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小児へのコロナワクチン接種

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今のところ厚労省の発表ではワクチン接種は930日までの予定となっていて、残り2か月弱という状況です。

日本の81日時点の小児への接種率は、
5-11歳:16.9% 12-19歳:74.9%です。

これは高い数値なのでしょうか?低い数値なのでしょうか?
打たせた方が良いのでしょうか?

色々な情報が氾濫して心配だと思いますので、まとめてみようと思います。

とは言っても、↓の紙谷先生の記事に全部書かれているのですが、このnoteではもっとカジュアルにまとめていきます。また、海外の事情も紹介していきます。

5-11歳への効果

「オミクロンにワクチンは無効」
「子供は重症化しない」
「副反応が怖い」
「だからワクチンは打たない」

と考えている人は多いかもしれません。
しかし、そんな感覚と、実証された事実には少しズレがあります。

アメリカの研究では救急受診リスクを51%減らす(アメリカの救急受診は日本よりもハードルが高いです)、無症状を含む感染予防効果は31%、入院が必要な重症化を68%減らすことが分かっています(紙谷先生の記事参照)。

副反応は、局所の痛みや頭痛などがありますが、1-2日で治まることがほとんどです。咳も出ません。アメリカの報告では5-11歳の心筋炎の報告数は100万回接種あたり2.2(男の子に限ると100万回接種あたり2.7)と言われています。大人の量より少なくしているためか、心筋炎の副反応は思ったより高くないんですね。また、仮に心筋炎であっても多くが特別な治療を要さない軽症です。

オミクロンの年代別の重症化、というと纏まった数字がなくて難しいのですが、大阪市からは19歳以下で0.01%というデータがあります。なおこれは、肺疾患としての重症度ですから、「ぐったりしてしまって水も飲めない」「熱にうなされて痙攣している」みたいな状態は含みません。

0.01%、1万人に1人というと大したことなく見えるかもしれませんが、7/11-17日の7日間では19歳以下の未接種者が約10万人感染しているわけなので、単純計算で7日で10人の重症者が出ることになります。なおこれは国内の新規感染者数が1日当たり約10万人弱の時の話なので、1日当たり約20万人感染している状況下では、単純計算でその2倍の重症者が出ることになります。

さらに、小児の場合は仮に軽症であったとしても、その後にMIS-Cと呼ばれる全身の臓器障害を来すことがあります。だいたいコロナに感染したこどものうち1万人に5人、と書いたのですが、どこからの情報か失念しました。なおCDCは3000人に1人程度と書いていており、そんなにズレた数字ではないです。なおワクチンは、12-18歳が対象の研究ではありますが、MIS-Cを90%も減らすという報告があります(紙谷先生の記事参照)。

これだけ蔓延して毎日20万人が感染する状況下では、連日、何人もの運の悪い子が大きく健康を害することになります。

「軽症」だけど入院が望ましい子を含めれば、さらに多くの子が苦しめられていることになります。5-11歳の子が入院するとなれば、家族の付き添いも考えなければいけませんし。

また「入院の必要のない子供の軽症コロナ」であってもみな無症状というわけではないし(普通に辛そうな子はいっぱいいます)、大事なイベントの前に大きく体調を崩すかもしれないし、濃厚接触・家族への感染など考えることも増えてしまいます。いざ心配になって受診しようとしても、現在は気軽にかかれる医療機関は減ってきています。

ここで5類にすれば解決とか言う人もいるのですが、話はそう単純ではありません。

なぜならコロナは「病気を持っている人・弱い人に対して追い打ちをかけるように猛威を振るう、しかも拡散力が高い」という厄介な性質を持っているからです。コロナの肺炎としては軽症~中等症でも、血栓症を来したり、心臓やその他の病気の悪化から全身状態を悪化させてしまうのです。

医療機関は発熱の人だけではなく、たくさんの患者さん、特に持病を持っている人を普段から診ているわけなので、その人たちの健康も守る責務があります。スタッフを介して患者さんにうつす可能性が高い以上、スタッフの体調不良には最大限配慮しなければならず、場合によっては部門を閉鎖するほどの一時的離脱者が生じてしまうことになります。PPEという個人防護具も必要になったり、感染疑い者とそうじゃない人の動線を分けたりしなきゃいけない。でも、古い病院や小規模の病院はそういう手立てが取れないところもあるわけです。

だからいかに区分が変わろうが、ウイルスの厄介さが変わらない以上、医療機関が患者さんを守るために講じる対策が甘くなるわけではありません。つまり、コロナ診療できる数ががグンと増えるわけでもないでしょう。

さて、これまでの波の時は、感染しなければそれでOK、感染によるリスクははあまり考えず、ワクチンの副反応というデメリットに注目していた人もいたでしょう。

しかし第7波で当たり前のように感染する可能性が生じた今、ワクチンのデメリットに対して持っていた心配と同じだけのものを、コロナにかかることによるデメリットに向ける必要が出てきます

効果のまとめ

再度言いますと、子供に関していえば
・1万人に1人程度の重症肺炎
・肺炎としては軽症でも全身状態悪化による入院の必要性
・それでも思った通りの医療機関にかかれない可能性
・軽症でも普通にしんどい
・1万人に5人程度のMIS-Cという後遺症
・いわゆるLong-COVIDと言われる後遺症
・タイミング悪くかかることによる行事等への支障
・家族の行動も制限される
などなど。

一方ワクチンは、時期が指定できて1-2日ほどで治まる局所の痛みや頭痛の副反応やごくごく稀(100万回のうち2-3)な心筋炎があり得るわけですが、上に列挙した危険性を(ものによっては大幅に)軽減することができるわけです。

海外では?

