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#94 大人の事情

 例によって観測範囲以上の話はしない。

 おらの町でも議員さんの選挙が始まった。
 選挙が好きだ。なんか顔写真がたくさん貼ってある板状のやつが好きだ。街宣車も来れば来るほど「こいつにだけは絶対入れね―」という意志が強くなるぶんには悪くない。投票所が好きだ。投票用紙と鉛筆の書き味は超好きだ。その後の開票速報で飲む酒の美味いこと美味いこと。
 事程左様に「何が好きかでことを語ってもどうということはない」ということがわかる。いや、なにをどう語ってもよいが今回はそういう話ではなかった。

 なんでこんなに好きなのだろう、と考えた。政治に興味があるかと言われれば大いにあるが参加する気持ちがない――つまりは、日本の未来なり、金儲けなり、社会貢献なり、権力なりへの執着がより強い人にゃ、どうしても敵わない。では、なにかといえば、畢竟ゴシップなのであった。そういう人間関係の来歴とか、派閥とかが面白いのであった。Wikipediaで戦後の政治史など見ているとあっという間に夜が明けてしまう。どういうところにどういう利権を持っていくためにどういう人間関係が築かれていったか、みたいな――まだそれだと話が大きいな(面白いんだけど)。もっといえば「クラスの○○の父ちゃんが市会議員に立候補したで」であり、十五年後くらいに「市会議長まで勤めたのに最下位で落選したで」であり、ここに「駅前のバーのマダムとの不倫がバレて慰謝料で一文無しになってからすっかり後援者の前にも姿を見せなくなって」なんてな尾ひれはひれがつく。今ほどSNSが発達する前の実話でございます。ただ、地元であればあるほど、その地元での利権関係(たとえば、飲み屋のマダムをとりあったレベルの)で票が行ったり来たりする。『大人の事情』と呼ぶものほど本当にこどもでもやらなそうなくっだらねー事情だったりするものです。が、そのくっだらねー事情でいろいろなものがいったりきたりしている。

 もっと掘り下げると、これって小学校の、クラス内での派閥の話なのではないかと思いついた。
 Sさん(女子)の中心にしたグループと、それの彼氏、その取り巻きたちと、その周縁の人々、みたいな。中央部分で取ったの取られたの、誰と遊びにいったのいかないの、お楽しみタイムで遊ぶ内容(利権)をフルーツバスケットにするか、ドッヂボールにするかだの。そうした誰かの執着によって集団内での立ち位置があっちに行ったりこっちに行ったり――そういえばアタシはそんな様子を面白がって観察する側だったなぁ、ということをふいに思い出した。興味オオアリだからこそ、当事者にはならず、その狭いコミュニティ、水槽の中の蟻の巣を見てにこにこしているようなところは未だに変わらないんだな―、と思ったところでどうなるわけでもないんだけど。

 ただ、そうした立ち位置から得た知見を強いてあげるとすれば、やはり「より執着した人間にゃ敵わない」てな話で、あまり執着を持てないところにホイホイ出ていったところでうまくいくわけがない。であるからして、執着の対象がなんにせよ、これはそう間違っていないと考えて、自分が執着できる場をなんとか求めていった未来が現在でございます。
 これはたぶん、正しい。

みなさんのおかげでまいばすのちくわや食パンに30%OFFのシールが付いているかいないかを気にせずに生きていくことができるかもしれません。よろしくお願いいたします。