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【ウイスキー】桜尾蒸溜所に行ってきました!



0 桜尾蒸溜所を訪ねて

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桜尾蒸留所に行ってきました。

1918年、広島県廿日市市桜尾に創業した会社が手がける蒸留所です。
日本酒づくり、焼酎づくりを積み重ね百余年。
2017年、洋酒づくりの新たな可能性に挑戦するため
"SAKURAO DISTILLERY"を設立しました。

その桜尾蒸留所について、見て聞いて学んだことを紹介いたします!


1 広島の秀才  桜尾蒸留所

蒸留所

仕事柄、国内外問わず数々の蒸留所を見学して参りましたが
桜尾蒸留所はその中でも屈指の研究熱心な様に思わず唸ってしまうほど。

世界中で巻き起こるウイスキーブームの影響で、
ここ数年間で20以上の蒸留所がウイスキーをつくり始めるという
ウイスキーファンにとっては
とても嬉しいことがおこっています。

その流れでカリスマ的魅力で人気を誇る
"天才"的蒸留所が目立つ中、
桜尾蒸留所はというと、
地道に研鑽を重ね、再現性を高めることに努力を惜しまない
"秀才"的蒸留所。

蒸留所に足を運び、つくり手の情愛に触れる中で
例えこのウイスキーブームの熱波が冷めていったとしても、
間違い無く生き残り、
日本のウイスキー界を支える存在となることを確信しました。

そんな桜尾蒸留所の、とことんこだわる姿勢を3つ紹介いたします。


2 とことんPoint  その1  製造にこだわる

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まずはその製造について。
各社その土地特製や経験を活かし様々な工夫をしている中、
桜尾が何に秀でているのかというと、
「幅広い原酒を得ることで可能性を広げつつも安定化を図ること」
でした。

原酒の幅を広げることに関しては筋金入りのこだわり方で、
毎日お酒を扱う同行者たちも
「へ〜!なるほど!」を連発していました。

例えば、
ウイスキーファンが真っ先に確認するのはやはり何といっても
Potstill、蒸留器でしょう。
蒸留器はドイツのホルスタイン社製のハイブリッドスチルを用いています。

なぜ蒸留所外に飾ってある従来の蒸溜器を使わなかったかというと、
「蒸留時に試したいことがとにかくたくさんあり過ぎて、
 シンプルな形状の釜ではどうしても実現できなかったのです。」

ということでした。
そこで技術大国ドイツの最新の釜を採用されています。

仕込段階で麦芽比率や水の量を変えたり、
発酵時間を変えたりという昔ながらの方法に加え、
蒸留時にも蒸気量のコントロールなど様々な仕掛けを用いて調整することで
さらなる多様性を担保しています。

ただ、
そんな美しいこだわりに比べ、
もっと度肝を抜かれるような壮大なこだわりがありました。


突然ですが、
みなさまはウイスキーづくりにおいて幅広い原酒を得る為に
最も単純で、かつ、最も難しいことが何だかご存知でしょうか?


それは、意外かも知れませんが、「量を仕込むこと」です。


大資本を元に大規模に展開する先人たちに比べ、
2010年代に産声をあげた各地の生産者はどうしても
少なくなってしまうというのが現場の実情です。

そんな常識を覆す生産量、なんと年間90万ℓ
数万ℓ仕込むだけでも四苦八苦されている生産者が多い中、
驚異的な数字です。

これを実現しているのが、
①仕込量を確保する②蒸留回数を確保する
の掛け算です。

①の仕込量の確保というのは簡単に取り組めるのですが、
②の蒸留回数を確保するというのは意外と難しいのです。
なぜなら、1回の蒸留には6~8時間ほどかかってしまい、
その間原酒の状態を監視する人手が必要不可欠だからです。
だからこそ1日あたり1回の生産が限界である蒸留所が多く
なかなか生産量があがらなかったのです。

桜尾蒸留所は類い稀なるチームプレイにより
この回数を確保するという難題へのブレイクスルーを実現しています。
単純なことながら、多大な熱量がいる話ですので
ここからも蒸留所の本気度が伝わってきます。


