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赤の女王仮説:化石記録との整合性

生物学屈指のオシャレ用語である「赤の女王仮説」は、生物が絶えず変化する環境に適応し続けるために進化を続ける必要があることを主張している。ルイス・キャロルの『鏡の国のアリス』に登場する赤の女王の「ここでは、同じ場所にとどまるためには全力で走り続けなければならない」という台詞から名づけられた。

背景には進化の軍拡競争的側面があり、生物は捕食者、寄生者、病原体、競合種などと常に相互作用しており、生き残るためにはこれらの敵を上回るよう適応する必要がある。
では、赤の女王仮説は実際に生物の進化・絶滅のパターンを予測できるのだろうか?


赤の女王仮説と化石記録の矛盾

赤の女王仮説は、軍拡競争による絶滅のリスクが常に存在することを予測し、ある1つの分類群が絶滅する確率がその分類群の存在期間と無関係であるとする「絶滅率一定の法則」を示唆する。

一方で、化石記録から、分類群はその出現から絶滅までの間に、集団サイズ、または環境内での占有率の増減が規則的なパターンを示すことが知られている。これは、分類群の年齢と絶滅確率が無関係であるとする絶滅率一定の法則とは相容れないように思える。

2017年に発表された論文は、環境要因の生物学的プロセスと非生物学的プロセスが異なるスケールで作用するためにこのような矛盾が起きていると指摘した。赤の女王仮説は主に生物学的な相互作用に関する仮説である。非生物学的要因が大きく影響する絶滅そのものではなく、主に生物学的な要因により起こる分類群のサイズのピークに注目すると、その時期はランダムに訪れることが示され、矛盾を解決することができた。つまり、特定の分類群のサイズが拡大から縮小に転じるタイミングはランダムだが、一度減少傾向に転じると絶滅まで予測可能な軌跡をたどるということのようだ。

赤の女王が示唆するもの

一般に生物学の理論を実社会にまで拡張してしまうのは危険だが、この赤の女王仮説は、資本主義、または一般的な競争においても示唆に富む。一度成功するとその手法に固執したくなるが、現状維持をするためにはリスクをとることを恐れず新しいことにチャレンジし続けなければならないのだろう。

参考文献

Reconciling taxon senescence with the Red Queen’s hypothesis | Nature

赤の女王仮説は、生物が常に変化する環境に適応し続けるために進化しなければならないという理論で、進化の軍拡競争の側面がある。化石記録との矛盾は、生物学的相互作用と非生物学的要因が異なるスケールで作用するために生じるが、分類群のサイズのピークに注目すると矛盾が解決される。赤の女王仮説は、資本主義や一般的な競争にも示唆を与え、成功を維持するためには新しい挑戦が必要であることを示唆している。

ChatGPTを用いて要約
サムネイル画像はDALL-Eにより生成