初めて踏んだ靴底の草花は
子どもの世界を広げた
壊れた玩具を修理してもらった
それまでは自分以外の壊れるものが
あるとは知らなかった

新作を待っていた作家の訃報
貴方が思い出になってしまう
自分以外壊れなければいいのに
野原の小さな白い花が
新しく悲しい意味を持つ
ひなたの野原なのにとても静かで
子どもの頃苦手だったハーモニカを
吹き荒ぶ
桑田佳祐の『月』を真似て

近くはないから涙は出ないだろう
貴方を慎む人は多くいるだろう

壊れた玩具を修理して
手繰り再生を祈れば
成層圏に光がひとすじ
目を伏せれば更にひとすじ
寂しくて野原に立つだろう
こうして貴方を想うだろう

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