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林伸次
2015年7月2日 11:22
その海賊はとても強かった。世界中の荒くれの船乗りたちもその海賊に出会うのだけは恐れた。その海賊は人を殺すことになんの苦しみも感じていなかった。コックが料理を作るのが仕事のように、詩人が新しい言葉を探し出すのが仕事のように、彼は目の前の罪のない人間を黙々と毎日殺し続けた。そして、彼はある日生まれて初めての恋をした。恋をした場所は港でもなければ故郷でもない、今、海賊たちが襲っている船の