見出し画像

蓬莱学園の復刊とラノベ図書館04 ライトノベルの二次文庫を出すにはどうする?

「蓬莱学園」シリーズを復刊させることになったはいいが、どのように復刊する? そもそもライトノベルでは、名作であっても二次文庫って成立するの?

「蓬莱学園の冒険!」30周年をやりたかっただけなのに、NPOを成立させて色々と事業計画も建てなければならなくなった中津。今度は事業計画として「蓬莱学園」の小説シリーズを復刊させることになってしまいました。

さてここでちょっと出版業界的に「復刊」と「二次文庫」について説明していきましょう。刊行された書籍が時間が立って売れ行きが鈍ると、在庫を抱えたくない出版社は、書籍の在庫を断裁し、新たに重版を作るのを停止します。これが要するに「重版未定」という状況ですね。最近ではほぼこれが「絶版」に相当します。電子書籍というあらたな流通形態が出てきたことにより、紙では購入できなくても電子書籍の形態であれば買えるようになって、本来的な意味での絶版というのも少なくなってきました。

しかしすべての書籍が電子化されるわけではありません。特に端境期にあった書籍では電子版がないけれども、紙の重版は未定という状態に陥ってしまうものも少なくありません。「蓬莱学園」シリーズもまさにそういう状態に陥ってしまいました。

その際に例えば、従来の出版社から「新装版」として出ることもあれば、版元を移して他社から刊行されることもあります。TOブックスから刊行された『魔術士オーフェンはぐれ旅』などがその成功例と言えるでしょう。こうしたものを含めて、「二次文庫」という言い方をしますね。新たに書店に並ぶことは、それ自体が宣伝になりますから、二次文庫になってから売れ行きに火がついたという状況もよくあったりします。

TOブックス刊行『新装版 魔術士オーフェンはぐれ旅』

しかしここで問題になるのが、ライトノベルというジャンルの傾向です。「書き下ろし文庫」として書かれたライトノベルは、良い意味でも「読み捨て」という傾向が強いのは否めません。例えばスニーカー文庫という名称も、元々は『スニーカーのように履き替えられる、読み捨てして軽やかに読める文庫』という意味が付与されていたとも言われています。また読者の入れ替わりも激しいので、果たして旧作を新規読者が汲み取って読んでくれるのかということについても、市場規模があるかどうか分からなかったりします。

また二次文庫を作るに当たり、イラストをどうするのかというのも大きな問題です。二次文庫には買い替え需要というのも無視できないのですが、ライトノベルではイラストと文章との一体化の傾向も強く、あたらイラストを新しくすることが良いこととも言えなかったります。もちろん、時代に合わせて新規読者を獲得するために新しくすることで成功した書籍も多いのですが、なまじヒットした作品だとそれも考えものです。

二次文庫として成功した作品がないわけではありません。有名なところといえば「涼宮ハルヒの憂鬱」が、スニーカー文庫以外に、角川文庫とつばさ文庫からも刊行されました。角川文庫の方はもう書店の棚に並んでいる感じはしませんが、つばさ文庫の方は今でも名作として読みつがれている感じでしょうか。

角川文庫版「涼宮ハルヒの憂鬱」

また名作の復刊という意味では、電撃文庫の高畑京一郎さんのタイムリープが新装版として出されたのも記憶に新しいですね。

新装版タイムリープ

当初は、「蓬莱学園」シリーズの復刊に興味を示してくれた出版社もあったのですが、NPOを作ったり版権を整理したりという予想外の手間が数年単位でかかったことで、編集者の異動もあり、興味を示してくれる出版社も少なくなってきました。今から考えると、ライトノベルの名作がなかなか読みにくいというのをいち早く体験することになったとも言えます。

ここで色々と行き詰まってしまったというのが、2022年ぐらいの現状でした。今回の企画、本当にコロナとNPO作って欲しいという要望に振り回されているのです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?