さて、海外ではどうなのでしょうか。

このage group tabのところを押すと、EU諸国の年代別の接種率が分かります。日本と年代の区分が違うので単純比較できませんが、5-9歳の接種率は

スペイン30.9%、ポルトガル30.4%、デンマーク29.5%、アイスランド27.7%、オーストリア21.9%、アイルランド20.5%となっています(7月21日時点)。スペインは10-14歳も75.1%と、高い接種率を達成しています。

アメリカでは、5-11歳が5月時点で約30%となっています。
オーストラリアは8月1日時点で5-15歳が191万人打っていて、5‐14歳の人口が310万人なので、大体5-15歳が55%くらい打ってる計算でしょう。

日本も決して悪い数字ではないのですが、もう一歩というところでしょうか。

海外はもともと「ちょっと心配になったから受診」ということが日本ほど気軽にはできません。

そういう医療体制の中で入院率とか死亡率とかいう指標で見ると、5-11歳に対するワクチン接種では、もともと低いものをさらに減らすわけなので、「全員漏らさず打つべき」とまでは、数字上はなりません。ただし、決して効果が無いと言っているわけではありませんし、デメリットをメリットが大きく上回るという判断には各国変わりありません

ドイツのSTIKO(公的な予防接種委員会)は、全員への推奨にまでは至っていませんが、「リスクの高い子供は推奨、リスクが高くなくても希望する子は医師と相談の上で接種OK」という声明を出しています。軽症が多いもののLong-COVIDやMIS-Cの危険性があるということにも言及しています。

子供への接種に反対の人で「ドイツでは(全員に)推奨していない!」と言うことがありますが、こうした背景があり、決して「打たない方が良い」と言ってるわけではないのです。

その他、

イギリス
5-15歳におけるワクチンの効果および安全性を提示

オーストラリアすべての5歳以上の人に推奨

アメリカ
5歳以上はブースターまで推奨

カナダ
7/17時点で5-11歳のうち42.4%が接種を完了

重症化やMIS-Cなどのリスクから守るために、ワクチンは自然の免疫力を高め、効力を発揮し、副反応はあるものの安全であることが強調。6ヶ月以上の人すべてに接種可。

【8/16追記】

デンマークが小児への接種を終了した!みたいなフェイクニュースを流布する人がいるのですが、Danish Health Authorityのサイトを見る限り、そのようなことは書いてありません。あるのは、全年齢において接種券を送るプログラムを段階的に終了していることであり、今後は、接種券の有無に関わらずオンライン予約で接種できることが書いてあります。

なお、5-11歳に関して、ドイツと同じように「全員への広い推奨まではしない」と書いてはあるものの希望者に対しては専門医の評価の後に接種できることが強調されています。

Danish Health authorityが出している、5-11歳へのワクチンに関する文書にも同様のことが書いてあります。なお、こちらにはデンマーク保健局が12歳以上のすべての人でワクチンを接種すべきとしている旨も記載されています。

【追記終わり】

日本は、医療体制がそもそも海外と違います。
皆保険で、できる限り多くの人に、どんな小さな心配にも対応するような医療体制でした。しかしコロナ禍ではそれがままなりません。

死亡率が少なかろうが重症化率が少なかろうが、無症状との間の領域は極めて広く、当事者は家族も含め色々しんどいわけです。海外はもともとその領域への医療が(日本に比べれば)手薄なだけなのです。

手厚い医療に慣れている日本人にとって、コロナ流行期の医療アクセスの難しさはかなり不便だと思います。

いざ罹ったとき、海外同様の不便さを受け入れるのか、ワクチン接種によって感染リスクおよび悪化リスクを下げておくのか、という判断が必要になります。

その時、日本だけでなく各国の公的機関が、5-11歳に対してもメリットが大きく上回るという判断と表明をしているという事実に目を向けていただければと思います。

ちなみに、死亡率が低いとはいえ、アメリカでは18歳以下の子がコロナで1300人以上亡くなっていますイギリスは20212月以降、14歳以下の子が52人亡くなっています。

まとめ

5-11歳へのワクチンのメリットと副反応リスク、海外ではどうなの?という話をしました。

もちろんメリット・デメリットをどう天秤にかけるかは個人の自由なのですが、誰もがいつどうかかってもおかしくないような状況になった今、ワクチンの心配と同じだけの心配をコロナに向けてみれば、総合的に考えて接種のメリットが上回ると思っています。

ご判断の一助になれば幸いです。

これ以降に何も追加の情報はありませんが、コーヒー代の応援を頂けるととても喜びます。


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