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病棟で迎えるお正月が1番の想い出。

難病と共に過ごして30年以上。年末年始を病気の発作なく過ごせた年はほとんどない。不思議なものでなぜか毎年年末か、年始か、はたまたまたがってずっとか。具合が悪くなって入院先の病棟で正月を迎えることの方が多かった。

そんな自分にとって憧れだった自宅でのお正月。

それはきっと温かくて楽しくて、お年玉があって家族団らんがあって。とても特別でいいものだと思っていたあの頃。初めて正月を入院せず実家で過ごせたあの日、そんな妄想は半日でぶっ飛んだ。

病院の正月の方がいいかもな(苦笑)

年末の大掃除でくたびれているんだろう。家族はいつもより朝ゆっくり起きて、おせち料理が朝昼晩と量を減らしながらも出てくる。お雑煮は美味しい。でもなんといっても、

「やることがない!」

テレビはつまらない特番しかなく、誰か友達が遊びに来るわけでもなければ、買い物に行く元気があるわけでもない。そんな自分にはあの正月の実家時間は何の特別でもなく「なあんだ」と思わず笑ってしまった。強いて言えば、窓がやたらとピカピカに磨いてあるので、思わずそのまま開けずに庭に出ようとしてしまう危険があるということかな笑。

あんなにずっと憧れていたはずのお正月。

病棟で迎えるお正月は普段の病棟とは違ってほんの少しだけ特別感がある。病院食に年末はお蕎麦が出たり、消灯時間がいつもより延長されて紅白を見てよかったりした。元旦はお吸い物やちょっとお雑煮らしきモノやちらし寿司が出ることもあって食事が届くと思わず、わぁっとなる。これも普段が普段だけに?喜びを感じるといったところかな。

子供の頃は母が病院に年賀状を届けに見舞いに来てくれて。それが届くのがとても楽しみだった。祖母の家などに行けることはなかったので、お年玉はなかったけれど、父がお参りの帰りに買ってくるおみくじも楽しみの一つで、病室で今年はどうだのなんだの言いながら見ていた。

病棟によりけりだけど、長い入院生活の多い小児科病棟などでは年末年始だけでもほんの少し外泊を、、という子も多く案外ベッドが空いていて。思い切り各ベッドのカーテンを開けて広々とした空間を楽しんでみたり、病院自体も外来がないためいつもは人でいっぱいの大学病院も、お会計の場所に網ネットがかかっていたり。そんな景色を割と新鮮に感じていた気がする。

静かだけど、小さなことが嬉しくてよかったなぁ。なんとなく看護師さんとかも優しかった気がするし笑。

病気ではなかったのは生れてから8歳までの8年しかない。それもあまり記憶にない時期だし。だから私にとっての正月の想い出と言えば、やっぱり病棟で迎えるお正月。最近は入院することはなくなったけど。でもやっぱり年末年始を完全に無事で制覇できた年ってないなぁ。

だから最近は年末年始という生活をあえてしないようにしている。そうすればただの1日が過ぎ、翌日に変わるだけ。幸いおせちが好きではない夫と2人の生活になった分、たまの連休のごとく過ごす。

もっと長生きしたら、この想い出の病棟のお正月も、人生のほんの1部になるのかもしれない。でも案外楽しい思い出だから、まぁいっか。

今日も(今年も)また1日が過ぎ、明日が来るだけ。毎日を生きて、生き抜いた先に振り返ったら良い思い出ばかりになっていることを願いつつ。

2021年 元旦  



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