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読書備忘録

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2019年10月の記事一覧

自らの傲慢を省みぬ者

いつも皆さんにこのnoteを読んでいただいて、本当に感謝しています。 ありがとうございます。 さて今日は久しぶりに京極夏彦氏の作品を読み終えました。 昭和二十九年八月、是枝美智栄は高尾山中で消息を絶った。約二箇月後、群馬県迦葉山で女性の遺体が発見される。遺体は何故か美智栄の衣服をまとっていた。この謎に旧弊な家に苦しめられてきた天津敏子の悲恋が重なり合い―。『稀譚月報』記者・中禅寺敦子が、篠村美弥子、呉美由紀とともに女性たちの失踪と死の連鎖に挑む。天狗、自らの傲慢を省

生きていくのが辛いのか?生まれてきたのが間違いか?

今日もブログにお越しいただき、ありがとうございます。 昨日、奥田英朗氏の話題の長編小説を読み終えました。 昭和三十八年。北海道礼文島で暮らす漁師手伝いの青年、宇野寛治は、窃盗事件の捜査から逃れるために身ひとつで東京に向かう。東京に行きさえすれば、明るい未来が待っていると信じていたのだ。一方、警視庁捜査一課強行班係に所属する刑事・落合昌夫は、南千住で起きた強盗殺人事件の捜査中に、子供たちから「莫迦」と呼ばれていた北国訛りの青年の噂を聞きつける―。(「BOOK」データベースよ

生まれることに自己決定はない。だが産むことには自己決定がある。

芥川賞作家川上未映子氏の小説を久しぶりに読みました。 大阪の下町に生まれ育ち、東京で小説家として生きる38歳の夏子には「自分の子どもに会いたい」という願いが芽生えつつあった。パートナーなしの出産の方法を探るうち、精子提供で生まれ、本当の父を捜す逢沢潤と出会い、心を寄せていく。いっぽう彼の恋人である善百合子は、出産は親たちの「身勝手な賭け」だと言い、子どもを願うことの残酷さを夏子に対して問いかける。この世界は、生まれてくるのに値するのだろうか―。 (「BOOK」データベースよ

十二国記完結始まる

18年待ちに待った十二国記の完結が今月から発売され、ま第1、2巻を読み終えました。 久しぶりの十二国記の世界は私を吸い込んで、ドキドキハラハラしながら、あっという間に前半を読み終えた感じです。 まだまだ謎の部分の解明はされず、疑問を残しながら来月発売の第4、5巻を待つことになりました。 また嬉しいニュースも飛び込んできました。短編集が2020年発売決定したのです。 今年で完結する十二国記ですが、寂しい気気持ちを持っていたのは私だけではないでしょう。 現在読んでおられ

募る想い、繊細な愛の形

第161回芥川賞候補になった李琴峰氏の作品を読みました。 日本で働く台湾人の私、台湾に渡った友人の実桜。平成最後の夏の日、二人は東京で再会する。話す言葉、住む国―選び取ってきたその先に、今だから伝えたい思いがある。募る思い、人を愛するということ。そのかけがえのなさを繊細に描き出す21世紀の越境文学。(「BOOK」データベースより) 台湾人の私ー林妤梅(リンユーメイ)は、大学院留学のため東日本大震災直後に日本に渡航、 地震による影響で止まっている大学事務所で、大学院で同期