳川治休
次男:徳川治興
養子
男子:徳川治行 - 甥、弟・松平義敏の長男
女子:純姫 - 姪、弟・松平義敏の長女、上杉治広室
男子:勇丸 - 甥、弟・松平勝長の次男
女子:琴姫 - 姪、弟・松平義当の長女、前田斉広室、のち近衛基前室
男子:敬之助 - 徳川家斉の四男
男子:徳川斉朝 - 徳川治国の長男

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時代の舞台に想いを馳せて、ぶらりと散策するひととき。

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