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ブックレビュー 【利己的な遺伝子】

リチャード・ドーキンス(1941~)
原題 『The Selfish Gene』

1976年に発表された進化生物学を扱った現代の古典とも言える作品。
邦題の『利己的な遺伝子』という言葉は聞いたことがある人も多いだろう。

かくゆう私もこのタイトルと、
有名な、「生物は遺伝子によって利用される"乗り物"に過ぎない」
というセリフに惹かれて購入した。

「利己的な」というのはドーキンスの比喩表現だが、このタイトルがこの本を有名にしたといってもいい。
昨今のSNSも、まずタイトルやサムネで引きつけるという手法が有力だが、
しかしこれによって誤解を与えた部分も大きい。

誤解と言われるいくつかのものとして、
利己的遺伝子が
1.遺伝決定論と捉えられる誤解。
2.生物個体の振る舞いが常に利己的だと主張しているという誤解。
3.遺伝子だけが価値ある物で、生物個体は無価値だと主張している誤解。

などがあり、私もその言葉のイメージだけでは似たような内容だと思っていた。
たしかに遺伝子の機械といった表現や、個体は生存機械といった言葉は強烈で、そう捉えることもできる文章だった。

しかし本書を有名にした所以はこの比喩表現であったと思える。
さらに『ミーム』という概念を用いり、文化や思想も遺伝子のように拡散するという主張もあった。
正直完全には理解できなかったところだが、新しい言葉まで作ったり、たくさんの比喩表現で伝えようとする姿勢は科学者らしからぬ(?)熱量を感じた。

遺伝子が自然選択によってどう変化するかという問いに、
「適応度」と「遺伝子プール」という2つのモデルで説明するくだりは比較的分かりやすく届いた。



そもそも私は科学はおろか勉強自体嫌い(苦手)だった人間だ。
勉強が苦手だったから料理人になったといっても過言ではない。

それが大人になってから様々な世界に興味が湧くとは思わなかった(得てしてそういうものだが)
そしてこの本も私の知的好奇心の扉を開けてくれた一冊だ。

「知識が増えれば世界の解像度が上がる」
とは、私の好きな言葉だ。



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