見出し画像

#58 土用丑

 美味しいが当たるもの、のひとつには鰻をあげてよいだろう。「中る」ではない。「当たる」のだ。飯の熱いところをウメェブメェと食っていると急に舌の根にずん、と痛みが走る。小骨が刺さる。この「小骨」、一旦刺さると鈍い痛みを伴って取れてくれない。じっさいにピンセットなどを持ち出すと思いの外深いところにあるらしく届かない。無視するには明確なイヤさを伴って存在するので世の中を恨んだりしち。

 それはそれとして土用丑である。ここぞとばかりに(安いときに)買っておいた鰻一切れ598円、の30%OFFの消費税8%がついたやつ、と冷凍庫に入れておいたやつ。
 これを家族4人で分ける。なんたって安い鰻だし、ちゃんと骨も取れていないに違ぇねぇ、ということで千切りにするとプツプツ骨の切れる音がする。ハモぢゃないんだから――というわけで、

飯は五合半

  炊いてみた。せめてうなぎ風味のご飯。調味料なんざ砂糖と醤油を好きなように足せばいいのだ。まがりなりにもうなぎからうなぎの出汁が出ればよい。

 できた。ご飯を固めに炊いた結果、噛みしめるとちゃんと風味が立ち上る。めづらしく小学生の息子がおかわりなんぞしておったくらい……。

 この手の「うなぎのかさ増し」みたいな料理はもう一つあって、ざく切りにしたうなぎとにんにくの芽で炒めてタレで味をつける、みたいなのはよくやっていた。
 そんな、一人一枚のうなぎなんぞ冗談でねぇだという家庭の、丑の日。

みなさんのおかげでまいばすのちくわや食パンに30%OFFのシールが付いているかいないかを気にせずに生きていくことができるかもしれません。よろしくお願いいたします。