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更年期の向こう側。

卵巣のう腫の手術から2ヶ月半。
卒業式×2、入学式×2、からのムスメがついにコロナをもらい自宅軟禁、実家の父が電ノコで自分の太ももを切る(うっかり)という猟奇事件のようなことまで起こり、特に何もしていないのに、訳がわからんうちに時間だけが経ってしまった。

記憶が薄れつつあるけど、記録に。
腹痛からのMRIで、もともとあった卵巣のう腫が、1年経たないうちに左がグレープフルーツ、右がポンカンサイズ2つに育ってしまったことが判明し、「破裂するかもなので、その時は救急車呼んでくださいね!」と言われビクビクしながらそーっと過ごした2ヶ月半。ようやく待ちに待った手術当日。
平成に手術したときは、ガラガラで運ばれ、素っ裸でヨイショ~!っと手術台に転がされ、あー、まな板の上の鯉とはまさにこのこ・・・と・・・ガクリ・・・と意識を失ったのでそのイメージでいたんだけど、今回は徒歩で手術室へ。令和!
早々にメガネを預けてしまったのでなんも見えねぇ!
看護師さんに手を引かれながらヨボヨボ行くと、上を脱いで手術台に上がってくださぁーい!と。
え?ちょ、待って。下は?あとから脱がされるの!?
入院中、面会一切NGなので、1週間洗濯物を出さないようにと思って。
下着は病院で捨ててこよ、と満を持してヨレッヨレの戦力外パンツを持参し、当然、この時も選りすぐりのヨレヨレパンツ。ヨレヨレの・・・パン・・・ツ・・・ガクリ・・・

で、気が付いたら手術終わってました。
今回は麻酔でハイテンションになることなく、普通に病人。残念。
水が飲めないのがツラい。発熱でだるいし偏頭痛はじまって吐き気もするし、ちょっと動くと痛いし足にはポンプついててぎゅーぎゅー締め付けてくるしでぐったり。今、私はゾンビにかじられて仲間を待っている、などの設定でやり過ごす。
看護師さんが数時間おきにチェックしに来てくれるんだけど、病院の売店で買った紙おむつがどう考えてもピッチピチで。
「あの・・・紙おむつサイズ小さくないですか?」と声をかけるとふふっと笑って「これ小さいおばあちゃん用のサイズかもね〜、あ、手術の時のパンツお返ししますね~!」
クッ…具合悪いのに、看護師さんが変わるたびに、ちょっと紙おむつ小さいですよね〜と照れ笑いで言い訳する余計な仕事増えてるし。
翌日にはいろんな管も抜け、根性見せてうりゃー!と立ち上がり、今年ナンバーワン回復力!と褒められ、やっとパンツの件を挽回する私。

いやしかし、婦人科病棟、女の人生詰まってた。
妊娠出産と婦人病だけの病棟だと思ってたんだけど、コロナ対応なのか、入院している全婦人がこの病棟に集結。
とくに、ばあさん軍団がすごかった。
最初の晩から助けてくれ~!と救援を求め続けたイズミさん(仮)が、
「お米屋さ~ん!朝からなにも食べてません~!お米と卵持ってきて~!」
と叫べば、
「何言ってんだい!そんなもんいないよ!ここはアパートだよ!」
と、べらんめぇな江戸っ子のタケダさん(仮)がそれに答える。
いや、アパートでもないし病院だし!
ドリフのコントか!
あと、忘れちゃいけないのが足腰のやたら強いサカタさん(仮)
この方は、車いすってことを忘れて出歩いて他のお部屋に入ったりしちゃう。夜トイレに行ったら、看護師さんたちが右往左往しながら、「おばあさん見ませんでした!?」と個室のドアを端から開けて確認してるわけ。いやー、もう自分のベッド戻ってばあさん寝てたらどうしようかと思ってドキドキしたよね~。
しばらくお隣のベッドにいたタチバナさん(仮)は、ごめんなさいね、ごめんなさいね、とずーっと謝ってる。申し訳ないからとナースコールで呼ばず、自分でトイレに行こうとして、看護師さんに怒られているのが切ない・・・。
21:00の消灯が過ぎても、女の人生劇場の幕は下りず、めそめそ泣いてるタチバナさん(仮)、タバコを吸わせろと騒ぐべらんめぇタケダさん(仮)、あれほど助けてくれ~誰か~!と叫び続けたのに、今はご機嫌で美空ひばりを歌っているイズミさん(仮)、歩き回ってもう車椅子の意味がわからないサカタさん(笑)
カオス!笑笑!
廊下に出れば、
産まれたばかりのベビーをコットに乗せ、ゆらゆら歩くママはいつか来た道。
心の中で特大エールを送る。
ばあさん軍団はいつか行く道。
道のちょうど真ん中に立って私はどの道を行くのかな。
できれば、ボケてもかわいいばあさんで、あまり迷惑かけずに推しの動画見てニコニコしていたい。文句言う前に、ありがとうと言えるばあさんになりたい、と思ったり。

