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【2020年度改訂版】バリスタチャンピオンシップに挑戦してほしい6つの理由

今回は世界最大のバリスタ競技会、World Barista Championshipと、その日本予選、Japan Barista Championshipについて話したいと思います。

Japan Barista Championship について
http://scaj.org/activity/competitions/jbc/jbc-overview

World Barista Championship について
https://worldbaristachampionship.org/

Wiki
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%90%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BB%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%94%E3%82%AA%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%83%E3%83%97

読者の中にはご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、私はこの大会に出場するバリスタをトレーニングすることを生業の1つとしており、そこに大きな労力を費やしています。
 ◯私の大会コーチ実績
 https://actcoffeeplanning.com/profile.html
2004年よりこの大会に関わり、今まで10回、日本チャンピオンの世界大会コーチとして海外へ行きました。私の今までのコーヒー人生は、ほぼこの大会と共にあった、といっても過言ではありません。
では、私がここまでこの大会に大きな労力を賭け、やり続けるのはなぜなのか。そこには強く明確な理由があります。それは、バリスタが成長させるためにJBC競技会ほど適した大会は存在しないと考えているからです。
今日はその理由はなんなのか、ということを皆様にご説明したいと思います。そしてその理由を聞いて、皆様が少しでもこの競技会に興味を持ち、大会出場を検討したり、周囲のバリスタに競技会出場を提案したいと思ってくれたら、嬉しく思います。

-JBCに挑戦すべき6つの理由-

(1)ジャッジから客観的な評価を得られる
(2)コーヒーを深く知り、深く学べる
(3)短期間で技術レベルが向上する
(4)プレゼン能力が上がる
(5)最先端のコーヒーを知ることができる
(6)新しいネットワークが広がる

(1)ジャッジから客観的な評価を得られる
バリスタを競技を審査するために、大会では1名の競技に最小7名のジャッジを配置します。提供されたコーヒーの味や外観、バリスタの話すプレゼン内容を見る”センサリージャッジ”が4名。
バリスタの抽出技術や、動きなどを見る”テクニカルジャッジ”が2名。そして審査員長的な役割を果たし、競技全体の運営管理をおこなうヘッドジャッジが1名です。
このジャッジは誰でもなれるわけではなく、厳格な試験を経て登用されています。エスプレッソや、エスプレッソ入りのミルクビバレッジをテイスティングして、その味わいを評価する味覚試験や、自分でエスプレッソを抽出する実技試験、そしてスコアシートの書き方や、ジャッジの考え方、立ち振る舞いなどを明文化したルール&レギュレーションの理解度を確認する筆記試験などもあり、しっかりとそれ用の勉強をしないと通過できない厳しい内容になっています。
私自身も審査員をしていた経験がありますが、この審査員とはなかなかハードな仕事です。液量が少ないエスプレッソはカッピングのように何度も飲むことができないため、1回のテイスティングに全神経を集中し、フレーバーや味のバランス、エスプレッソの触感や後味など細部まで素早く確認する必要があります。しかし、そうもゆっくりとは審査できません。バリスタがプレゼンで言葉を発すると、それを聞き逃すことは許されません。つまりテイストジャッジとは、少ないテイスティングで全ての味覚項目を審査しながら、バリスタの言葉や行動をあますことなく把握し、なおかつ少しの粗相も許されず15分を集中して過ごす必要に迫られます。
こういったプロフェッショナルジャッジは、バリスタを観察し、判断し、スコア付けするためだけにそこに存在しており、そういう人間がバリスタ1名につき7人もいて、競技が終わるとバリスタに7名全員のスコアシートとなって、大量のフィードバックをくれるのです。普段店舗などで働いていると、上司や先輩以外から指導を受ける機会というのはなかなかありません。このフィードバックこそ、バリスタ競技会に出場する価値のある1番大きな教育的価値といっても過言ではないでしょう。
審査基準はルール場明確になっており、ジャッジは事前にすり合わせをおこないますが、評価がバラつくこともあります。
バリスタは1カテゴリのドリンクを4杯提供しなければいけませんが、技術に一貫性がないと4杯の品質は全て同じように高いまま提供することは難しいからです。
1名のヘッドジャッジがいることも大変大きな意味があります。
1人の責任者が4名のジャッジを監視し、審査に一貫性を持たせるのです。ルールが明確に開示されており、複数名で審査することで大きなブレを無くしていく。これほど公平な審査はありません。
そして何よりバリスタから見れば自分が美味しいと思っているものに対して、「複数の、自分とは違う経験や環境を持つコーヒーのプロが、自分の自信のあるコーヒーをどう判断したか」という客観的評価を得られることは、他では得られない機会です。
仮に、出場者160人の中で、あなたのコーヒーは100番目だったとしましょう。大いに納得できずに憤慨していたとしても、審査員にとって、あなたのコーヒーは相対的に100番目だったということは事実なのです。それより美味しい人が99人居ただけのことなのです。しかも一人の偏見ではなく、審査員チームの総意としてです。何がいけなかったのか、何を見直すべきなのか、そのヒントの一部がスコアシートには隠されています。悔しさだけで終わらせることなく、それを改善していくことが次の大きな一歩に繋がるのです。


