アナログレコード・ブームは一過性のものではないような気がしてきた

新宿アルタの6階にHMVが出来たって聞いてたのですが、何かと忙しくて行けてなくて、先日やっと行ってきました。

で、驚いたのですが、ワンフロア全部なんですね。それも9割以上が「アナログレコード」なんです。

アルタのワンフロアってすごく広いんです。で、もちろん新宿の一等地だからすごくお家賃するはずなんですよね。それで、ほとんどアナログレコードってどういうことなんだろうってずっと考えているんですね。

HMVはローソンが親会社なので、おそらくそういう出店とかって、そうとう「アナログレコードがこのくらい売れている、渋谷のHMVのアナログも売れている、これからも十分いける」ってリサーチして「今だ!」って確信をもってやってるはずなんですよね。

で、入り口の一番目立つところに「テレサ・テンの初期名作4枚、待望のアナログレコード発売!」って展開していました。かなり「今だ!」って感じてやってますよね。

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bar bossaの上ってFACE RECORDSというアナログ専門のレコード店の事務所なんですね。で、何かとスタッフが増えていまして、「儲かってますね」なんて声をかけたりしてたのですが、下北沢のすごく良い場所の1階に新しいアナログ専門の店舗を開店されたんです。

もちろん行ってきました。「若い人を意識した商品構成」になってまして、「ああ、アナログレコードってオジサンの懐古趣味だけじゃなくなってるんだなあ」っていうのを痛感しました(これは行けばわかります。音楽ソフトを扱っている仕事をされている方は是非、General Recordは行ってみてください)。

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僕の周りではこの「アナログレコード・ブーム」に関してはみんな冷ややかな目で見ている人が多いんですね。みんなすごくレコードを買うのに、「いや、このアナログブームは一過性でしょ。だって配信が楽なんだもん」って言ってるんです。

でも、もしかしていよいよ「ブーム」じゃなくて、本当に「定着」に向かっているのかなって感じがすごくするんです。

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僕、いわゆる「趣味」って何にもないのですが、レコード屋さんに行って、レコード箱を「パタパタ」とするのだけは唯一の趣味なんですね。

決してコレクターじゃないのですが、レコードの箱をパタパタしているのが本当に楽しいんです。

例えば先日、こういうレコードを¥850で買ったんですね。

ウイリー・ボボという1960年代のNYのラテンジャズ界で活躍したパーカッショニストのレコードなんです。これ、こういう音楽なんですね。

まあカッコいいけど、ウイリー・ボボさんには失礼ですが、こうやってYouTubeで聞いてしまうと「うん、カッコいいなあ」で終わりの音楽ですよね。

でもこういうジャケットの写真があって、裏側のジャケットにクリード・テイラーのサインがあって、その当時のライナーがあって、色々と解説があるのを読んでいると、すごく楽しいんです。

このレコード、作られたの、50年前なんです。その当時のクリード・テイラーを中心としたヴァーヴ・レーベルの優秀なスタッフが企画して、当時の一番ホットなミュージシャンがスタジオに集まってこういう演奏をして、それを当時の最高の録音技術を持ったスタッフが録音して、こういう写真が撮影されて、デザイナーがこういう形にして、ライターに原稿を依頼して、プレスされて、当時のレコード店で売られたレコードが、2016年の東京で¥850で買えるんです。音もついてるんです。

こういうレコードを渋谷の街で買ってきて、ターンテーブルに置いて、美味しいワインを飲みながら、こういうジャケットをぼんやり眺めて、「お、良い演奏だなあ」って聞くの、本当に楽しいんです。配信された音楽をiPhoneからヘッドフォンで聞くのとはちょっと楽しみの次元が違うんです。

僕たちが買い物をするときって、多くの場合、「物語」を買ってますよね。こういう産地でとれたモノを使って、こういう職人が作って、こういう風に店頭で売られて、こういう記念日に買って、こういう人と一緒に楽しんで、という風に「物語」を楽しむために消費していますよね。

アップルミュージックのたぐい、すごく便利なのは十分わかっているのですが、音楽がただの「音」として流れてきて、その音楽にべったりとついていたはずの時代性とか当時のスタッフの心意気とか、ミュージシャンの「よし、これが大ヒットすれば俺は大金持ちだ」っていう熱い思いとかが伝わってこないんです。僕は音楽も好きなのですが、ジャケットから読み解く、そういう「熱い思いとか物語」を楽しみたくて音楽を聞いているってのが大きいんです。

やっぱりアナログレコード、一過性のブームじゃなくて、これから定着していくんじゃないかなあって思います。というかそう願いたいです。

デザイナーやカメラマン、録音スタッフやミュージシャンも、こういう形の方が「好ましい」って思うんじゃないでしょうか。

決して懐古趣味やファッションじゃないんですよねえ。音だけじゃなくて、2016年の東京の渋谷という街の店頭で買って、ジャケットが素敵で、それをぼんやり眺めながら、クレジットをチェックしながら、当時の1966年のNYのことを考えながら聞くから良いんです。

#コラム #音楽

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僕が選曲したCDです。Happiness Played In The Bar -バーで聴く幸せ- compiled by bar bossa → https://goo.gl/tOKcGu

iTunesでも配信しています。→ https://goo.gl/9QJywf

bar bossaに行ってみたいと思ってくれている方に「bar bossaってこんなお店です」という文章を書きました。→ https://note.mu/bar_bossa/n/n1fd988c2dfeb

この記事は投げ銭制です。この後、オマケで僕のちょっとした個人的なことをすごく短く書いています(大したこと書いてません)。今日は「探偵ナイトスクープ」です。

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