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護られなかった者たちへを読んで

読んだ本の内容は即座に消えていって
読後の余韻だけが残るタイプやから、
読書感想文はめっちゃ苦手やけど、
この本は、今後生きていく中で心にとめとかんとあかんなって思う事が多すぎたし、みんな一回は読んでほしいなって思ったからとりあえず書いてみる。
ネタバレを含むかもしれないので、要注意です。
大前提、ミステリーとして死ぬほどおもろいので、
ネタバレしたら大変なことになる笑
以下の感想はミステリー絡みのこと以外を書くつもりです。



こんだけ最初に書いてればたぶんネタバレは回避できてるやろ。
あとは自己責任で。

まず、随所に社会課題がたくさんちりばめられていて、それがこの話の鍵にもなっている。
一番大きな話で言うと、生活保護に関する問題。
福祉にほんのちょっと足を踏み入れているだけの私でもわかる、
福祉へのお金の少なさ。それによって護られるべき人が護られていない現実。社会的弱者に対する色眼鏡。
金持ちにはどんどん金が入り、
貧しい人は貧困の連鎖に巻き込まれる。
この理不尽さをまっすぐに捉えている。
主要人物である利根は、どこにでもいる、優しく、真面目な人間のように見える。
しかし、ちょっとしたトラブルで前科がついてからは、
働き口も無く、とても恵まれているとは言えない状況で暮らしていた。
つまり、どんな人でも、少しの失敗が命取りになる可能性がある。
にもかかわらず、理不尽がはびこっている。
このやるせなさが心に残った。
この話に出てくる、善人に見える人はかなりの悪を持っていて、
悪人に見える人は周りから理解されがたいが、善を持っている。
所詮、人間の印象なんてほとんど色眼鏡越しに見た景色なんやろな。

もう1つ大きな軸としては、舞台が東北である、ということ。
言うまでもなく、震災の影響が色濃く残っている。
震災を経験したことのない私は、
「震災の影響」というと、無意識に、物的なものをイメージしていた。
当然、大切な人を亡くした人が数えきれないほどいることは
百も承知だが、どうしても、モノが再建されてくると、
人々の心まで立ち直ったように感じてしまう。
でも、それは違うんだ、と、
この本は、直接そんなことは言わないけれども、
心に訴えてくる。
生活保護を受けられず、大切な人を亡くした利根と、
天災によって大切な人を亡くした笘篠。
はたから見ると全然違うように見えるが、
護るべき者を護り損ねた無念さは同じなのだという描写は
とても印象に残った。

大きくこの2点が書き残したいことやな。
他にもいろんな問題が含まれていたけど、
総じて、人の先入観だったり慣習だったりがいかに恐ろしいものなのかを思い知らせてくる内容だった。
今は、色眼鏡で見ないように心がけよう、で済んでしまうけど、
働いて、組織の中に入った時に、
もう一度これを読んでどう思うか。
これがぶっ刺さって、罪悪感を感じてしまう、
なんてことになってないことを祈るばかり…

ほな、また。

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