父記録 2013/6/20【ゼロゼロ】

晴れ。
今日から大部屋。福太、下痢嘔吐。
なんだか、短くてつまんないわね
ゆったりとした、たまに手持ち無沙汰な2時間が、せわしない30分になった。

6/20
父の胸がゼロゼロ鳴っている。呼吸が荒い。
「んー…ゼロゼロ…ん〜ゼロゼロ…」
「お父さーん」
「…ゼロゼロ」
「お父さーん」
「ん〜…ゼロゼロ…」
「おとうさーん、明日から大部屋に移動になるよ。面会時間は30分になっちゃうけどね、毎日来るから大丈夫だよ〜」
「…ゼロゼロ…ゲホゲホ」
「お父さん、ゲホーって咳したら痰出るよ、ゲホーってして?してみて?」
「ゼロゼロ」
「『無理言うなよ〜生きてるだけで精一杯なんだぞ〜』って言ってるわよ」
母が笑った。

担当のO先生がやってきた。
「昨日高熱が出て、脱水も見られました。血液の培養検査でブドウ球菌が生えてきたと先程連絡があって、敗血症の状態です。
今は抗菌剤を入れつつ、痰を取りつつ、様子を見ている…という感じです。
肺炎の状態も…レントゲンを撮ると真っ白ではないものの、やはりぼんやりと白くなっていて。繰り返している肺炎なので…」
「苦しい…んですよねやっぱり」
私が尋ねると母が
「…楽ではなさそうよね。」
と神妙な顔で言った。
「ちょっと、苦しそうですねえ…吸引しましょうね」
「お父さーん、吸引しようね、ちょっと苦しいけど吸引したら楽になるからね」
ギュルギュルギュルギュル…ギュルギュル…
「お父さん、がんばれがんばれ」
ギュルギュルギュルギュル…ギュルギュル…
「村田さ〜ん、取れましたよ〜、ありがとうございました!」
看護師さんが父の耳元で言った。
「ゼロゼロ…」
ややマシにはなったものの、まだ痰が絡んでいるようだ。
「気管の下の方にあるとどうしてもうまく吸えないんですよねえ…」
看護師さんが残念そうに言った。
母「何分経った?」
私「あと10分で二時間。」
母「帰んなきゃならないから、帰るね。」
父「ゼロゼロ…」
父の胸は小さく鳴っていた。

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