さて、肝心の卵巣のう腫、
入院中の診察で、
「腸とがっちり癒着しちゃってたので、はがすのにちょっと時間がかかりました。しかも、たぶん、これ一回破裂してたね~、痛かったでしょう?よく我慢しましたね~。」
と。
な、なぬ!?
どうりで・・・痛かったはずだよ・・・
救急車呼んでも良かったらしいよ、我ながら痛みに強いな。
写真見せてもらいましたが、いやー、なんかよくぞここまで大きくなったな、という仕上がりっぷり。これをどうやってあの小さい穴から出したんだろうか?医学の進歩ってすごい。
そして病理検査の結果、悪性でなくてホッ。
と思ったら、
「なおこさんの年齢なら分かると思いますが、のう腫のうちのひとつ、ピノコでした!」
と。
あっちょんぶりけ!
ピノコとは皮様のう腫のことで、説明にはこう書いてある。
「のう腫の中に、髪の毛、歯、骨、皮膚などが含まれる。卵巣の中にある何十万個という卵子の元が、受精していないのに、何かしらの刺激で勝手に分裂を始め、その結果、人体のいろいろな部分を作ってしまう。」
手塚治虫の名作ブラックジャックで、のう腫の中のパーツを組み立ててピノコという女の子を誕生させた有名なエピソードがあるのです。
私の3つあった卵巣のう腫のうち1コが、この皮様のう腫と呼ばれるタイプのもので、中に髪の毛とか骨とか汗腺とか大脳組織とか、そういうパーツが入ってました。
ひょーー!人体すげー!不思議!
何らかの刺激・・・まぁたぶんKーPOPのイケメンたちだな、とは思ってる。
なかなか子どもができなかった時に、藤原竜也(当時の推し)の握手会に行ったら妊娠したという前科があるから、私。
イケメン見過ぎて、私の卵巣、勝手に人体作ってた。
更年期のトキメキは命がけ、っていう先輩の言葉が今さら身にしみるぜ!

そんなわけで術後2ヶ月半経ったわけですが、腹腔鏡手術で、7~8ミリの穴が3つとヘソをチョッキンした傷跡は、もうまったく何事もなかったかのように更地。
ヘソなんていじるな危険って言われて育ってきているので、ヘソをチョッキンしますよ、って言われたときには生理的にゾワッとした。
ヘソってなんかくちゅくちゅってなってるじゃないですか。なので適当に縫った(訳ではないと思うけど)、ミッフィーの口みたいなバッテンに縫われててちょっと笑った。
お腹もちょっとだけ平らになった。
そして手術して一番良かったのが、ここ何年か苦しめられていた偏頭痛がなくなったこと。

薬でなんとかやりすごしてはいたものの、生理前や低気圧、空腹になると、ズンズン痛みがやってくる。気分まで落ち込んでしまうしで。
365日ほぼ不調、いつも偏頭痛が来たらどうしよう、とヒヤヒヤしていた。
女性ホルモンの分泌が不安定になり、多くなったり少なくなったりと乱高下を繰り返してゆらぎながら閉経へ向かう約10年が更年期で、そのせいでいろんな不調が起こるわけだけれども、それが今回、両方とも全部卵巣を取っちゃったことで、女性ホルモンが出なくなり、つまりは更年期にトドメを刺した。
今のところ、急に老け込んだり、髪がバッサバサになったり、骨がスッカスカになったりはしていない、と思う。いや、頭痛なくなってやる気出てむしろ元気。そろそろホルモン補充も再開してできるだけこの好調をキープしたい。
プレ更年期~更年期と、ほんと人それぞれで、ホットフラッシュでフーフー言ってる友だちもいれば、イライラがひどくて、という子もいるし、まったく感じないって人も。
特にこの年代は家族のことだの仕事だので、自分のことが後回しになりがちなので、あれー、なんか変だな?と思ったら我慢しないで婦人科にぜひ行って欲しい。
そんでもって、生理終わっても女は終わらない。
面倒だけど面白い、むしろ濃いい女の劇場第二幕。
一足先に更年期のこっち側で、イケメンを追いながら、みなさんのお越しをお待ちしています!

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