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シュレディンガーの生命観

生命は様々な点で不思議な存在であるが、ミクロなレベルでも謎が多い。

例えば、小さな遺伝子の収納スペースから遺伝の不確かさを古典(物理学)的に見積もると、実際に生物が達成している不確かさよりもはるかに大きくなる。
ヒトでは約10 umの核に30億塩基対のゲノムが格納されているが、複製の際に起きるエラーは10^10塩基に1つの割合である。
この非常に高い複製精度は様々な修復機構や動力学的校正機構などにより説明されると考えられるが、それらとは根本的に異なる機構が働いている可能性がある。

量子力学の基礎を築いたことで知られるシュレディンガーが記した『生命とは何か』においては、以下のような仮説が提唱されている。
遺伝の法則は古典的な「無秩序から秩序へ」という法則(熱力学など)ではなく、「秩序から秩序へ」という新しい原理(量子力学)に基づいているのではないか?
生命を生命たらしめているのは、一般にミクロな系にしか適用できない量子力学のマクロな系への作用ではないか?

70年以上前のまだ遺伝情報をどの分子が担うか分かっていなかった時代に、このような予測を行っているというのは先見の明がある。(シュレディンガーは遺伝情報をタンパク質が担うと考えていたようだ)
現代でも、一部渡り鳥の地磁気を利用した目的地へのナビゲーションに量子力学的効果が働いているといわれ、量子生物学という分野が提唱されているものの、どの程度量子力学的効果が生命現象に寄与しているかはほとんど謎のままで、これからの解明が待たれる領域である。

参考文献

量子力学の基礎を築いたシュレディンガー氏が記した「生命とは何か」を紹介。遺伝の法則は古典的な「無秩序から秩序へ」という法則ではなく「量子力学」に基づいているという。生命を生命たらしめているのは、量子力学のマクロな系への作用ではないかと推測。

ELYZA DIGESTを用いて要約
サムネイル画像はとりんさまAI(@trinsama)により生成