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読書備忘録

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2019年12月の記事一覧

著者との相性を感じる〜又吉直樹「人間」 近づくクリスマスの思い出

まずはnote公式からこういうメッセージが届きました。 スキをしてくださった皆さま、本当にありがとうございます。 そしてクリスマスも近づき、来年早々東京へ行くことが決まり、今年の本の感想は今日で最後となりそうです。 読み終えたのは、又吉直樹氏が毎日新聞に連載し単行本化された作品です。 僕達は人間をやるのが下手だ。38歳の誕生日に届いた、ある騒動の報せ。何者かになろうとあがいた季節の果てで、かつての若者達を待ち受けていたものとは?(「BOOK」データベースより)

クリスマス、予定がないという方へ~「ツナグ」続編

昨日辻村深月氏のこの作品を読み終えました。 顔も知らない父親に、事故死した幼い娘に、片思いしていたあの人に、もしも会えるなら。一生に一度だけの死者との再会を叶える使者「ツナグ」。長年に亘って務めを果たした最愛の祖母から歩美は使者としての役目を引き継いだ。7年経ち、会社員として働きながら依頼を受ける彼の元に、亡き人との面会を望む人々が訪れる。依頼者たちは、誰にも言えぬ想いを胸に秘めていて―。(「BOOK」データベースより) 累計100万部の大ベストセラーとなり、映画化もされ

小さな機会を逃さない〜あきない世傳金と銀(七)碧流萹

今日は昨日読み終えた高田郁氏の「あきない世傳金と銀」こちらも早7巻になりました。 大坂天満の呉服商「五鈴屋」の七代目店主となった幸は、亡夫との約束でもあった江戸に念願の店を出した。商いを確かなものにするために必要なのは、身近なものをよく観察し、小さな機会を逃さない「蟻の眼」。そして、大きな時代の流れを読み解き、商いに繋げる「鶚の目」。それを胸に刻み、懸命に知恵を絞る幸と奉公人たちだが―。ものの考え方も、着物に対する好みも大坂とはまるで異なる江戸で、果たして幸たちは「買うての

運命だけでは片付けられない出会いの存在

昨日今年発表された綿矢りさ氏の衝撃的な作品を読み終えました。 「私たちは、友達じゃない」 25歳、夏。恋人と出かけたリゾートで、逢衣は彼の幼なじみと、その彼女・彩夏に出会う。芸能活動をしているという彩夏は、美しい顔に不遜な態度で、不躾な視線を寄越すばかり。けれど、四人でいるうちに打ち解け、東京へ帰った後も、逢衣は彼女と親しく付き合うようになる。やがて恋人との間に結婚の話が出始めた逢衣だったが、ある日とつぜん、彩夏に唇を奪われ―。(「BOOK」データベースより) まさに女

人生の断片を切り取る

おはようございます。今日も昨日に続き、読み終えた本を紹介します。 職を失い、年老いた母を抱えて途方に暮れる男。一世を風靡しながら、転落した元アイドル。道ならぬ恋に落ちた、教師と元教え子。そして、極北の地で突如消息を絶った郵便配達員。彼らが逃げた先に、安住の地はあるのか。人生の断面を切り取る4つの物語。(「BOOK」データベースより) 今年公開になった映画「楽園」原作の「犯罪小説集」に続き、著者吉田修一氏がライフワークとして挑む小説集第2弾です。 私自身映画「横道世之介」

声なき声を描く

おはようございます。 一気に朝井リョウ氏の作品を読みました。 今朝はその感想をお伝えします。 死んでしまいたい、と思うとき、そこに明確な理由はない。心は答え合わせなどできない。(『健やかな論理』)。家庭、仕事、夢、過去、現在、未来。どこに向かって立てば、生きることに対して後ろめたくなくいられるのだろう。(『流転』)。あなたが見下してバカにしているものが、私の命を引き延ばしている。(『七分二十四秒めへ』)。社会は変わるべきだけど、今の生活は変えられない。だから考えることをやめ

限界集落の「現実」と静かに待ち受ける「衝撃」

本当は朝このnoteを書くつもりでしたが、昨夜あまり夫が日本酒を飲むので気がかりで、私も半分飲んでしまい、起きたら10時を回っていました。 さて昨日読み終えたのは『満願』『王とサーカス』で史上初の二年連続ミステリランキング三冠を達成した米澤穂信氏の新刊です。 一度死んだ村に、人を呼び戻す。それが「甦り課」の使命だ。人当たりがよく、さばけた新人、観山遊香。出世が望み、公務員らしい公務員、万願寺邦和。とにかく定時に退社、やる気の薄い課長、西野秀嗣。日々舞い込んでくる移住者たち

超短いスピンオフ集

先日書きましたが、今6冊を1度に借りて2週間で読む羽目になったので、まずはこちらの作品から読み終えました。 大ベストセラー『蜜蜂と遠雷』、待望のスピンオフ短編小説集!大好きな仲間たちの、知らなかった秘密。入賞者ツアーのはざま亜夜とマサルとなぜか塵が二人のピアノの恩師・綿貫先生の墓参りをする「祝祭と掃苔」。芳ヶ江国際ピアノコンクールの審査員ナサニエルと三枝子の若き日の衝撃的な出会いとその後を描いた「獅子と芍薬」。作曲家・菱沼忠明が課題曲「春と修羅」を作るきっかけになった忘れ得

百鬼夜行シリーズそして今日は日本人宇宙飛行記念日

昨日の日曜日は2019年4月から6月にかけて3つの出版社で発行された京極夏彦氏の作品、最後のひとつを読み終えました。 「先祖代代、片倉家の女は殺される定めだとか。しかも、斬り殺されるんだと云う話でした」昭和29年3月、駒澤野球場周辺で発生した連続通り魔・「昭和の辻斬り事件」。七人目の被害者・片倉ハル子は自らの死を予見するような発言をしていた。ハル子の友人・呉美由紀から相談を受けた「稀譚月報」記者・中禅寺敦子は、怪異と見える事件に不審を覚え解明に乗り出す。百鬼夜行シリーズ最新