(2)コーヒーを深く知り、深く学べる
この競技会で特に重要な要素は「美味しいエスプレッソを抽出できる」ということ。そして、「使うコーヒーについて深く理解し、それをプレゼンテーションする」ということです。
美味しいエスプレッソを抽出するにも、それをしっかりプレゼンするにも、使用するコーヒーについて深く知り、しっかりと理解することが必要不可欠です。
考えてもみてください。審査員の中には、バリスタの皆さんよりもはるかに長いコーヒー経験を持っている方が複数名います。ベテランバリスタだけでなく、グリーンバイヤーであったり、ロースターであったりして、よりコーヒーについての知識が豊富な方も多いでしょう。
例えばバリスタが、「この豊かな酸味は、この土地特有の寒暖差が生み出しています」と言ったとします。審査員はそれを聞いて考えるのです。その酸が本当に寒暖差から来ているのか、そもそもその土地特有のものなのか、もっと言えば、それはそんなに特筆すべき酸味だと感じたのか。こんな一言のプレゼンにも、経験豊富な審査員からすると、気にかかる点に溢れているのです。この一言を言うために必要な裏付け、周辺環境や農園のこと、そしてそれが上手く焙煎され、抽出で出せているのか。こういったあらゆることを学び知ることが、競技会では欠かすことができないのです。
だからこそ競技会に出ると、そのコーヒーを深く学び、調べ、知ることが必要になります。それにより一段とそのコーヒーに詳しくなるのです。
コーヒーを最高の状態で抽出したいと願うなら、まずはそのコーヒーを深く知らないといけません。深く知るためには、より長い時間をかけ、しっかりと掘り下げて学ぶ必要があります。つまり大会に出場して結果を残すためには、競技で使用するそコーヒーを何時間もかけてしっかりと掘り下げ、学ぶことになり、普段の営業ではなかなか出来ない学びの経験であり、これがバリスタにとって大きな力となるのです。


この(1)(2)は競技に出るべき最も重要な意味であり、私が全てのバリスタに参加を呼びかける理由です。
客観的な評価を受けることも、自社以外のコーヒーを広い視野で学習することも、大事なことだとわかっていても、仕事が忙しいとついつい疎かになってしまいます。自分の所属するお店や会社以外でも通用するバリスタとなるためにも、この(1)(2)の効果は非常に大切なことなのです。

次回では、中盤の2章
(3)短期間で技術レベルが向上する
(4)プレゼン能力が上がる
そして、次々回では後半の2章
(5)最先端のコーヒーを知ることができる
(6)新しいネットワークが広がる
について説明していきます。

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