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48 バレーボール【乞食】

王様の命令により髪の毛が0.5㎜になったことでさらに童貞卒業から遠ざかり、ひたすらに1回生の仕事をこなしていると、毎年夏に有志でビーチバレーの大会に出場するイベントが迫ってきた。

1回生同志のペアで出るのも可能だが、1回生ペアは調子に乗っていると思われるので暗黙の了解で基本的には出場しない。だが、例外もあって上級生から声をかけられて出るということが稀にある。センスのある1回生が誘われることが多いのだが、普段怖い上級生に囲まれてビーチバレーをするということになるので別にやりたいというものでも無い。
なので7月末からはセンスのある1回生を上級生がビーチバレーのペアにスカウトするラブマゲドンならぬゴミマゲドンが始まる。

1回生からは1人選ばれた。3回生とのペアだった。

残りの1回生は何をするかというと、ペアの補助役員である。万が一ペアが怪我をした時の代役だったり、練習に付き合ったりする言わば雑用だ。ペアは毎年各大学から6組くらい出場する。

私はその3回生と1回生ペアの補助役員になった。

まずは兵庫県の大倉海岸で関西での予選を勝ち抜いて全国大会に行くのだが、なんと私が補助についたペアは大健闘し関西でベスト8まであがり全国大会の切符を掴んだ。

全国大会は神奈川の川﨑マリエンで行われるのだが、ほとんどなにもしないのにちゃっかり補助役員も神奈川まで付いて行く。軽い神奈川旅行の感覚でちょっと楽しもうかなと思ったのだが自分が頭が五厘であることを思い出し楽観的な考えは速攻捨て去った。

8月中旬の神奈川での全国大会は2回戦で敗退してしまった。3回生の先輩は実家が静岡だったため実家に帰るとのこと。

残った私と同級生は翌日も大阪で練習があったため、すぐ帰ることに。

だが、1回生の2月まではバイトが禁止という不可解なルールがあり、あまり金銭的余裕がない状況の私たちは時間はかかるが「青春18きっぷ」で帰る方が安いという答えを導き出し、作戦を決行した。川崎を出発した時点で昼は過ぎており、大阪までギリギリ到着という予定だった。

ゆっくりとしかし確実に鈍行で順調に大阪に向かっていた私たちは気が緩んだのか、22時頃に三重県のどこかで乗り換えに間に合わず、大幅なタイムロスを食らってしまい何回調べても大阪に帰る電車が見つからなかった。

一旦駅を離れるしか選択肢が無く、周りを見渡すがマジでネカフェもカラオケもなにもない所で、私たちは10分ほど歩いたが、第一村人発見することなく公園しか見つけられなかったので仕方なく滑り台で寝ころがって始発を待つことにした。


真っ暗闇の夜中だったため不審者と誤解されることは無かったが、もし明るい時間帯にこの状況を見られた暁には通りすがりの親子から
娘「ママなにあれ?」からの母「見ちゃダメ」最強コンボがクリティカルヒットすることは確実だった。


そもそも五厘の坊主が2人、宿が見つからず三重県の田舎の公園で寝てるという事実に頭が追い付かず本当に日本の18歳の大学生か自分?と自問自答しているといつの間にか寝てしまい、気づけば4時になっていたのでそのまま始発で帰って何事もなく10時からの練習に参加した。


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