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私を支えた料理本 10選

私は本が好きだ、そして料理も好きだ。
料理に関しては好き嫌い通り越して、仕事にしていた。
その時に助けてもらった、支えてもらったのが料理本である。

料理人になり見習いだった頃(今だって見習いみたいなものだが)先輩は昔気質の職人タイプばかりだった。
「仕事は教わるものではなく目で盗むもの」を地でいくような職場であったので、最初は戸惑いばかりだったのを覚えている。

まぁ学校じゃないんだから、手取り足取り教えてくれる訳がないと理解し、自分でも勉強を始めるのに使ったのが料理本だった。



今ではたくさんの料理サイト、レシピサイト、動画サイトがインターネットには溢れている。
とても便利なものだし、私だって利用している。

ただ私にとって料理を学ぶとはやはり【料理本】なのだ。
今回は私が実際に役に立った、学びになった、読んでよかったと思った本たちを紹介したいと思います。



一流料理長の『和食宝典』



和食料理店で働いていた頃、当然和食を学びたかったのだが、実際の業務は「追いまわし」と呼ばれる下処理ばかり。
先輩の仕事を見てはいるが、それがどういう理屈、どういう考えなのかは分からない。

本書は和食を全体的、体系的に理解できます。
しかし、家庭的、時短を目指すようなレシピではないです。

本格的な和食を作ってみたい方向けかなと。
私はこれを読み早く自分も職場で刺身をやりたい、煮物を作ってみたいとモチベーションになりました。


イタリア料理の教科書



イタリア料理店に転職した際、私が最初に買った本です。
畑違いの私がイタリア料理は何かを全体的に把握できました。

当時の私のような初心者の方におすすめです。
姉妹本でフランス、和食、スープなどがあり、
こちらが気に入ればそちらも是非。


装丁もシンプルで好きです


辻調が教える『おいしさの公式』



写真もなく文章のみ、無骨な料理本です。
しかし、かの辻調理師専門学校が「おいしさの公式」と謳っているのです。間違いありません。
各メニュー、コツや手順を丁寧に説明してあります。
(欲をいえば料理の歴史も語ってくれれば嬉しかったです)

西洋料理のほかに、日本料理、中国料理、洋菓子があります。
文庫本というのが逆にいいです。
電車通勤だった当時、小説を読むように読んでいた思い出です。


Modernist Cuisine at Home 現代料理のすべて



はっきり言ってプロ用です。
ただ読んで良かった本を挙げるなら間違いなくこれです。

当時イタリアンでそれなりの立場になった頃、
どうせなら最先端、最高峰の本で勉強したいと購入しました。

もともと理屈っぽい人間なので、ちゃんと科学的なアプローチで説明しているところにも感銘をうけました。


天才シェフの絶対温度



料理人が書くエッセイや自伝はいくつかあるが、これもその一種。
正確には本人ではなく、ライターの石川拓治氏が書くドキュメントという形なのだが。

開店から1年5ヶ月の史上最速でミシュラン三つ星を獲得した、天才シェフ米田肇の物語。
塩1粒、0.1度にこだわる完璧主義者。
しまいにはお店のドアのドアノブの温度にまでこだわります。

単純に読み物として面白いのでおすすめです。


刺身の工夫と魚介類のアイデア150



これは最初に書くべきだったのですが、
仕事柄、料理本を200冊以上購入した私が信頼している出版社が3つあります。

それが、「柴田書店」「旭屋出版」「ナツメ社」です。

もちろん、(私的に)当たり外れはありますが、
買うときの目安にはしています。

こちらは「柴田書店」からの一冊ですが、柴田書店さんの本は、
今までのオーソドックスなやり方で行き詰った時に助けてもらうことが多いです。


日本料理の<現代>味づくり教本



そしてこちらが「旭屋出版」からの一冊。

私は仕事をしながら、そして本で勉強しながら、レシピを個人的にまとめるのが好きでした。
好きというより『ライフワーク』と言ってもいいでしょう。

例えば、和食の酢の物「三杯酢」なら、
出汁、酢、醤油、みりんが、それぞれ3:3:1:1
のような。

これは、お店によっても料理本によっても違ってくる割合なのですが、
それを自分なりにまとめることを長年私はやっています。

この本は和食というカテゴリーでのそのレシピ(わり)は、
ほぼ(私の舌では)完璧と思いました。

なので自信をもっておすすめします。

ビストロメニュー・バイブル



「ナツメ社」といえば、『バイブルシリーズ』一択です。

バランス的に初心者用の本も入れようとは思いましたが、
あくまで今回は自分が学びになった尺度でやりますので、忖度はなしでいきます。


料理のアイデアと考え方



この本は、私の職場での立場も変わり、
メニューを作るとか考える立場の時に助けられた本です。

業界トップレベルの9人の料理人が素材に対してどのようなアプローチをするかを、座談会として議論をする内容です。
試作品としてのレシピは載ってはいるが、基本的には個々の料理に対しての哲学を知れる。

料理とは発想 (ある食材のどのような特徴に着目するか)
動機・狙い (その特徴をどのように表現しようと考えるか)
技術・表現方法 (実際にどのように調理するか)

この辺りを、改めて考えさせられた(勉強になった)経験は財産だと思います。


「おいしさ」の錯覚



最後に紹介するこちらは、私が最近(料理人を辞める頃)読んだ一冊だ。

料理は味覚だけではない。それは背景(他の五感、または環境)に影響されるというテーマで書かれた本作は、私に衝撃を与えた。

「おいしい」ものを作るのが料理人の使命と考えていた私には、
そもそも「おいしい」って何?と、突き付けてくる本作は月並みに言えば「目から鱗」であった。

もし現役時代にこの本に出会っていたら、
きっと今以上に面倒くさい人間になっていたと思うが、
そうだとしても読んで良かったと思う一冊である。


おわりに


いかがでしたか。
完全に私的な紹介ではありますし、一般向けなものではないですけど、料理が上手になりたい(極めたい)方には道標になる本たちだと思います。

そして同時に「極める」とは、
一流の人たちに書かれた上記の本を読めば読むほど、終わりがなく、そして目指す価値があるものだと分かります。

大袈裟な締め方になってしまいましたが、
本当にそんなことを思います。

ではでは。

最後まで読んでくださりありがとうございます。サポートいただいたお気持ちは、今後の創作活動の糧にさせていただきます。