3 とことんPoint  その2  製品にこだわる

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「桜尾」「戸河内」という2つのラインナップを誇る桜尾蒸留所。
広島は海にも山にも恵まれ、寒暖差もかなりあるので
条件的には短期間で特色を出しやすい土地柄です。

だから、蒸留開始から3年を迎える今年、
もっと派手なリリースがされるのかな?と予想していました。
ジンの華やかさから、様々な樽を使って遊んだ
色とりどりな展開をしてくるのではないのかと。

しかし、実際に発売されたのは、かなり厚みのあるしっかりとした2本。

とても意外だったので思わず質問し、
何でなのかじっくりと話を伺ってみる中でわかったのは

「製品の再現性」

これをとても大切にされているということです。

現在の製造能力と原酒の変化の様子を冷静に観察し、
「これであれば末永く楽しんでいただける」
という1本を確実にお客様のもとに届ける為に、
現段階では手を広げ過ぎず、やれることを確実にやっていく。

偶然のホームランを狙いにいかず、
コツコツとシングルヒットを積み重ねる、
という製造スタイルなのですね。
そのシングルヒットも、目まぐるしく変わりゆく時代の流れにおいて
どんな場面にも対応ができるように研究を惜しまない。

とても素敵なこだわりですよね。

4 とことんPoint その3 ジンにこだわる

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ウイスキーは蒸留してそのまま製品化できるわけではなく、
樽の中で3年以上熟成させる必要があるため、
事業を始めてからの3年間はウイスキー以外で収益をあげる必要があります。
そのため、蒸留技術を磨く意味も兼ねてジンを製造することが
世界的なスタンダードになりつつあります。

その影響もあり日本もクラフトジンブームが巻き起こり
様々な製品が出されていますよね。
各蒸留所毎に特徴があり、面白いです。

しかし、桜尾ジンは一味も二味も違いました。
私のようなバーテンダー好みの一本と言えます。

「Barの顔でもあるジントニック。
 バーテンダーは700mlの瓶をお客様にお楽しみいただく為に
 少なくとも20回以上キャップをひねることになります。
 だから、
 デザインだけではなく摩耗に耐えうるつくりが必要だったのです。」

「良いBarではジンが冷凍庫で冷えていますよね。
 だから冷凍庫に入れる上で嵩張らない瓶型に仕上げ、
 ラベルも耐水性の高いものにしました。
 また、取り出して扱うときに表面の霜が溶けると滑りやすくなる。
 そのためグリップしやすいという点も意識しています。
 デザインには2年以上もかかった大仕事でしたね。」

外観だけでこれだけの要素を楽しめるジン。
その中身は・・・
ぜひご自宅か、お近くのバーで楽しまれてください!

5 ぜひ、桜尾蒸留所へ。

蒸留所2

ここまで、桜尾蒸留所の熱心な研究姿勢に負けじと書いて参りましたが、
実はお酒業界関係者だからこそ気になるような深知識を除外したとしても、
その魅力をまだ半分も伝えられておりません。

ここから先のお話はぜひみなさまに
現地に足を運んで五感で味わっていただきたいからです。

桜尾蒸留所は旧式のいわゆる「工場」と割り切ったつくりではなく、
美しい蒸留釜の姿をガラス越しに見ることができたり、
ビジターセンターには備え付けのプロジェクタスクリーン設置の
上映をお楽しみできるつくりであったりと
かなり観光を意識してつくられた近代的蒸留所です。

残念ながら
2021年8月現在は感染症対策の一環で見学を受け付けておりませんが、
再開した暁にはぜひ足を運んでみてください。

下記公式動画でその片鱗を味わっていただければ幸いです。

Youtube ウイスキー誕生秘話
https://www.youtube.com/watch?v=1bNLSCLC834&t=7s

蒸留所のホームページもとても素敵なのでぜひ訪れてみてくださいね!https://www.sakuraodistillery.com/

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