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一緒に出かけたいおやつ
秋の装いをしたノーレーズンサンドイッチが海を越えてやってきた。
フードエッセイスト・平野紗季子さんの手掛けるこのお菓子を初めて食べたのは今年の2月ごろだった。以前から「生まれた時からアルデンテ」や連載エッセイの平野さんの綴る食べ物への熱い筆致が大好きで、ノーレーズンサンドの存在は知ってはいた。いつか食べてみたいねえとぼんやり思っていたのだが、2023年のお正月に特別なコラボレーションとして日頃から愛してやまない「虎屋」のあんペーストをバタークリームと挟んだサンドが発売されると聞いたのだ。
去年の冬、よりにもよって自分の誕生日に大怪我をした。その影響で年明けはどん底にいた。頭も身体も動かず、長い不眠症の入口に入りかけていた。
その時にこのお菓子の知らせを読んだ。
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届いたノーレーズンサンドは真っ赤なリボンをきゅっと結ばれた小さな箱に入っていた。
リボンを解いて薄紙を開くと、端正な焼き菓子が行儀よく並んでつややかに光っていた。
本当に美味しかった。ひと口ごとにこのお菓子が丁寧に大切に作られているのを感じた。 オンラインで買っているのに、作り手に手渡されるような温かさがある。自分のためにリボンのついた贈り物をすることがこんなに嬉しいものだと知らなかった。
眠れない真夜中にお茶を淹れて、少しずつ食べた。
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今回は「ほうじ茶ビターキャラメル」を注文した。
外装の色合いといいぴちっと角の立った小箱のサイズ感といい本当にかわいい。
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さくっと頬張った瞬間に、茶葉を焙じて暖まった焙烙のふたを取った時のあの香ばしい香りが!ほろ苦いキャラメル・バタークリームのまろやかさと、酸味のある果物(ランブータン ライチの近縁らしい 初めて食べた)のフィリングが組み合わさってたまらない美味しさ。
今回はサンドをふたつ持って、熱々のほうじ茶を水筒に詰めて海辺で食べることにした。
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夕焼けを見ながら食べた。ここには秒で食べ物を掻っ攫っていく鴨川のトンビのようなスレた鳥はいないのでゆっくり食べられるのがいい。自分を除いて誰もいない。沖を通る船に合わせて寄せる波の音が大きくなる。クリームがほうじ茶の熱さに溶けていく。空の色が移り変わっていく。
うつくしい景色を見ながら食べたいおやつがある。その一つがノーレーズンサンドだ。
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