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#107 伏せ字まみれの墓参・ザ・サンボ

 7/11、通勤ラッシュの地下鉄に揉まれて谷中墓地。墓参りが生きている者の精神安定のためのものだとすれば、各々儀式的なものを勝手にやればいいだけの話、この「簡略化」を推し進めていった結果、残ったのは「懺悔偈」「光明真言」「南無大師遍照金剛」「缶コーヒー」とあいなった。この内「缶コーヒー」にいたっては「線香で香りを味わっていただくんであればコーヒーでもよかんべえ」という乱暴な発想から採用している方法だ。むしろ儀式を簡略化することで、盆暮れ彼岸命日と折々に「行く」ことの重要性を浮き彫りにすることに成功している、と強弁することも可能であろう。あろうじゃねえっての。

 COVID-19で日本もロックダウンをかましていたときに、ふと実家の仏壇を掃除していると――古い家なのでずいぶんと位牌があるもんで、一番古いところで●●●●●という大きな名前がある。これ、もしかしてググったら名前が引っかかったりなんかしちゃったりしてー、とググッてみると見事にひっかかる。位牌にある●●●というのは通称で本名は●●、どうもあの、大河ドラマ「●●●」の主要人物の家臣団にいたらしい――という史料が郷土史家の手で出版されてあり、列伝の形式で――つまりは、●●の家臣たちのエピソードがずらずらと連ねてある本が4,400円。4,400円かぁ……4,400円で買ったところでうちのご先祖のことなんぞたかだか数ページしかあるまいに、と、最初は図書館で借りてみて、案の定●●家家臣としての記述は2ページしかない。が、結局買いましたよ。さすがにささやかな抵抗はしたけど。hontoで通販して5%引いてもらったけど。それだって220円だ。下手すると昼食3食分になる。

 さて、どんな記述があるのやら、期待に震えて(©クレイジーキャッツ)読んでみれば、なにやらそこそこ勇猛果敢だったことはわかる、鉄砲の名手で何人か騎馬兵を撃ち殺したとある。と、ここだけ抜いて書くとさも立派なご先祖だったのであろう、どっとはらい。後年位牌を拵えた(わりあいに近い)ご先祖もうちは●●●●●の末裔なるぞ! と息巻くのもわかる。

 記述は続く。●●の戦いから敗走して主君●●とその兄●●の軍勢で居城に逃げ帰るさい、峠の吊り橋から川下をずっと眺めていて、兄●●が「ここを飛び降りて平気でいるような家臣はお前(弟)にはおるまいな?」と●●を煽ったとか煽らないとか、それを聞いた家臣こと先祖●●、舐められちゃあアカンとその場で鎧ごと川に飛び込んでしばらく姿が見えなくなった、とある(この辺の記述、きわめて適当です)。

 それから5日の後、●●、のこのこと帰ってきて「ほーら無事でござる」と意気揚々のところ、「本当に飛び込むやつがおるかーーーーっ!」と怒られた挙げ句に放逐、いわゆる馘首でございますな。浪人になってしまう。
 で、それからしばらくして、関ヶ原の戦いのころには復帰を許されていた、という記述があるそうな。前述の騎兵隊を撃ち殺すあたりのくだりは、どうも復帰後らしい。

 と、事程左様に、なんとも情けない――情けなくもないのかなぁ、主君に恥をかかせまいとイキってみたというのも美徳であったのかなぁ。その割には「本当に飛び込むやつがあるか」てぇ馘首になってるン。なにしろ煽り耐性がない
 500年後の子孫はハタタタと思い伏し、4,000円も払うんじゃなかったかなぁとやや悔いつつ、君たちはどうイキるか、などとくだらないことを思いついたりした。

 この●●家がゆくゆくは親藩、●●松平の家臣となり、明治期には天皇家の御者をやっていたらしいんだけどこの辺の資料は東京大空襲で焼けて失くなっておる。あんまり開けたことがないんだけど、実家の押し入れなどを掘り返したらいろいろなものが出てくるのかもしれないが、またそれはまた別の機会にでも。

 ずいぶん伏せ字ばかりの記事になってしまったが、有事のときには伏せ字を外した完全版をお見せすることになるであろう。有事のときというのがいったいなんのことかは、今のところ何も考えていない。

みなさんのおかげでまいばすのちくわや食パンに30%OFFのシールが付いているかいないかを気にせずに生きていくことができるかもしれません。よろしくお願いいたします。