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タモが来た。

ちょっと前の話だが、タモが来た。
来たと言っているが、買ったのだ。
勝手に手元に来てくれればもっとよかったのに。
「これ、あげる。」とかで。

ちなみに、この文章は書き始めてから結構時間が経っているので、タモがうちに来たのはもう4−5ヶ月前の話だ。

タモと言うのは、そのまま引き上げられないような大きな魚が釣れた時に使う、長ーい柄のついた大きな網の事だ。
ランディングネットとも言うらしい。
呼び名はどっちでもいいと思うが、タモのほうが響きが玄人っぽい。

「おい!タモとってくれえ!」
ほら、なんか職人っぽい。

「すみません、ランディングネットとってください!」
あー。新人ぽいな。
そのあと「すいませんっ!ありがとうございますっ!」て絶対言ってるな。
完全にイメージだけど。

僕が狙って釣るのはアオリイカ(しかも秋のあまり大きすぎないやつ)、アジ、メバルといったあまり大きくない魚が多い。
「タモ要る?」という感じのターゲットだ。

それでも
「魚掬うだけの道具なのに、高くない!?」
という額に迷いつつ購入し、邪魔くさいけど背中に背負って釣り場をうろうろしている。

「見た感じ、、、シーバス狙いですね!?」
と、通りざまに挨拶した釣り人に言われた事があるくらい、でかい。
「いえ、まあ、あの、、ライトゲームメインでして、たまに、まあ…。」
ちょっと恥ずかしくなってモゴモゴ言いながら立ち去ったことがあるくらい、タモがでかい。今なら次女が海に落ちてもこれで掬えるし、救えると思う。

アジやメバルなど、サイズによってはアワセの瞬間に水面から飛び出てくる事もあるくらいなのに、タモ。
ちなみにアワセるとは、魚が餌を食べたと思われる動きがあったとき、竿などをしゃくり、釣り針をしっかりと魚の口にかける行為だ。魚種によってはこれが甘いとすぐに魚が針から外れてしまう。
そういうときは「バレた…。」とさぞ大物が逃げたように悔しがろう。
逃した魚は、常識の範囲でサイズを盛ってもいい事になっている。(気がする)

なお、基本、釣りに興味のない方が見る事が多いと思うので、このような解説をちょいちょい挟みたいと思う。
僕の解釈なので、解説があっているかは定かではない。

タモ、無駄じゃない?なんでそんな使わなそうな物を持ち歩いているの?
と思うことであろう。

それは、予定外の魚が釣れた時に使うためなのだ。

予定外の魚は予定外なので、基本は釣れない。
基本は釣れないが、何が釣れるかわからないのも釣りの面白いところで、釣れた時に対応出来ないととても悔しい。
この予定外の魚で何度か残念な思いをしている僕は、備えあれば憂いなし!と、巨大なタモを背負ってメバルなどを釣っているのだ。
佐渡でライトゲームっぽいタックルなのに、やたらでかいタモを背負っている人がいたら多分僕だ。
なんなら、時々「それ、タモ要る?」と思うサイズの魚をタモで掬ったりしているぞ。(だって、せっかく買ったんだから。)

そして、もし、またあんな事があった時の為に、取り込む練習をしているのだ。

あれは、イカも釣れなくなったし、アジやメバルでも狙おうかねえ…とターゲットの魚を変えた秋の終わり頃。
「メバルは警戒心の強い魚で、、、、。」というのは嘘なんじゃないか?と思えるくらい、投げればメバルが連発していた時の事。
(じっさい、活性高いメバルは何をしていても釣れると思う。本当に警戒してる?!もうすこし警戒していこう!滅ぶよ!)

ちょっとボトム(底)あたりを探ってみようと、ワームを沈めて誘いをかけていたら、ゴッという感じで何かが引っかかった。
あれ、根掛かりかな?
(仕掛けが岩などに引っかかって、外れなくなる様。地球を釣るともいう。)
ちょっと沈めすぎたかな、、、、。と思っていると…

「ビィイイイン…!!」と糸がすごいテンションで引っ張られて鳴り始め
「ジィーー…」とドラグが回り糸が出て行き始めた。

魚だ!!!多分、かなり大きい!
アドレナリンがドバドバと出てくる。
竿が弓のように大きく曲がり、竿尻をお腹に当てないと支えられない。
なにこれ!
こんなの釣った事ない!!

ゴンゴンと強い引き、体重をかけながら竿を立てて、やっと寄ってくる感じ。
上がるのか?これ!?

そう思いながら引いているとバシャバシャと水面を跳ねる音が聞こえてきた。
水面まで来た!その音からしても大きい。

覗き込んでみると…

クロダイだ!
40cmは絶対超えている。
いや、40超えというか…。
え、ていうか見えてるのこれ、頭だけ?!
まさか…年無し!?(50センチ超えのクロダイ。何年生きてるかわからないということで、年なし。釣ってみたいなあ。)
とんでもないゲストだ!!

そして気づく。
タモがない。
なんなら、この当時は、家にすらタモはない。
ラインはPE0.4、リーダー0.4。
要するに、こんなの釣るにはめちゃくちゃ細い糸って事。(よく水面まで来たもんだ)

こりゃ、無理だな。。。。
でも、もしかして引っ張ったら上げれたりする?
波が寄せるタイミングで引いてみたら意外といけるんじゃないかな?
最近の糸は丈夫だっていうし。
それとも、足場のあるところまで引っ張ってみるかな?
ここから…100mくらい先だけど。

迷っている間もクロダイは暴れている。
とりあえず、もう少し水からあげてみようかな、、、と引いたところで
バチイィん!!と糸が切れた。

ああ、逃した魚は大きいのだ。
あー。
あー。
バラした…。てか、切れた。
100m、足場まで引いてけばよかった。
もう少し空気吸わせて弱ったら引けたかも。
色々考えてももう遅い。

そうだ。タモ、買おう。

以来、僕は常にタモを持っている。
取り込みで失敗するのは残念だし、糸が切れれば魚に半端な怪我もさせ、海洋ゴミまで増えてイイことは一つもない。
あと、逃した魚は尾鰭がついてどんどん想像のなかでデカくなっていく。
(今回の話は盛っていないが!)
だったら、網の一つくらい背負ってやるさ。
そして、今日もせいぜい25cmくらいの魚をちょこちょこと釣りながら、嬉しいゲストを待っている。

ちなみに、このタモ、商品名に『ジャベリン』とついている。

網だろ。
なんでジャベリン。
釣り用語や、商品名にはよくわからないものが多いな…。

こうして、『ジャベリン』と聞いて思い出す事に
「ガンダムのビームジャベリンって意外と役に立ってたよね。アッザムとかガウとか刺して。」
だけではなく
「いざという時に魚と釣り人をすくってくれる頼もしいヤツ!」
というものが追加された。

現在、ジャベリンの出動回数は4回。

え!?
結構活躍してるじゃんジャベリン!!


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