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『風の谷のナウシカ』ー腐海の背後にある生物学ー

本記事は『風の谷のナウシカ』の映画、漫画のネタばれを含むので注意。

風の谷のナウシカと腐海

風の谷のナウシカに出てくる重要なキーワードの一つに『腐海』がある。
腐海は有毒物質である瘴気をまき散らし、吸うと人間は死に至る。
これだけでは腐海がただ汚れた場所のように思えるが、原作のナウシカの以下の発言から、腐海はそのような単純な環境ではないことが分かる。

「きれいな水と土では腐海の木々も毒を出さないと分かったの」
「腐海の木々は人間が汚したこの世界をきれいにするために生まれてきたの」

つまり、ナウシカたち人間は自分たちの住む世界をきれいな環境と思い、腐海が汚れているから有毒であると考えていたが、実はナウシカの住む世界が汚染されていて、ヒトはその環境に適応したために元の「清浄」な世界に生きられなくなってしまったというのだ。

生命と酸素

このような生存環境に適応するよう進化した生命というのは極めて自然な設定であり、例えば生命と酸素の関係があげられる。
27億年以上前、地球の酸素濃度は現在の10万分の1以下と低く、化学的に反応性の高い酸素は多くの生物にとって有害であった。今でも嫌気性細菌の多くは酸素濃度の高い環境で生きられない。しかし、約25億年前からシアノバクテリアなどの光合成生物が誕生し、二酸化酸素を固定して酸素を放出したため、地球の酸素濃度が上がった。この環境で、多くの生物は絶滅したと考えられるが、酸素の反応性を逆に利用してエネルギーを産生する好気性細菌と細胞内共生するようになった真核生物が誕生し、繫栄した。私たち人類ももちろん真核生物で酸素からエネルギーを得ているため、植物を植えて酸素濃度を上げることを空気の浄化のように感じ、化石燃料を燃やして酸素濃度を下げることを空気の汚染のように感じてしまう。しかし、これは現在の人類目線の話であって、嫌気性細菌にとってはそうでない。つまり、絶対的なきれい、汚いという状況があるわけでなく、その生物の適応度にプラスの要因とマイナスの要因があるのみである。

普段あまり気づかない世界の捉え方を、フィクションを通して見せてくれる作品であった。
多くの場面は難解すぎてわからないが…

参考文献

映画『風の谷のナウシカ』語られなかった世界の真実・原作ナウシカを徹底考察 | 動画配信サービス情報ならエンタミート (dream.jp)
酸素で見る地球の成り立ちの物語 | 東京大学 (u-tokyo.ac.jp)
真核生物 - Wikipedia

「風の谷のナウシカ」の世界には「腐海」という有毒物質があるが、それは本来の世界が汚染されてしまった結果である。生命は環境に適応するために進化し、例えば酸素という高反応性の物質も、生命にとっては有害なものからエネルギー源として利用できるものになった。人間が「汚染」と感じることも、他の生物にとっては適応している状況かもしれない。

ChatGPTを用いて要約
サムネイル画像はとりんさまAI(@trinsama)により生成